サイバーパンク2077|原作2020タイムライン

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◽️はじめに
本スレッドでは【原作】サイバーパンクシリーズのタイムラインをまとめています。

年表そのものはかなりの長文になるため、下記「Google ドキュメント」にて閲覧ください↓
Google ドキュメント:https://docs.google.com/document/d/17GLtpEeVzDjVi9yOHX5Jf9g-g-fpFaW_CMu9XsCWbe4/edit
  • あくまでオリジナルTRPG版の年表です(第三版のV.3.0は含みません。初版の2013と第二版の2020の設定がメインです)
  • またゲーム版「サイバーパンク2077」の開発を進めるCD PROJEKT RED(以下CDPR)が公式に発表した内容でもありません。ゲーム版は原作の2020年前後から50年以上未来の2077年を舞台にしていることもあり、原作の設定がゲーム版にどこまで反映されているか現状では一切不明ですのでご注意を
  • 上記ドキュメントを含む本スレッドの全ての内容は、原作サイバーパンクに詳しい人間がまとめたわけではありません(むしろサイバーパンク初心者が必死になってまとめました)。そのため見当違いな訳になっていたり、齟齬が生じている箇所もあるかと思います。今後少しでも訳の精度が上がるよう務めていくつもりですが、シリーズに詳しい方がいらっしゃればご指摘いただけれると幸いです。
    気軽に本スレッド(または公式DiscordやDMでも結構です)で報告してください。
  • 全方位【原作】ネタバレ全開ですので閲覧は自己責任でお願いします:giveup:

◽️目録
*上記ドキュメントの各記述は以下のソースブックからの引用です(ドキュメント各文末にある上付き数字に対応)
  1. CP2020 Rulebook, pages 176-179
  2. Corporation Report 2020, Vol. 1, pages 9-10, 47-50
  3. Corporation Report 2020, Vol. 2, pages 7-9, 43-44
  4. Corporation Report 2020, Vol. 3, pages 4-9, 12-14, 50-53
  5. Deep Space, pages 6-9
  6. Pacific Rim Sourcebook, pages 7-8, 44, 60, 84, 110-111
  7. Land of the Free, pages 8-9
  8. Home of the Brave, pages 6-7, 105-114, 131-132
  9. Neo Tribes, pages 6-8
  10. Rache Bartmoss' Guide to the Net, page 8
  11. Eurosource Plus, pages 29-30, 52, 96, 118
  12. Rough Guide to the UK, pages 3, 5-6, 17, 21, 26, 61, 117, 118, 121
  13. Protect and Serve, page 59
  14. Night City, pages 33-34
  15. Live & Direct, pages 38, 40-42, 42-43
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◽️補足事項
以下に原作の世界設定を知る上で有用と思われる補足情報をいくつか掲載します。
ドキュメントを読み進める時の参考にでもしてください。

  1. ナイトシティ
  2. コンバットゾーンとブースターギャング
  3. 主要登場キャラクター(NPC)
  4. ”The Net”概説
  5. サイバーウェア概説
  6. サイバーサイコシスとブレインダンス
  7. 企業戦争 ~ Firestorm三部作について
  8. Cyberpunk RED
  9. 国別企業一覧 - Part1/ Part2 / Part3
  10. 原作サイバーパンクシリーズ(TRPG)ソースブック一覧

◽️ワールドロア
さらに世界観にまつわるワールドロアもいくつか簡単にピックアップしておきました。
こちらはかなりマニアックな、ガチで世界観を知りたい人向けの内容(2077どこいった...ていうレベル)です。ご注意を。

  1. サイバーパンクの世界観『暗黒の未来』とは
  2. ノーマッドAtoZ
  3. 荒坂家の一族
 
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補足情報1:ナイトシティ

ここでは原作サイバーパンクシリーズの架空都市「ナイトシティ」について概要をまとめています。

注意点として...原作で紹介されているナイトシティの全容は極めて細部にまで及んでおり、過剰なまでの情報の全てをここにまとめることは難しく、2077をプレイする上で知っとくと良さげな内容を中心に(独断と偏見で)集めました。またここに掲載した内容はあくまで2020時点のナイトシティです。サイバーパンク2077でも舞台となるこの架空都市が2077年では大きな変貌を遂げていることも十分ありえます。ご注意を。


*主な参考資料:Cyberpunk2020 RulebookNight CityProtect & Serve
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【目次】
  1. 概要
  2. 沿革
  3. エリアマップ
  4. 公共交通機関
  5. NCPD(ナイトシティ警察)
  6. ナイトシティを構成する7つのヒエラルキー(市民層)

1. 概要
ナイトシティは、1994年にRichard Alix Nightの手によって完成した米国カリフォルニア州にある架空都市(地図↓)。
人口は500万人(2020年時)で、街のスローガンは ”The City on the Edge of Tommorow” 。ナイトシティを訪れる旅行者の数は年間900万人にも及び、最先端のラピッド・トランジットやLDLを完備。中心街のコーポレートセンターには世界有数の巨大企業たちが軒を連ね、テクノロジーの栄華を象徴する大都市である。

【 2077比較1】
・原作2020の設定:2019年にNet54が実施したアンケートによると..."全米で最も危険な都市はデトロイト”
2018 E3トレーラー:”2077年現在、ナイトシティは全米一住みづらい場所だ”

2. ナイトシティ沿革
  • 1990:リチャード・ナイトが建設会社「Halsey, Ferris and Night」を退社独立し、カリフォルニア沿岸部に「Coronado City」都市建設計画を実現すべく「Night International」を設立
  • 1992:アラサカ、EBM、Petrochemの3社が、リチャード・ナイトに資金提供
  • 1994:5月にCoronado City(後のナイトシティ)が完成
    • なおナイトシティの旧称である「Coronado City」というのは、Del Coronado Bay(架空)に建設されたことに由来するが、これはカリフォルニアの最南端に位置する都市サンディエゴにある実在の「Coronado Bay」とは無関係。ナイトシティのロケーションは現実世界でいうMorro Bay周辺をモデルにしている模様(参考
  • 1998:9月にリチャード・ナイトが暗殺される。これを受けてCoronado Cityの市議会は、哀悼の意を込め市の名前を「ナイトシティ」と改名
    • 暗殺の経緯についてはドキュメント1998年参照
  • 2009:Mob Warが開始
    • 詳細はドキュメント2009年参照
  • 2020:現在

3. エリアマップ
大都市ナイトシティは主に以下のエリアで構成される:
  • 中心部
    • ダウンタウン
    • コンバットゾーン
  • 郊外
    • サウス・ナイトシティ
    • パシフィカ
    • ランチョ・コロナド
    • ヘイウッド
    • ノース・オーク
    • ウェストブルック
*詳細はWikia等を参照

上のマップにあるダウンタウンエリア(赤枠)、その詳細マップが下(左)。右側はさらにそれを区画ごとに分けたマップ。
なお原作ではこのダウンタウンエリアを異常なまでに詳しく紹介しているが、残念ながらここでは全て割愛。
ちなみにナイトシティのコンバットゾーンはダウンタウンの(下の詳細マップよりも)南に位置する。



【 2077比較2】
48分ゲームプレイデモでVが口にしている「Afterlife」というバーは(上の区画マップの)B4、
2018年Gamescom出展の際にCDPRが模した「Atlantis」というクラブはC3、
2019年E3等で出展した時のブース「Totentanz」というブースターギャング御用達のクラブはA3…にそれぞれ(原作にも)存在する

なおゲーム版2077のナイトシティについては、CDPR自ら公開しているこちら↓の公式紹介文も参考にどうぞ:
ナイトシティを構成する6つのエリア - 公式紹介まとめ
*2020時代のナイトシティが2077年に至るまでの間にどのような変化を遂げたのか、多少なりとも解説されておりオススメです

4. 公共交通機関
ナイトシティは街の玄関口として公共交通機関のターミナルを陸海空全てにおいて有するが、ここではその中でも以下3つの公共サービスについて簡単に紹介:
  • 飛行船
  • マグレブ
  • タクシー
・飛行船
ここでいう飛行船(Dirigible)とは、長距離輸送が可能な大型エアシップのこと。一般的な旅客機やエアロダインとは異なり、セキュリティも万全で、船内で提供されるサービスも極めて質が高い(コーポエリート御用達のプライベートジェットに次ぐほど警備にも抜かりがない)。そのため庶民の交通手段ではなく、これを利用できるのは一部のエリートに限られる。

なおサイバーパンクの世界では、VTOL型の小型飛行艇(エアロダイン)が普及していることもあり、滑走路を必要とする通常の飛行機は現実世界に比べ下火になっている。もちろんオスプレイやジェット機のような、エアロダインより長距離輸送が可能でより速く飛べる機体も存在するが(ナイトシティには国際空港もある)、航空燃料の高騰によって現実世界ほど空の旅は一般的ではないのが実情。
【 2077比較3】
2077のトレーラーやスクリーンショットで確認できる「空に浮かぶ(Dirigible的な)何か」:
【追記】The World of Cyberpunk 2077によると、↓の飛行艇はDirigibleではなく貨物輸送のエアシップである可能性が高い:参考

*なお原作2020で紹介されているDirigibleとは主に、ヘリウム(とCHOOH2)を使ってゆっくり上空を飛行するいわゆる(ツェッペリン的な)飛行船のことを指す
・マグレブ
マグレブ(Maglev)というのは、いわゆる(リニアモーターカー的な)大陸間輸送システム〜要するにサイバーパンクの世界における鉄道のこと(*現実世界にも実際中国に上海マグレブというものがある)。1998年に建設がスタートし、稼動は2008年から。マグレブで西海岸から東海岸までの所要時間は約12時間で、ナイトシティが西の発着地(東はワシントンD.C.だが、2020年からボストン-NY間の拡張工事が進められている)。
なお大陸間マグレブを運行するのはPlanetranという会社なのだが、ナイトシティには企業数社が出資してできたNCART(Night City Area Rapid Transit)という会社による独自のマグレブ(メトロ)が存在する。NCARTが提供するマグレブによって、上にあげたナイトシティの全てのエリア(郊外も含む)は20分圏内という市内アクセスが可能。
【 2077比較4】
48分ゲームプレイデモでも、ジャッキーと待ち合わせに向かうシーンでNCARTの駅が確認できる
・タクシー
ナイトシティには以下にあげる3つのタクシー会社がある:
  • Red Cab Inc. - 2012年創業のナイトシティ最大手のタクシー会社。創業者のAlec Belavitzがもともとのイエローキャブを祖国ロシアを想起させる「赤」に塗り直したことが社名の由来。車両の装甲は厚く整備も行き届いており、呼び出しから大体5分以内で客の元へ来てくれる。料金は1マイル3.25eb。
  • AeroCab - 前身はナイトシティのローカルエリアをつなぐ(短距離の)エアタクシー業だったが、その後企業のエアロダインを安く買い取って現在のAeroCabを発足させた。他社と比べ料金は割高(1マイル10eb)だが、通常のタクシーと比べて(上空を飛ぶため)安全で、Movers(後述)のような割と裕福な層を主な顧客としている。
  • Combat Cabb® Company - 他の2社より規模には劣るものの、車両装甲では他社の追随を許さない。戦闘に熟知した運転手のもと、客が望む目的地がどれだけ危険であっても唯一連れてってくれるタクシー会社。会社のモットーは『お客様の生死に関わらず、お望みの目的地までお連れいたします。戦闘は我々にお任せを!』

なおナイトシティには他にNCTC(Night City Transit Corporation)が運営するバスサービス、Honda-Avis(日本の本田技研の子会社)やRenta-Robo Inc.が運営するレンタヴィークルサービスなどもあるが、ここでは割愛。
【 2077比較5】
すでに公開されているスクリーンショットから:Combat Cab(b)の運転手「ナーラーヤン勇」

5. NCPD
2077のトレーラーでも確認できるナイトシティ警察ことNCPD(Night City Police Department)は、(2020年時点で)ナイトシティに3つの分署を持ち、他の全米都市とは違い企業との契約形態をとらない、独自の治安維持機関として存在している。NDPDによる最新のセキュリティシステムやAVを駆使した航空巡回、コーポレートゾーンを企業セキュリティに一任するなどの措置により、デトロイトやシカゴのような犯罪都市に比べればナイトシティは比較的安全な街といえる。とはいえNCPDは慢性的な人材難に悩まされており、また直近の予算削減によって(NCPDの)人員削減が行われたため、2020年時点では旅行者のコンバットゾーンへの回避勧告も出されている。

原作サイバーパンクシリーズでは、警察機関についても細かく設定されており、指揮系統としては以下のようになっている。
ただしここでは(文字数制限の都合上)Tactical部門に属する「MaxTac」のみに絞って簡単に紹介。

*I.A.D.=Internal Affairs Division(内務調査、監察課)の略。その他詳細についてはWikia等を参照

・MaxTac
MaxTacが属するTactical Divisionは誘拐事件やサイバーサイコがらみの極めて危険度の高い任務に特化した部署で、いわゆるSWAT(Special Weapons And Tactics)チームもこの部署に含まれる(ちなみにもう一つの「RIOT」は民衆暴動に対処するセクション)。
Maximum Force Tactical Division、通称「Max-Tac」は、C-SWAT(Cは”Cybernetic”のC)とも呼ばれ、ナイトシティでの正式名称は「Cyborg Suppression Unit」。上述のようにサイバーサイコに関するあらゆる脅威に対処するためのセクションで、全てのエージェントは最高のトレーニング・装備を備え、凶悪なサイバーサイコにも対応できるようサイバーウェアによる自身の強化にも抜かりがない。ただしこの(相手を制圧するために)「毒を以て毒を制す」的な自己強化は、彼ら自身も常にサイバーサイコシスの危険性を伴いながら日々の任務に当たっているという意味でもある。通常のSWATチームが対処できないような案件にも出動を要請されるなど、彼らの現場は常に死と隣り合わせであり、通常1部隊=6隊員+指揮官の計7人編成で行動している。(注:サイバーサイコ及びサイバーサイコシスについては補足情報6を参照)

【 2077比較6】
2013年に公開されたティーザートレイラーから:NCPDのエージェントの右肩に「MaxTac」のバッジが確認できる

6. ナイトシティを構成する7つのヒエラルキー(市民層)
最後に原作で紹介されているナイトシティの市民層を簡単に。
すでにCDPRから似たようなコンセプトとして2077における4つのヒエラルキー(下記参照)が公開されているが、原作2020では更に細かく7つの市民層が設定されている。
  • Powerdealers
    ヒエラルキーの頂点に君臨し、国際情勢をも左右するようなエリート中のエリート(巨大企業のCEOなど)。彼らは常に取り巻きに囲まれており、コーポレートセンターのペントハウスに居を構えこれ以上ないほど優雅な生活を送る
  • Corpzoners
    全国レベルで企業経営に従事しているのがCopzoners。国際的な影響力を持つPowerdealersには劣るものの、彼らがリッチ階級であることには変わりなく、アラサカ・セキュリティに代表される警備会社を個人的に雇っている者も少なくない
  • Movers
    ナイトシティの企業エリア(=一等地)のはずれ、もう少し安価な住宅街に暮らすのがMoversと云われる層。一応企業の一員ではあるが、彼らにはPowerdealersやCorpzonersのように派手に使う金や時間はない。企業という「勝ち組」からふるい落とされないよう、出世を目指して日々奔走している連中

  • Edgerunners
    サイバーパンクのアングラ社会で暗躍する層のことをエッジランナーといい、多種多様な職種、人種、生活スタイルが共存する。密輸、暗殺、ネットランニング、ミュージシャンなど活動範囲は人それぞれで、平たく言えばゲームに参加するプレイヤーは全員このエッジランナーに属する。ちなみにこのエッジランナーをそのまま「サイバーパンク」と呼ぶこともある
  • Mallplexers
    エッジランナーとは対照的な存在がMallplexers。いわゆるミドルクラス層のことを指し、奴隷のごとく企業にこき使われている連中。主にセールスや事務職を生業とする者が多いが、中には生きていくためにハンバーガー屋を営む者もいる。ちなみに「Mallplexers」という名称は、ミドルクラスの多くが居を構えているショッピングモールに由来する。もともとこの建物(Mallplexes)は警備の行き届いた市街地エリアのショッピングモールだったのだが、次々とオフィスや居住エリアが拡充されていき、その後のアメリカ混迷期でも重警備のおかげで失われずに済んだ。ただし現在は入居者の数が膨大なため、各戸ワンルーム(風呂付き)が基本で、時にはそのワンルームを複数人でシェアする場合もある
  • Beavers
    同じくミドルクラス層であるBeaversは、Mallplexersとは対照的に郊外で暮らす連中を指し、この層が中心となって形成されたいわゆる「Beaverville」と呼ばれるコミュニティがナイトシティ郊外にはいくつかある(例:パシフィカにある”WestWind Estates”)。Mallplexに比べて閑静で清潔なBeavervilleではより家族向けな生活が営める。ちなみに”Beavers”という名称は、1957年から全米で放映された「Leave It to Beaver」というシットコム(シチュエーション・コメディ)にあやかって命名されたもの
  • Streetscum
    文字通り貧困のためにMallplexの賃料も払えないような極貧層、それがStreetscum。日々の寝床を求めてコンバットゾーンにあるボロボロのテナントを利用するなど彼らの生活は極めて厳しく、専らKibble(サイバーパンクの世界で流通している合成食品のこと。猫飯的な存在:参考)やネズミの丸焼きなどを日常食にしながら日々暮らしている
【 2077比較7】
CDPRが公開した2077のスタイルコンセプトアート:詳細はこちら

 
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補足情報2:コンバットゾーンとブースターギャング

サイバーパンクの無法地帯「コンバットゾーン」と、そこでしのぎを削る「ブースターギャング」について簡単に。

なおサイバーパンク2077にコンバットゾーンが出てくるかどうかについて、詳細は現在のところ一切不明です(2077のプレイエリアにコンバットゾーンが含まれているか、もしくは2077年までコンバットゾーンが残っているか、これに関する情報がまだ出ていないため)。ご注意を。

◽️コンバットゾーンとは(参考ツイート:/

政府や警察機関の統治が及んでいない市街地エリアのことを、サイバーパンクの世界では一般的に「コンバットゾーン (Combat Zone)」と呼ぶ。ギャングや犯罪組織がここで何をしでかそうと(彼らが外へ出てこない限り)各自治体や企業は一切気にもとめない。コンバットゾーンとはそういう暗黙の了解がまかり通る、法の及ばない無法地帯なのだ。

予算不足で市政が滞っている時、貧民街への政策がまず最初に犠牲になるものだが、こうしたエリアは治安悪化の一途をたどり、そこで暮らす人々は貧困から抜け出せず次第に凶暴化していくのが世の常。たいていのコンバットゾーンはこのような治安の悪い貧民層から形成されることが多い。*その他コンバットゾーンの形成例:ドキュメント1998年参照

またコンバットゾーンは世界各地にあり、もちろんナイトシティにも存在する。
cyberpunk-nightcity.jpg*ナイトシティの市街地図。コンバットゾーンはこのエリアのさらに南に位置する。こちらの地図(非公式)でいうと64番のエリア
ナイトシティのコンバットゾーンは一般人が気軽に足を踏み入れる場所ではなく、絶対に必要でない限り誰もそこに近づくことはない。熟練のソロですら躊躇するほどで、警備チーム丸々そのまま行方不明になることすらある。この危険地帯に自ら入っていこうとするのは、Combat Cabbとトラウマチームぐらいなものだ(もちろんフル装備で)。
*Combat Cabb:原作に登場するタクシー会社の一つ。2077のE3トレイラーでも確認できる:参考


◽️ブースターギャングについて(参考ページ:Wikia

ブースターギャング(Boostergangs)とは、サイバーテクノロジーで固めたストリートギャングのこと(自身をサイバネティクスで”強化 (boost)”しているためこう呼ばれる:参考)。無害な連中から完全に暴力中心な連中まで幅広くおり、彼らは都市部で暮らすその危険性から極めて縄張り意識が高く、いずれのギャングも必ず自らのテリトリーを持ち合わせている。特にコンバットゾーンではそれが顕著。
ナイトシティの主なブースターギャングは以下:

  • Chromatic Metal Gang
    ロッカーボーイムーブメント(ドキュメント1997年参照)に啓発されたギャングで、その旗印となるのはお気に入りのロックバンドの歌や歌詞。大抵の連中は常識知らずだが、中には温厚な者もいる
  • Combat Gang
    どのギャングも必要とあらば戦闘に躊躇することはないが、彼らほど戦闘に執着するギャングは他にいない。仲間内でも争いが絶えることはなく、一度争いがスタートすれば彼らは決して最後まであきらめない、極めて危険な連中。ちなみに2077の48分ゲームプレイデモに登場するメイルシュトロム(参考)は代表的なCombat Gangのひとつ
  • Cult Gang
    特定の信仰やイデオロギーのもとに集ったギャング。彼らが略奪行為に及ぶことは少ないが、ジョン・フラムのような偶像崇拝を掲げているため、過激派思想の者も多く基本的に皆クレイジーである
  • Family Gang
    ”家族”を率いる”年長者”たちは居場所を失った孤児たちを保護し、縄張りを守ることにも余念がない。一方”子供”たちも盗みなどの雑用で”家族”をサポートする、仲間意識がきわめて高いギャング
  • Hate Gang
    自分たちの人種が至高だと信じて疑わないギャング。制服/旗/ミリタリースローガンを掲げて、正しくないと思うもの(要するに異人種全般)には何にでも攻撃を吹っかける厄介な連中
  • Party Gang
    モットーは”とにかく楽しければなんでもいい”。パーティーはもちろん、酒やドラッグ、楽しいと思えば強盗も厭わない。快楽主義が彼らのライフスタイル
  • Prankster Gang
    いたずら(prank)好きなギャングと言えば聞こえは良いが、彼らが考える”いたずら”というのは、赤い車の後部ガラスを全部壊していく、公共プールに精神ドラッグを放出する…といったタチの悪いものもある
  • Posergangs
    有名人のコスプレギャング(例えば代表的ギャング「The Kennedys」はメンバー全員”ジョン・F・ケネディ”)。Biosculpting(ドキュメント2016年参照)に代表されるテクノロジーを使って全員同じ外見で統一しており、その見た目のインパクトは護身目的にも効果を発揮している
  • Self-Defense Gang
    自衛目的で結成されたギャング。基本的に縄張りを侵害されない限り平和的な連中である

◽️他にもR. タルソリアンゲームズがツイッター上でブースターギャングについて色々説明してくれていますので、興味のある方はどうぞ
【目録】R.タルソリアンゲームズによる原作2020トリビア集(*ブースターギャングについてのトリビアは4/3~4/19)

 
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補足情報3:主要登場キャラクター (NPC)

ここでは原作に名前が出てくる主要キャラクター(NPC)について何人か簡単に紹介します。
*なおゲーム内ロールについてはウィキペディアの方で簡潔にまとまっていますのでそちらを参照のこと
【追記】原作のNPCに関しては邦訳版を手がけられた翻訳チームの一人「楯野降雪」さん直々の執筆によるこちら↓の記事も必見です!
4Gamer:プレイ前に読みたい「サイバーパンク2077」前史・徹底解説。英雄ジョニー・シルヴァーハンドの足跡から“暗黒の未来”を振り返る



1. Johnny Silverhand(ロッカーボーイ)
元軍人でシルバーのサイバネアームがトレードマークのJohnny Silverhandは、原作におけるロッカーボーイの象徴ともいえる存在。彼がリーダーを務めていたバンド「Samurai」(2008年に解散)のメンバー構成は以下(
参考):
・Johnny Silverhand (vocals and lead/rhythm guitar)
・Kerry Eurodyne (vocals and lead/rhythm guitar)
・Denny (drummer)
・Nancy/Bes Isis (keyboardist)
・Henry (bass)
ちなみに2018年のE3でキアヌ・リーブスがジョニー役として登場することが明らかになり注目をさらったが、原作者のマイクさんはその後のインタビューで次のように答えている:
「ジョニーが(原作からの)重要キャラということで、誤解している方がいるかもしれませんが、ジョニーは決して「いい奴」なんかじゃありません。戦争からの帰還兵でPTSDに苦しみ波乱万丈の人生を送ってきた男です。特に女性の方にアドバイスですが、あなたが2077でジョニー(キアヌ)とそういう関係に持ち込もうと思っているならやめといたほうがいいです。彼に振り回されるのがオチです。なんせ(原作でも)恋人を救出するために臆面もなく元カノに助けを求めてましたからね。デート相手にふさわしい男ではないですよ!」


2. Alt Cunningham(ネットランナー)
凄腕のプログラマーとして、またSoulkillerの発明者としても知られるAlt Cunninghamは、Johnny Silverhandの恋人で、かつてITSという企業で働いていた経歴を持つ。2020のコアブックではSoulkillerを独自に拡張しようと企むアラサカの手によって誘拐され、その後アラサカのデータベースに取り込まれてしまう様子が描かれている

SoulkillerとはAlt Cunninghamが発明したBlack ICEプログラム。
*ICE(Intrusion Countermeasures Electronics):ウィリアム・ギブスンのスプロールシリーズに代表されるサイバーパンクジャンルにおける用語(攻殻機動隊では”攻性防壁”)。ハッカーからデータを守るためのセキュリティプログラムのことを指し、特にブラックアイスと呼ばれるものは、必要とあらば(ハッカーの脳や神経系に作用して)侵入者を死に至らしめることも可能

もともとは人口パーソナリティを包括するマトリックスとしてAltが開発していたのだが、その過程でこのマトリックスにエングラムを生きたまま収められる(コンピューターにエングラムを出し入れできる)ことを発見したのが始まり(この画期的な発明は例えば本人が死亡してもエングラムは残るので、Net上で不死の存在になり得ることを意味する)
ちなみに…2020(下記注釈参照)でこのSoulKillerに目をつけたアラサカは、Altを拉致してプログラムの改良を強要。しかしAlt(この時すでに本人はSoulKilerに取り込まれていた)はこれに屈せず、逆にアラサカのメインフレームから2000万ドルを盗み自分のアカウントに送金したが、直後に彼女を救出に来たJohnny Silverhandたちが乱入したため、その衝撃で(エングラムを自分の体に戻す前に)Altのサイバーデッキのコネクションが外れてしまう。その後JohnnyはAltが死亡したと思い込みその場を立ち去るのだが、実際のAltはNet上でまだ(デジタルゴーストとして)生きていた…というのが2020での出来事
【注釈】「Arasaka Riot」として知られるこの事件が起きたのは(2020年ではなく)2013年4月16日のこと参考

SoulKilerはその後も~ハッカーのパーソナリティをコピーする~対ネットランナープログラムとして改良が続けられた。Firestorm(補足情報7参照)の頃にはSoulKiller3.0まで進化しており、熟練のネットランナーに比肩するほどの狡猾なAIを備えた世界で最も凶悪なプログラムとして恐れられ、第四次企業戦争時にはアラサカが所有するSoulKillerを強奪するための最終ミッションをミリテクが仕掛けている

3. Rache Bartmoss(ネットランナー)
レイシィ・バートモスは世界最高のハッカーとして名高いネットランナー。栄養失調から来る慢性的な発作や、長期のNet依存による脱水症状などもあり非常に不健康。しかし体調が悪化しながらもクライオ装置の力を借り最期まで最高のハッカーとして活動していた。極度の人間不信でもあったため、彼の居場所を知る者は誰もおらず、第4次企業戦争の最終ミッションを前に死亡(?)


4. Rogue(ソロ)
Johnny Siverhandの元恋人で、2020(正確には初版の舞台になっている2013年)当時はNomad Santiago(後述)とチームを組んでいた。原作では拉致されたAltを救出する際、Johnny Silverhandが(過去の因縁がありながらも)ベストな人材が必要だとして彼女に助けを求めたほどのナイトシティでもトップクラスのソロ。
ゲーム版2077にも登場予定(ゲーム版ではソロではなくフィクサーとして登場)で、日本でも邦訳予定のゲーム版2077ガイドブック「The World of Cyberpunk 2077」の巻末には、「サイバーパンクとは何か」という題目で2077時代のローグが2020時代を振り返った必見のインタビューが掲載されている


5. Shaitan(ソロ)
Firestormシリーズ(補足情報7参照)時のRogueの相棒。ボーグ

【注釈】サイバーパンクの世界では全身をサイバネ化することも可能で、これを一般的に「FBC (Full Body Conversion)」、または「ボーグ」と呼ぶ。通常のボーグは脳と脊椎を残してほぼ全ての体の部位がメカニックに置換されている。ちなみにこれを実現するには相当の高額請求を覚悟しなければならない

6. Spider Murphy(ネットランナー)
現実世界よりもネットスペースを好むネットランナー(女性)。Rache Bartmossとも知り合いの有名ハッカー。ちなみにSpider MurphyというのはいわゆるHN(ハンドルネーム)。ネットの世界で実名を出す者はめったにおらず、唯一の例外といえるのがレイシィ・バートモス(実名を出して当局に目をつけられても、レイシィはそれをかいくぐれるほど卓越したネットランナーだったため、彼はあえて実名で活動していた)


7. Thompson(メディア)
過去に妻を殺害された遺恨から打倒アラサカを掲げるWNSのトップリポーター。ヘビーウェポンが好き。原作では(Arasaka Riot時の2013年)アラサカに拉致されたAltを救出しようとJohnny Silverhandに真っ先に手を貸した。The World of Cyberpunk 2077を見る限り、彼もゲーム版2077に登場する可能性あり


8. Morgan Blackhand(ソロ)
プラグマティズムを地で行くソロ中のソロ。本人曰く「今まで何人殺してきたかわからない。名前をクリント・イーストウッドに変えようか」…ちなみに2077のゲームプレイデモ(1:00~)では主人公Vの「子供の頃のヒーロー」の選択肢に彼の名前がある(参考。注:後にこの要素は廃止され、代わりに3種のライフパスシステムが導入された。そのため製品版では実装されていない)
なお原作者マイクさんが(自分が遊ぶ時用に)考えた本シリーズにおける「典型的なソロキャラクター」がモーガン・ブラックハンドということもあり、ロング丈のコートと黒いサイバーアームを特徴とする彼は作中でも最強クラスのソロである


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【その他】



9. Adam Smasher(ソロ)
Firestorm(補足情報7参照)の最終ミッションでアルファチームの前に立ちふさがったボーグ。ゲーム版2077にも登場予定。
”They call this war a meat grinder. Well you're the meat, and I'm the grinder, baby!”
ちなみに彼はもともとNYギャングのチンピラの一人に過ぎず、一時は軍に所属していたこともある。除隊処分を受けた後、NYで数発のロケット弾を喰らいミートローフと化してしまうものの、謎の企業の支援を受けられたことで、全身サイボーグの「アダム・スマッシャー」として蘇ることになった。『Metal is better than Meat』の思想を地でいくアダムは、(彼の思想を脅かすほどの存在である)史上最高のソロ「モーガン・ブラックハンド」を(一方的に)ライバル視しており、彼が第四次企業戦争でアラサカに加わったのも、モーガンがミリテク側についていたことが一因


10. Nomad Santiago(ノーマッド)
原作サイバーパンクでは大量に溢れかえるノーマッドの中からいくつかのクランが形成され、後に独自のネーションとして独立していくものもある。その一つ「Aldecaldo」に属するのがこのSantiago。原作では(Arasaka Riot時の2013年)Rogueの相棒としてJohnny Silverhandに手を貸した。また当時(Arasaka Riot時)は単なる「Santiago」という名前で登場しているが、その後Aldecaldoのリーダー「Juan Aldecaldo」が臨終の際に彼を後継者に指名したため、それ以降は「Santiago Aldocaldo」としてクランを率いていくことになった。なおTRPG版最新作「Cyberpunk Red」では彼の息子である「Trace Santiago」も登場している(ただし息子のロールはノーマッドではなくメディア)


11. Anastasia Luccessi(ソロ)
ミリテク創業者の一人「Antonio Luccessi (ドキュメント2000年参照)」の孫娘。17歳で実家を飛び出した後、祖父Antonioのすすめでミリテクの兵士訓練学校へ入隊 - そこで才能を開花させ、現在はミリテクの特殊部隊員の中でも最も危険なエージェントとして名を馳せている。若くて(2020時で25歳)美しいアナスタシアではあるが、兵士から「The Bitch」というニックネームをつけられるほど冷静沈着なソロであり、あらゆる特殊任務を遂行できるだけの戦闘技能を兼ね備えている


12. Max Hammerman(コップ)
NCPD(Nigh City Police Department:ナイトシティ警察)の巡査部長。2013年に公開された
トレーラーでは彼の親族と思わしき「Commissioner J. Hammerman」の名前がある

13. Susan Forrest(ソロ)
スーザン・フォレストは元NCPD警官で、現在(2020)は北カルフォルニア自由州の処刑人(公職)をつとめる凄腕ソロ。NCPD時代は最も高度な訓練を受けた隊員の一人としてMaxTacに所属していたが、警官時代に重症を負い、その後は自ら志願して現在の職につくことになった。最高級のGibson Battlegear(戦闘用アーマーで有名な衣料メーカー)に身をまとい、いかなる局面でも冷静沈着なスーザンは、追われる者にとって脅威以外の何者でもない

【注釈】ちなみにスーザンの現職である「State Executioner」というのは(業務内容に州ごとの差異はあるものの)一般的に次のような任務を遂行する者を指す:死刑囚官房の監督、死刑囚が逃亡した場合の追跡および其の処刑(方法は拳銃での射殺。州公認の合法行為とみなされる)、刑執行に関するその他代替案がある場合の監督と指示

*なお現実世界のカリフォルニア州は現在も法律上は死刑制度を維持している(参考

14. Andrew Weyland(ソロ)
世界有数のブラックオプスチーム「The Water Leopards」のリーダー。全身に蛇模様(参考)のタトゥーをいれていることから「Captain Boa Boa」の異名を持つ。戦闘では相手に一切容赦しない典型的なソロであると同時に、ジャマイカ出身の熱心なラスタファリアンでもあり、自慢のドレッドロックと黄色のCyberopticsが彼のトレードマーク。Petrochemの役員の一人「Angus Youngblood (ドキュメント2002年参照)」との結びつきが強く、権力志向の強いAngusの方も後に自分が権力を握れば彼らに便宜を図ると約束している間柄

【注釈1】The Water Leopardsはジャマイカ出身のフリーランス傭兵集団。ゲーム版2077にも登場する巨大企業「Petrochem」は以前から彼らと大口契約を結んでおり、近年はPetrochemの企業私設軍の一つに数えられる
【注釈2】ラスタファリとはアフリカ回帰を基本理念とするジャマイカ発祥の宗教思想のこと(参考)。これをルーツに世界的に広がったムーブメントがレゲエ・ミュージックで、この先駆者だったボブ・マーレーは現在もレゲエ界では神様のように崇められるジャマイカのシンボル(サイバーパンク風にいうとまさにロッカーボーイ)

15. Mbole Ebunike
2020年時のナイトシティ市長。かつての名前は「Judson Freeman」といい、5年ほど前までは企業相手におべっかを並べるだけの人物だった(その甲斐あって企業からの支援をとりつけ最近市長(というより企業の傀儡)に再選したばかり)。ただし近年は企業パペットからのイメージ脱却を図りつつ、名前も「Mbole Ebunike」と改め、新政党「Pan Neo-African」の活動に力を入れている
なお上のイメージ(15番)で中央にいるのが(2020時代の)Ebunike。左にちらっと映っているのはGaven Haakensenという市長補佐で、目的のためには手段を選ばない所謂マキャベリスト


*NCW3で公開されたトレーラー「Postcards from Night City」では、一瞬だけEbunikeと思わしき人物が映っている(2:05あたり)

ちなみに2077年のナイトシティ現市長は「Lucius Rhyne」という。このLuciusに変わる次期市長として「Weldon Holt」と「Peralez」の2人の候補者によって繰り広げられる熾烈な選挙戦...(ナイトシティ公式案内サイトを見る限り)こうした政治的要素もゲーム版2077の舞台の一つになっている模様

16. Richard Night
リチャード・ナイトはナイトシティの前身となったCoronado Cityの創設者。
1990年にそれまで勤めていた建設会社を退職したナイトは、自分が理想とする都市建設を実現させるべく自らの会社を立ち上げる。そしてアラサカ/EBM/Petrochemの三社から出資を募り、その後もCoronado City建設計画は着々と進められ、1994年に正式にCoronado Cityが完成した。ナイトは1998年に死亡するが、彼への哀悼の意をこめてその後は「ナイトシティ」と呼ばれるようになった。ちなみにゲーム版2077に登場する「Night Corp」はリチャード・ナイトの死後、妻の「Miriam Night」によって創業したゲーム版オリジナルの企業


17. Saburo Arasaka
サブロー・アラサカはアラサカ・コーポレーションのCEOにして、サイバーパンクの世界で最も力を持つ人物の一人。すでに(2020年の時点で)101歳という高齢にも関わらず現在も企業トップの座に居座り続け、彼の底なしの権力欲は衰えを知らない。日本をかつての強大国へ再び導くのが彼の本懐。ゲーム版2077でも齢158にして今だに現役な模様(公式ツイート
なお荒坂一族についての詳細はワールドロア3を参照


 
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補足情報4:"The Net" 概説

サイバーパンクの世界で利用されているグローバルネットワーク「The Net」
すでにCDPRの開発者からも「ネットランニングは2077の重要な要素の1つ」とのコメントが出ています(ソース:
IGN

ドキュメントではその全容を伝えるのが難しかったため、Netの概要として別途こちらにまとめることにしました。Wikiaのページがわかりやすくまとまっており、ここに掲載した内容は基本的にそれを翻訳したものですが、文字数制限の都合上、独自に編集し加筆もしくは割愛している項目がいくつかあります。詳細は原文を参考にしてください。

*参考ページ:Wikia
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【目次】
  1. "The Net"とは
  2. アイコン
  3. IGTAsについて
  4. Data Fortress
  5. Netを構成する各リージョン

1. ”Net”とは
「The Net」はサイバーパンクの世界で利用されている遠距離通信ネットワークの総称。現実世界でいう「インターネット」に近いものがあるが同一ではなく、サイバーウェアをはじめとする各種機器に用いられるなど、その用途はより多岐にわたる。

Netへの接続にはある種の「モデム」が必要で、現実世界と同様のやり方(PC+モニタ+キーボード)でNetにリンクすることもできるが、その道のプロとなればサイバーモデムと呼ばれるインターフェイスを介して「3D」にネットを体験する。サイバーモデムが提供するネット体験はキーボードを介した従来のやり方よりもずっと直感的に、かつ没入感をもたらすため、ネットランナーたちはキーボード勢よりも迅速にNetを徘徊できる。

このようにNetを「原初体験したい」というわけではないなら、サイバーモデムは必須ではあるが、かといってサイバーモデムをつなぐインターフェイスプラグをあなたの頭に埋め込む必要が必ずしもあるかというとそうではない。電極の代わりに2Dモニタ(+キーボード)を使う人もいる。ただ現実的にはネットランナーがプラグを(自分の頭に)埋め込むのは普通のことであり、これはサイバネティクスを介して直接自分の脳と接続した方がより迅速に行動できるから。Netの世界で「スピード」はとても重要なのだ。


. アイコン
Net内で遭遇する様々な事象(人やプログラムなど)は通常3Dアバターとしてアイコン表示される。モノクロの平面アイコンといった単純なものから、人間と見紛うばかりのフォトリアルなものまで様々だが、Data Fortresses(後述)/ネットランナー/個人のプログラムなど…Net内のあらゆるものがアイコンとして視覚化される。

Net内では全てが三次元で表現されており、この視覚化を担っているのがサイバーモデムのインターフェイスプログラム。またNetの環境表現は映画「トロン」の世界に似ていて、その表示クオリティは各コンピューターの処理能力やメモリに依拠する。そのため(超高性能コンピューターなら)映画「マトリックス」のような現実さながらのリアルな世界が眼前に広がっているだろう。ただし前述のようにアイコンをリアルにするとその分メモリも喰うため、Netのアイコンは低画質なのが一般的である。なおLDL(後述)などにもアイコンがある。

アイコン表示はNet内に存在するプログラムにも及ぶ。しかしこれらのアイコンは相互作用が可能で、また任意にカスタマイズすることも可能なため、誰もが直感的なやり方でハッキングできる危険性を含んでいる。例えばワームプログラムを使って感染経路になりえるアイコンをデータウォール(後述)に移動させ、その先にあるデータ群にアクセス可能な扉に書き換えてしまう、といった具合に。

Netの3Dインターフェイスは全てのサイバーモデムで共有されているので、あなたが見たものは他の人にも同様に見えている。ちなみに元々のNetには3つのインターフェイスがあり各自その中から選別して利用していた。最も人気があった「Megacity」は1930年代のフィルムノワールを彷彿とさせるUI、2つ目はD&D(ダンジョン&ドラゴン)をモチーフにしたUI、そして3つ目が映画「タロン」のUIである。最終的にこの3つの選択形式は廃止され、今日Netで用いられているインターフェイスは「タロン」のものに統一された。


. IGTAs (Ihara-Grubb Transformation Algorithms)について
IGTアルゴリズムとは今日のNet体験の中核をなすもので、このアルゴリズムが2014年に導入されたことによって従来のアナログだったネットワークからリアルな世界が広がる現在のNetへと変貌した。現実世界さながらにネットスペースの”距離”を測定するIGTAsは、例えば地上30階にあるBBSと地上1階にある3ブロック離れたBBSを(現実世界の位置情報に基づいて)識別し、その位置情報がNet上でも「視覚的に」表示される。つまりこのプログラムによって、あたかも現実世界を移動しているかのようにNet上を移動することが可能になり、現実世界のいわゆる「インターネット」などよりもずっと効率的で直感的なネットランニングが実現することになった。
【注釈】BBSはBulletin Board Sitesの略で、一般的にいうと「電子掲示板」のことだが、ここで用いられているのは「ホスト局」の意味の方。サイバーパンクでいうBBSとは、個々のコンピューターが情報をアクセスする時のハブステーションとしてデザインされたロケーション(いわばネットランナーたちが情報共有(ソフトウェアの交換やチャットなども含む)するためのフレンドリーDataFortress)のこと

またIGTAsの機能はNet内における視覚効果についても作用している。例えば接続が不安定だったりある種の干渉が起きた場合、まるで山が立ちふさがるかのように視界が一変。干渉が最大クラスなら目的地に行くのはもはや不可能なほどの大きな障害となって表示されるだろう。逆に干渉が特にないなら平坦なグリッド表示になる~といった具合に(Net上で)周囲の環境がリアルタイムにどのように表現されるか、この制御もIGTAsが担っている。なお具体的な環境の詳細は各リージョン(後述)ごとに異なるが、基本的な部分では世界のどこからNetに接続しても上記の仕様になる。


4. Data Fortresses
データフォートレスとは、Netに接続しているコンピューターシステムのこと。個人のコンピューターから企業の内部ネットワークまで総じてデータフォートレス(以下DFと表記)という。各DFは3DアイコンとしてNet内に(映画トロン風に)表示され、具体的なアイコンのフォルムはどこをホストにしているかによって変わる。DFのアイコンをリアルにするとメモリを喰うというのは上の「アイコン」の項で説明した通りだが、実際のDFは(映画マトリックスのような)フォトリアルなものから、城やクルーズ船、宇宙船などバリエーションは多種多様。DF内であれば「sysop」が(システムリソースの範囲内で)好きなように見た目を変更することもできる。
*Sysop:DFを操るオペレーターのこと。System Operatorの略

DFはシステムへの侵入を防ぐ「データウォール (Data walls)」を内包しており、システムリソースの量と質次第ではデータウォールの堅固さを左右する。巷ではこれらデータウォールを突破するためのプログラムが売買されており、ネットランナーたちは日夜これらのプログラムを駆使してシステムへの侵入を図る。また全てのDFには「コードゲート (code gates)」が存在し、これはデータウォールに守られたDF内のシステムにアクセスするメイン道路への入り口のようなもの。Net上では実際に扉(もしくはそれに似たような)アイコンとして表示される。

なおDF内に存在する各種システムは非常に直感的な方法で視覚化されている。例えば(デジタル上はメモリ領域にある)ファイルなら、鍵のかかったオフィスの中にあるキャビネットに収納されているので、実際にその情報にアクセスしたいならキャビネットの中のファイルを取り出して閲覧する、といった具合。


5. Netを構成する各リージョン
Netの世界ではどこから接続しても基本環境は共有しているが、以下に紹介するエリア(リージョン)に区分することができる。リージョンごとのデフォルト環境(”バーチャル”とも呼ばれる)は異なり、また各リージョンの境界は厳密に定められていない。これは様々な理由に起因してるが、大抵は各国の政府もしくは(大企業などの)影響力を持つグループがそのエリアでどれだけ権勢を誇っているかによって左右される。



IGTAsの導入以降、現実世界さながらのまさに仮想現実ともいえるネット体験が可能になった。あなたが太平洋諸島に居を置くネットランナーならば、Pacificaバーチャルを通じてNetを体験することになるだろう。以下に各リージョンを紹介:
  • Atlantis(中南米大陸~大西洋~アフリカ大陸西海岸)
    中米諸国が主に管轄するエリアで、パナマシティを中心に数多くの闇取引が行われている
  • Rustbelt(アメリカ中部~東部)
    NetWatch (ドキュメント2013年参照)/米国政府/ユーロマーケットのトロイカ体制による厳しい監視のもとネット犯罪には厳罰が処される
  • Olympia(アメリカ西部~南西部)
    名目上はNetWatchと米国政府が管理しているが、実際は最も権勢を誇っている企業が各都市を支配(例えばダラスはNet54、ソルトレイクはミリテク…といった具合)
  • Pacifica(北米西海岸~太平洋全域)
    ハワイ諸島まではNetWatchと米国政府による共同管理、それ以外のエリアになると他にアラサカやFACSの支配域でもある。Netで最も広いリージョンで、人口の海に輝く空、ドルフィンプログラムがパトロールするなどバーチャルも美しい
  • TokyoChiba(日本)
    日本は独自のリージョンを有している。アラサカ、FACS、財閥など多くの勢力が割拠するエリア
  • Afrikani(アフリカ大陸全域)
    ナイロビはOrbital Airが仕切っているが、それ以外のエリアは完全にカオス
  • EuroTheatre(ユーロ圏全域)
    欧州企業が支配する「ユーロシアター」は、Netで最も経済発展を遂げているリージョン。合法ビジネスにはうってつけの場所で、企業はNetWatchと連携を取り保安維持に務めている
  • SovSpace(東欧~ロシア圏全域)
    他と比べると時代遅れ感が否めないリージョンで、KGBに代表される政府機関やSovOilなどの企業が一応仕切ってはいる。諜報活動が活発に行われており、安く情報を仕入れたければ格好の場所
  • Orbitsville(宇宙域:月コロニーや宇宙ステーションなど)
    人の交流が盛んな”古き良き”時代を彷彿とさせるエリアで、宇宙居住者たちもよくチャットしている。宇宙関連企業とESA(欧州宇宙機構)が管轄
【注釈】
「IGTAsによって現実世界同様にNet上を動き回ることが可能になった」ことに関して、おそらく疑問に思う方がいると思われるので補足しておくと、Netには上記リージョンとは別に4つのスケール(縮尺)が存在する(参考ページ

  1. システムスケール
    最小単位の縮尺で、ネットランナーが特定のシステムに侵入する際に利用するスケール(サブグリッドマップと呼ばれる)。次のローカルスケールとはシステムアイコンを使って瞬時に切り替え可能
  2. ローカルスケール
    現実世界と同サイズのスケール。例えばシティグリッドマップにあるミリテクのDFからPetroChemのDFに移動したい場合、現実世界に存在する実際のオフィス間(DFを抱えるコンピューターがそこにあるため)と同じ距離を移動しなければならない。ただしNet上の移動速度は現実よりもずっと速く、例えばナイトシティのダウンタウンを縦断するのは8秒しかかからない
  3. リージョナルスケール
    上のローカルスケールで都市間を移動することも可能ではあるが、それがめんどくさい場合はこの縮尺。なおこのリージョナルスケールへ切り替えるためには、各シティグリッド間の行き来を可能にする「LDL (Long Distance Link)」が必要。この縮尺を使ってLAとワシントンD.C.の移動にかかる時間は8秒
  4. グローバルスケール
    LDLの中にはWDLリンクをサポートしているものもある。WDLで可能になるのがこのグローバルスケール。この縮尺ではロンドン-LA間を4秒、月面のティコクレーターにもわずか22秒で到達可能

6. その他
文字数制限の都合上、AIやプログラムに関しては割愛しています。詳細は原文を参照ください。

 
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補足情報5:サイバーウェア概説

ここでは原作2020で紹介されているサイバーウェアの概要と、用途に応じてカテゴライズされる10種のタイプを簡単にまとめています。
またゲーム版2077との関係もThe World of Cyberpunk 2077を参考にある程度補完しておきました。ただしここでまとめた内容は基本的にあくまで原作2020内のものであり、50年後を舞台にしているゲーム版はテクノロジーが進化して様相が大きく変わっているかもしれません。ご注意を。

なお本項では他に(こちらはサイバーウェアではありませんが)サイバーペットとACPAについても簡単に紹介しています。ご参考まで。


*主な参考資料:Cyberpunk2020 RulebookChromebookMaximum MetalThe World of Cyberpunk 2077
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【目次】
  • サイバーウェア
    • 時代背景
    • カテゴリー10種
      1. Fashionware
      2. Neuralware
      3. Implants
      4. Bioware
      5. Cyberweapons
      6. Cyberoptics
      7. Cyberaudio
      8. Cyberlimbs
      9. Linear Frames
      10. Body Plating
  • おまけ
    • サイバーペット
    • ACPA (Assisted Combat Personnel Armor)


サイバーウェア

サイバーパンクシリーズは突き詰めれば「食うか食われるか」の世界を舞台にしており、原作2020ではこのディストピアで生き残るためのデバイスとして数多くのサイバーウェアが紹介されている。例えばCyberfingersと呼ばれる万能ナイフ的なものから、内臓の位置を置換してしまうDecentralized Heart、皮下アーマーのSkinweave、腕にチェーンソーを埋め込むChainRippなど、例をあげればきりがないほど様々な用途に対応しており、他にもファッション向けのサイバーウェアはもちろんのこと、自分の感情を眼球に投影するサイバーオプティクスや、夜の営みのためのサイバーウェアといったものまで存在する。

時代背景

サイバーパンクの世界でサイバーウェアがここまで普及するようになった背景には、過去にあった2つの中米紛争が深く関係している。そもそも当初サイバーウェアというのは医療用義肢として研究されてきたのだが、第一次中米紛争(1990-1994)と第二次中米紛争(2003-2010)で米国社会が多くの負傷した帰還兵を抱えることになり、義肢の社会需要が飛躍的に伸びていた。またこうした時代背景と並行して、サイバーパンクユニバースでは2012年に開発されたナノテクノロジーが2015年には早くも実用化され、Biowareという新たなサイバーウェアも誕生し、テクノロジーの進化がますますサイバーウェアの隆盛に拍車をかけることになった。

2020年現在、自身を「サイボーグ化」するのは「スタイリッシュ」なことと同義である。テニスをするためにインプラントを施したり、自衛のために小型武器を埋め込んだり 〜 サイバーウェアは今や日常の隅々にまで浸透している。


【 2077比較】

ゲーム版2077のサイバーウェア:5つのカテゴリー「Gen0〜Gen4」(参考:The World of Cyberpunk 2077)

 *時代背景を知る上で本書の解説がとてもわかりやすいのでここで簡単に紹介します(注:ゲーム版2077ではサイバーウェアのカテゴライズが原作2020とは異なります)
  • Gen0
    Gen1の前(Gen=Generation)、サイバーウェア黎明期に開発された初期型モデルを指す。当時、第一次中米紛争で数千人もの負傷兵が本国に帰還し、義肢の開発が急速に推し進められていた。この社会情勢によって誕生した最初の「サイバーウェア」がGen0で、21世紀初頭頃までは義肢に代表される損傷した身体部位を補完する「医療器具」として主に利用され、値段も高く一般にすぐに普及するような代物ではなかった。初期のものであるため見た目もゴツく(形状も手/指というよりグリップ型)、2077年現在このモデルが市場に流通していることはまずない。

  • Gen1
    Gen0後の20年間(2000-2020)で開発された戦闘用/工業用サイバーウェアはGen1に分類される。この時期は第二次中米紛争の他に、第二次企業戦争(2008-2010)と第三次企業戦争(2016)も勃発したため、医療目的ではなく戦時に使えるサイバーウェアの開発が急速に進んだ。弾薬の荷重装備やモーショントラッカーなどのサイバーウェアを仕込んだサイバー傭兵の勃興(ドキュメント2015年参照)もあった他、工業用としては過酷な環境で働く労働者のための(呼吸器系を補助する)サイバーウェアなども誕生した。

    Gen0よりもかなりの進化を遂げたGen1は、2077年になった今でもブラックマーケットなどで見つけることができる。ただし現在は貧困層向けの安物サイバーウェアであることは否めない。

  • Gen2
    Gen1時代に紛争が相次いだことによって、サイバーウェアは医療の現場でも注目されるようになり、各企業がこぞってこの分野に参入した。Gen2はこれら医療用インプラントの他に、同時期に誕生したサイバーウェポン(後述)やRealSkinn(後述)テクノロジーなど、(特定の利用者だけのものではない)総合的なオーギュメンテーションとして市場に登場したサイバーウェアを指す。
    また”キッチュ”と呼ばれるスタイルが標榜する「遠い昔に失われた黄金時代の輝き」というのは、このGen2が市場に流通し出した時期と重なり、戦時ムードに逆らうかのように(パーティーに明け暮れたい)大衆のもとブレインダンスが大流行していた当時の社会機運とあいまって、サイバーウェアはこの頃を境に本格的に社会に浸透していくようになった。

    単純な加圧/水圧式だったGen1に比べ、人工筋肉による強力駆動が可能になったGen2の(インプラント系)サイバーウェアは、2077年でも(比較的安価なことから)一般に広く普及している。

  • Gen3
    Gen2から更なる改良を重ね、社会の隅々にまで浸透するようになった進化型サイバーウェアがGen3。このモデルが世に出た頃というのは、企業私設軍の兵士増強のために各企業がサイバーウェアの開発に躍起になっていた時期で、それまでの重い金属製のものから、より軽くて強靭なカーボンファイバーやセラミックポリマーへと素材が改良された他、諜報員のための皮下アーマーや暗器類、用途に応じた各種RealSkinnが開発されるなど、サイバーウェアがあらゆる角度に進化を遂げていた。
    
その一方で、生物学的に身体を強化する新テクノロジー「バイオウェア」(後述:ドキュメント2016年も参照)も同時期に誕生し、Skinweave(後述)やNanosurgeons(後述)など、通常のサイバネティクスとは違いEMPの影響を受けずスキャナーにも探知されないバイオウェアと従来のサイバーウェアを組み合わせることによって、企業エージェントの凶悪さにますます拍車がかかり、2077年現在もこれらGen3(の組み合わせ)は企業連中の間で広く利用されている。
    
Gen3の登場によってサイバーウェアは社会の至る所に浸透し(2050年頃からは)軍事/医療/製造業/家庭/娯楽/性産業などあらゆる場所/あらゆる階級に普及していくことになった。

  • Gen4
    2077年現在、サイバーウェアにおける最高モデルに属するGen4は主に2つの種類に分けられる。まず一つ目は巨大企業のエージェントが使用しているような品質/性能など全てにおいて文字通りトップレベルのサイバーウェアのこと。最高級のRealSkinnとGen4オーギュメンテーションに身を包んだ企業連中の生活スタイルは、そのまま彼らの社会的ステータスを顕している。

    二つ目はいわゆる「魅せるための」サイバーウェア。このスタイルはエリート層(役員クラスの企業人、BD(ブレインダンス)スター、歌手、その他セレブリティなど)の間で広く普及しており、最新のRealSkinnにはゴールドやプラチナムがあしらわれ、何万ドルもする彼らのCyberlimb(後述)には宇宙でのみ採掘できる純正クリスタルが使われている。デザイナーインプラントとも呼ぶべきこれらカスタムメイドの(極めて高額な)Gen4は、今や彼らが有する富と地位を誇示するための装飾品と化している。

【注釈】
The World of Cyberpunk 2077はCDPRとDark Horseが共同で出版したゲーム版「サイバーパンク2077」のガイドブックで、主に世界観の導入などユニバースをわかりやすく且つ広範囲に亘って解説しており、シリーズの入門書として最適の一冊(注:原作2020の出版元であるR.Talsorianは直接関与しておらず、原作の関連書籍ではない点に注意
追記:邦訳版の発売も決定したようです(ツイート


サイバーウェア:10種のカテゴリー

原作2020で紹介されている数多くのサイバーウェア...その用途は多岐にわたり主に以下の10カテゴリーに分類される:
  1. Fashionware
    コスメ(美容/外見)系のエンハンスメント。分類しづらいサイバーウェア(例えば下のBiomonitor)もここに含まれる。以下に一例:
    • Light Tattoo - 文字通り光るタトゥー。表皮(皮膚の最表面の層)の数層を化学的に発光させている
    • Techhair - モヒカン族御用達の人工毛髪。毛幹(髪の地肌から出ている部分)が様々な化学反応をみせ、気温や天候によって髪の色が変化したり、Light Tatoosのように発光するものもある
    • Biomonitor - 皮下に埋め込まれた生体モニター。ゲーム版でも2018年に公開された48分プレイ動画で確認済み(Vは”バイオモン”と言っている)

  2. Neuralware
    身体強化を目的に、神経系とダイレクトに接続するプロセッサ。アドオン的な役割を担うコプロセッサ(チップ)やチップウェア(ドキュメント1993年参照)もここに属する。以下に一例:
    • Neural Processer - 脊椎に埋め込む”スイッチボックス”。全てのサイバーウェアはこのNerural Processorを介して各信号が神経系にとりこまれる。いわゆる汎用プロセッサであり、これに副次的なコプロセッサを追加することも可能。施術(神経系とのリンク)には通常10日ほどかかり、その後は(サイバーウェアだけでなく)Datatermをはじめとする様々な外部インターフェイス(武器や車、外部コンピューターなど)にジャックインできるようになる
    • Reflex Boosters - コプロセッサの一種。Boosterwareとも呼ばれ、人並み外れた反射神経を手に入れることができる。種類は2つ:
      • Kerenzikov - 常時アクティベートされるものを指す。つまり反射神経がずっと高ぶったままなので、周りが全てスローモーションのように感じられ、最初は適応が難しく人間性コスト(補足情報6参照)の消失も激しい。なおゲーム版にも似たような名称のケレツニコフ(Kereznikov:微妙にスペルが違う)が存在するが(動画)、こちらは吸引機を使って一時的な(Kerenzikovというより下の”Sandevistan”的な)バレットタイムを生み出している
      • Speedware - こちらはKerenzikovとは違っていつアクティベートするかを任意に決められる可変式。Sandevistanとも呼ばれる

  3. Implants
    身体に特定の機能を追加するサイバーウェア。BodyBank(*詳細は下↓のタブをクリック)では替えがきかないパーツや、ある分野に特化した専用インプラントを指す。以下に一例:
    サイバーパンクの世界には1994年に成立した「ライフラインアクト (Lifeline Act of 1994)」と呼ばれる身体提供に関する法律が存在する。これは1987年に改定された統一死体提供法(1968年に作成された実在する州法”Uniform Anatomical Gift Act”:参考)を拡大したもので、ドナーカードを持つ者は州政府に登録され、死後の身体(臓器だけでなく手足/頭部/眼球なども含む)の提供に同意したとみなされる。また提供された身体はドナーセンター(BodyBank)で保管され、各部位ごとに、またそのコンディションによってドナー(の遺族)に謝礼金が支払われる。
    なおこれらの身体提供は州政府の管轄のもと合法的に行われているが、ブラックマーケットを中心に不正な取引も活発で、コンバットゾーンのリパードクなどは大抵が非合法である。
    • Gill Implant - いわゆる「Cybergills (*gills=えら)」と呼ばれる、水中呼吸を可能にするインプラント
    • Chemical Analyzer - 鼻腔を通じて大気中の化学物質や匂いを解析する。解析結果は外部ディスプレイやBiomonitorなどに反映
    • Mr. Studd/Midnight Lady™ - セックス用インプラント。Mr. Studd™が男性用、Midnight Lady™が女性用
      【 2077比較】
      *2077のコンセプトアートでも確認できるMr. Studd™(左)と、The World of Cyberpunk 2077に掲載されているMidnight Lady™の広告(右)
      mrstudd2077.png midnightlady2077.png *クリックで拡大。NSFW注意

  4. Bioware
    通常のメカニックなサイバネティクスではなく、生体組織そのものに働きかけるエンハンスメント。ナノテクノロジーによる微生物サイズの極小ロボット(ナノイド-Nanoidsと呼ばれる)を使って細胞そのものに施術を行うため、体への負担が少ない。以下に一例:
    • Grafted Muscle - 培養された人工筋肉を体内に移植したもの。「Muscle/Bone Lace」という別のバイオウェア(骨を覆ったり体内の筋繊維を編み込んで身体を強化する)と併用される
    • Nanosurgeons - 超極小の治療型ロボ。損傷した血管/組織/骨などを修復/縫合する。治療型以外にも夜間の視界を向上させる眼球専用のものや、聴力を向上させる聴覚専用のものなどもある
    • Skinweave - ナノイドを利用した皮下アーマー。皮膚の最上層3層をポリマー糸で編み込んでいくことで、軽量ボディーアーマーと同等の耐性を得ることができる。ただし施術には(慎重を要するため)約2週間ほど必要。ちなみにナノテクを使わない(Biowareではない)一般的な皮下アーマーも存在するが、こちらは(防弾チョッキの如く)胴体にしか埋め込むことができず、サイバーウェアのカテゴリーとしては「インプラント」の方に分類される

  5. Cyberweapons
    いわゆるブラックサイバーウェアと呼ばれる闇商品の代表格。Cyberlimbs(下記8)などに内臓された殺傷用武器のこと。以下に一例:
    • Vampires - サイバーウェポンのほとんどは闇市でしか手に入らない非合法なものであるが、これとScratchers(見た目は通常のネイル:暗器系インプラント)だけは通常のマーケットで購入できる。Vampiresとは犬歯インプラントのことで、一般的には武器というより”ファッション”の一部として利用されている。ただし追加機能として毒を注入できるようにすることも可能
    • Wolvers - 長刀を手の甲に仕込んだ暗器系武器
    • ChainRipp - 腕の前腕部分に三角刃を仕込んだ"BigRipp"のフレームを拡大し、刃の代わりにチェーンソーを仕込んだもの(参考↓)
      chainripp2020.png *クリックで拡大

  6. Cyberoptics
    通常の”目”の代わりに埋め込まれた(プロセッサ内蔵の)”カメラ”。暗視やズームを可能にするソロ御用達のものから、ファション目的のものまで色々ある。以下に一例:
    • Color Shift Irises - 虹彩の色やパターンを思いのままに変更する。一例として、Wyzard Technologiesが開発したColor Shiftの一種「Verbal-Eyes™」シリーズは感情を瞳に投影するサイバーウェア。例えば怒っている時は虹彩が燃え盛り、その火消しにあたる消防隊の映像が瞳に浮かび上がる(参考↓)
      verbaleyes.png *クリックで拡大
    • Image Enhancer - より詳細な視覚情報を得るために、視界にいれた映像を高解像度グラフィックに拡張するサイバーウェア

  7. Cyberaudio
    聴神経に埋め込まれたデバイス。外耳ではなく内部を施術するため、Cyberopticsとは違って見た目の変化はない(ただし外付けのスピーカーを外耳部分に後から装着しようとする者はいる)。以下に一例:
    • Radio Link - 頭蓋底(頭蓋骨の中心部)に埋め込まれた超小型の無線機。歯を(舌で)軽くクリックすることでアクティベートされ、微かなヒソヒソ声でも相手と通信することができる
    • Amplified Hearing - 微小な音量も認識できるよう聴覚を強化するサイバーウェア

  8. Cyberlimbs
    クロム化などの装飾や、更なるサイバーテクノロジーを埋め込むために施された(100%人工物の)手足のこと。
    【注意点】サイバーパンクの世界ではBodyBank(上述3.インプラントの項を参照)が普及していることもあり、四肢の代替に必ずしもサイバーウェアは必要ない。Cyberlimbsが重宝されるのは、デザイナーインプラント的なファッション要素を含んでいるためであり、時速300キロで走ったり鋼鉄を素手で捻じ曲げるような芸当をするためのものではない点に注意(肩や背中の筋肉はCyberlimbsをサポートするために残ったままなので、過度の運動をすればそれらの(自前の)筋肉がついていけなくなる)。そのためCyberlimsを施した時の(ファッション以外での)利点というのは次のようなものがあげられる:
    ・疲れない
    ・痛くない
    ・自前の手足よりはダメージを与えられる
    ・高くジャンプできる(通常6〜8メートル程度)
    またCyberlimbsには数々のオプションが用意されており、RealSkinn(下記参照)をはじめとするカスタム素材や、ビルトイン形式の上述Cyberweaponsを追加することができるのも利点の一つ(BodyBankではこうしたオプションを追加することはできない)。以下に一例:
    • Reinforced Joints - Cyberlimbsが有するオプションの一つで、通常はステンレス製の関節部分をチタン製に置き換える
    • Coverings - こちらもオプションの一つ。Cyberlimbsを覆う素材(通常はむき出し)を自分の好みに変更する。安物のプラスチック製からクロム製までバリエーションは豊富
      • Realskinn™ - Coveringsオプションで最も高価なものがこれ。軟質プラスチックを素材にした人工皮膚のことで、本物と見紛うばかりに毛穴や体毛、僅かな傷といったものまで再現してある。ちなみにゲーム版2077でもRealSkinnテクノロジーは健在(参考
    • Tool Hand - 4指に各種アタッチメント(スクリュードライバー、レンチ、ドリルなど)をとりつけた万能ツール。一例として、Dynalar社が販売しているCyberfingers「DIGITS」シリーズには、ライトやライターといった日常品以外にも、ロックピックやダートガン、小型カメラを備えたDIGIT(指)型の小型爆弾、ドラッグ吸入のためのエアハイポなど、さまざまな用途のオプションが用意されている(参考↓)
      dynalar_digits_cyberfingers.png *クリックで拡大:Dynalar TechnologiesのCyberfingers「DIGITS」シリーズの一例

  9. Linear Frames
    キャラクターに強靭さをもたらす外骨格。通常はメタル製の骨格と人工筋肉で構成される。見た目は(金属製の)ボディアーマースーツに似ているが、Liner Frameは体と直に接合するため、神経系とダイレクトリンクが可能。
    • Linear Σ/β/Ω - リニアフレームはキャラクターにかかる負荷を軽減することを目的に(負荷の何割をフレームが代替するか計測できるよう)設計されている。例えば自分で持ち上げられるような軽いものであればリニアフレームの恩恵は得られない。逆に50kgのものなら2割程度をフレームが負担し、さらに200kg以上のものになると負荷の8割をリニアフレームが代替する…といった仕組みになっている。キャラクターの負荷をどれだけ軽減できるかは3つのレベル(シグマ/ベータ/オメガ)次第で、(上位クラスの)オメガではおよそ800kgほどのものを持ち上げることができる(負荷の9割をフレームが負担する)。

      なおリニアフレームは他のサイバネティクスとの併用パッケージとして(神経系とダイレクトにリンクして)通常利用されるが、車やバイクと同じ感覚で(ダイレクトリンクなしに)直に乗り込んで操縦するタイプのものも存在する。他にも「WADs (Working Assistant Droids)」と呼ばれるリモート操作(専用の遠隔システムが必要)が可能なものもあり、これらは建設現場などでよく用いられる

  10. Body Plating
    肉体の表面を覆うためのプラスチック/メタル製プレート。専用オプションを追加することができるほか、3層構造の特殊プラスチックによって通気性や耐久性に優れているため、ボディーアーマーとしての用途でも使用可能。ただし元来のBody Platingというのは、プレイヤーに強さや素早さの恩恵をもたらすものではなく『Metal is better than Meat』の哲学を地で行く、いわゆる”サイボーグ”志向の強い〜よりロボっぽい見た目を追求する〜連中が愛用するサイバーウェア。以下に一例:
    • Torso Armor Plate - Body Platingは各部位ごとのパーツに分けることができる。Torso Plateは文字通り体の胴体部分に取り付けるもので、胸部/腹部/背部など胴全体をフォローし、腰回りや股関節なども専用のジョイントで不自由なく動かせる
    • Front Optic Mount - オプションで追加する専用マウントの一つで、顔の上部に最大5つのCyberoptics(上記6)を取り付ける


注:ここからは【おまけ】(どちらもサイバーウェアには該当しません


サイバーペット

サイバーパンクユニバースでは(自然災害などの影響で)野生動物が著しく減少しており、これらをペットとして飼おうとすると相当の金額を要するが、その一方でクローン研究は一つの到達点を迎えているため(ドキュメント2004〜2020年参照)、これらのクローン技術とサイバーテクノロジーを駆使した独自の「サイバーペット」というものが一般化している。動物用のサイバーウェア(注:上で紹介した10のカテゴリーと同種のもので、それが単に”動物用”というだけ)をはじめとして原作では色々紹介されているが、ここでは以下の3つを簡単に紹介:
  • Digital Watchdog - シンプルな擬似ペット。Neural Processorを埋め込むこともでき、家族の一員というだけでなく番犬としても優秀
  • Cyberpred - こちらはガチで危険なサイバーアニマル。-predというのはpredetorのことで、番犬というよりセキュリティ対策や賊を攻撃する時に真価を発揮するタイプ
  • Animal Eyes - セキュリティ対策に用いられるペット専用の重改造パッケージ。これがあれば自慢のペットもたちまち移動偵察部隊へと早変わり
    digitalwatchdog.png cyberpred.png animaleyes.png *クリックで拡大

ACPA
「Assisted Combat Personnel Armor」- 通称”ACPA”は、上で紹介したサイバーウェア「Linear Frame」が開発されたことによって実現したサイバーパンクユニバースが有するテクノロジーの一つ。ノーマッド・ネーション「MetaCorp」によって世界で最初に実用化され(ドキュメント2017年参照)、その後このJackSuitがミリテクに売却されたことによって世界中に普及していくことになった。原作ではACPAのデザインシークエンスや各種システムと併せて具体的なACPAのモデルが数多く紹介されている...ここではその一部を紹介:
militechcommando.png arasakastandardb.png *クリックで拡大
【 2077比較】
直近のスクリーンショットで確認できるACPAと思わしき物体:
 
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補足情報6:サイバーサイコシスとブレインダンス

開発初期の頃からサイバーパンク2077のキーポイントの一つとして挙げられていた「ブレインダンス」(参考
もともとは犯罪者の更生手段の一つとして開発されたブレインダンスが、なぜ現在(2020年)大衆娯楽として広く社会に普及するようになったのか、また2000年以降社会問題となっているサイバーサイコシスの診療でこの媒体がどのように用いられているのか。
ここではサイバーサイコシスとブレインダンスを関連付けながら両者の概要をまとめました(注:あくまで2020時の設定です)。


*主な参考資料:Cyberpunk2020 RulebookRockerboy
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■ サイバーサイコシスとは

サイバーパンクユニバースにおいて、サイバーウェアはファッションの一部になるほど社会全体に広く浸透しており、原作では数々のサイバーウェアが紹介されている。ただし、これら全てのサイバーウェアにはHumanity Cost(以下HC)という数値が個々に設定されており、サイバーウェアを好きなだけ埋め込むことができない。以下日本語ウィキペディアより引用:
人間性コスト

サイバーウェアにはそれぞれ人間性コストが設定されている。 埋め込んだサイバーウェアの人間性コストが10点累積するたびに、能力値のEMP(感応)が1点失われる。 EMP(感応)が3点まで落ちると、感情に乏しい人間になる。 EMP(感応)が0点まで落ちると、サイバーサイコ(殺人狂)となってしまう。

サイバーサイコシスとは、サイバーウェアを施すことによってHCが蓄積し、徐々に人間性が失われていく精神疾患のことをいう
初期症状では単に人間がロボット味を帯びている程度に過ぎないのだが、症状が進行していくと周囲の人間に対して関心を示さなくなり、食欲や睡眠欲といった人間の基本欲にも無関心になっていく。そして症状が頂点にまで達すると、人間の社会生活全てが煩わしくなり、鬱積された苛立ちが爆発して周囲に危害を加えるまでに至る。

EMP(Empathy:感応)の初期値は各キャラクターごとに異なるが、いずれにせよEMPが3点をきってくると危険信号で、その後は以下のような「破滅へのカウントダウン」が待っている:
  • EMP残り3点:この時点ではまだ「冷淡な人」ぐらいには周囲から見てもらえる
  • EMP残り2点:冷酷で近寄りがたく他者から見れば不快な存在であることに疑いの余地はなくなってしまう
  • EMP残り1点:ここまで来るともう通常の社会生活は難しい。殺人や騒乱を犯さないよう常に自己との葛藤が続く
  • EMP残り0点:晴れてサイバーサイコの仲間入り。TRPGではキャラクターがこれになってしまうと、その後どうするかはレフェリー(GM)の判断に委ねられる

参考:ゲーム版2077の48分ゲームプレイ動画でも確認できる人間性コストの概念

なお一言でサイバーサイコといっても、全員が一様に凶暴化したサイコパスになるというわけではなく、症状としては殺人狂以外にも虚言癖/盗癖/加虐症/多重人格など結構多様性がある。


サイバーサイコシスの診療方法とサイバーサイコ対策

サイバーパンクユニバースではサイバーサイコシスが2000年以降社会問題になっており、この診療方法やサイバーサイコ対策にも独自の設定がある。

まずサイバーサイコ対策としては警察機関が有する独自の部署としてサイコスカッドが存在する。補足情報1で紹介したMaxTacがその代表例で、詳細はそちらを参照のこと。
また1999年に制定されたUCJC(統一市民法典)では、犯罪者を逮捕するタイミングは彼らが罪を犯した後のみに限られる(事前に逮捕はできない)とあるのだが、実際には犯罪抑止のための活動は各地(特に企業警察)で実践されている。サイコスカッドでは誰がどこで何を買ったかをくまなく監視しており、近い将来犯罪の可能性がある危険分子を選別し、必要であれば(監視対象がサイバーサイコに近づきつつあれば)「今の活動を続ければその内不慮のアクシデントに見舞われるかもしれない」と彼らを暗に脅しつつ、「それが嫌なら登録しろ」と言葉巧みにそそのかしながらサイバーサイコ予備軍の登録化を行っている。
登録されたこれらの人々は、サイコシュリンク(サイバーサイコシス精神分析官)への定期的な面会が義務付けられ(ちなみにTRPGの設定では、この診察(下記参照)を受けることによって失われたHCが一週間に2ポイントずつ回復する)、居場所を常に把握できるようサイバーウェアにトランスミッターまで仕込まされるため、(罪をまだ犯していなくとも)仮釈放中のような扱いを受けることとなる。もちろんサイコスカッドがいう「いつ来るかわからない不慮のアクシデント」を気にしないなら、自ら登録する必要はない(強制的に登録が義務づけられているわけではない)。

2013年のティーザートレイラーから:サイバーサイコのお姉さん(左)とMacTacのエージェント

一方、サイバーサイコシス診療では一般的に後述のブレインダンス(以下BD)が用いられる。この背景にあるのが当時の社会情勢で、90年代以降各地で反乱が起こり犯罪者が急増、2000年を迎える頃には全米中の刑務所が飽和状態に達していた。当時の刑務所はもはや(通常の)更生施設としての目的を一切持たず、街を浄化するためにひたすら囚人を閉じ込めるだけの監獄と化しており、このような社会情勢に伴って(2007年に)BDが開発されたことによって、囚人をクライオタンクに無理矢理閉じ込め、無限ループのBDを2-3年の期間に亘って体験させ、囚人を恐怖におののかせて更生させる診療法が一般化した。
なおサイコシュリンクが行うサイバーサイコシス診療の実際の現場では、上述のBDに加えて投薬や催眠療法なども併用しながら犯罪者の性格矯正を図っている。


■ ブレインダンスについて

今日ではブレインダンス(以下BD)の名称で知られる「Alternative Reality Process」は、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の卒業生「Yuriko Sujimoto」の手によって2007年に発明された。もともとは嫌悪療法(好ましくない行動や思考を抑止するために、不快な刺激やイメージを条件反応的に形成する方法)に用いる犯罪者の更生手段の一つとして開発されたが、その後は軍用のシミュレーターに応用され、さらに今日では大衆娯楽として広く社会に浸透している。

BDはネットランナーが神経を介して直にサイバー空間を擬似体験するのと感覚的には近いものがある。ただし両者の違いは、ネットランナーが脳に直接関与しながら能動的にサイバー空間を体験しているのに対して、BDはあくまで他者の記憶や感覚を追体験する媒体であり、基本的に現実では体験できない「非日常」を提供するのがBDだといえる。

医療機器から大衆娯楽へ

2005年頃から大手メディアDMS(ドキュメント2018年参照)は映画/音楽業界に力を入れ始めていた。その後2009年になってBDの可能性をエンターテイメント業界に見出した彼らは、ミリテクとBraindance Inc.(BDを商品化した最初の企業)が共同で立ち上げたベンチャー事業に参加。LAの自社工場でBDチップを製造し、北米の流通網を使って世界で初めてBDを市場に提供するや、この媒体は瞬く間に業界に旋風を巻き起こし、一大エンターテイメント産業への第一歩を踏み出すことになった。
当時のSujimotoはネットランナーのインターフェイスを使って、推測を交えながら神経反応を書き換える研究を進めていた。その過程で自身の思考や感情、身体的感覚が一般的な情報チップに記録されていることに気づき、記録したチップをサイバーモデム(ドキュメント2005年参照)に接続すれば、過去の自分の体験をそのまま追体験できることを発見した。

それとは平行して、博士号を取得後にカリフォルニアの刑法改正に関わる研究所に勤務していた当時のSujimotoの周辺では、囚人矯正に関する議論が活発だった。というのも犯罪者の増加に歯止めがきかない社会情勢に伴って「罪を犯した者はその時点で自らの人権を放棄したのだから、彼らの贖罪に余計な配慮は必要ない」という考えが社会全体に蔓延し、2002年12月には最高裁で「反社会的」な罪を犯した者に対する新たな犯罪者更生法が満場一致で可決されていた。

こうした中で、原始的で効果に乏しかった当時の犯罪者矯正を一変させたのが、Sujimotoによる画期的な発明品「Alternative Reality Process」である。精神科医によるBD療法のもと犯罪者の更生が次々に成功し、飽和状態だった刑務所から続々と囚人が出所したことで、BDは州政府からのお墨付きまでもらえるほどの存在になると、その後もBD効果をより一層高めるべく改良は進められ、BDを軍事シミュレーターとして応用できないかと考えていた巨大企業ミリテクまでがこの事業に投資するようになった。またミリテクによる巨大資本が流入したことによって、破格の契約金と引き換えに(遺族のために契約金を残すために)、死刑判決を受けた囚人の中には自分の死の瞬間のBD撮影に同意する者まで出てくるほどだった。

その後カリフォルニアのサン・クエンティン囚人矯正施設でも十分な効果を上げたことによって、ミリテクだけでなく州政府からの資金援助も確保したSujimotoは、2009年に研究所の同僚だったNorman Lassimerと共に「Braindance Inc.」という企業を立ち上げた。こうしてBraindance Inc.とミリテク、そして上述のDMSが加わって、商業用のBDがその後エンターテイメントとして普及していくことになった(この他にもBDはミリテクの軍用シミュレーターとして兵士のトレーニングにも利用されている)。

ブレインダンスの仕組み

BDを体験したい場合の一般的な方法は以下の3つ:
  • BD専用アーケード:いわゆる(ゲームセンター的な)商業施設のプライベートブースでBDを体験
  • バー/クラブ:夜の街にはBlack Boxと呼ばれるBD機器が併設されている施設も多い。これを利用する
  • Black Boxの買取:もしくはBD機器そのものを購入する(価格は約2,000ebと高額)。別途必要になるBDチップはアーケードでレンタルするか配信サービスへ登録
なおBDチップというのはプレインダンサー(記録対象者のこと)の体験を記録したメモリーチップのこと。要はブレインダンサーの体験をBDチップに記録することによって第三者がこれを追体験するのがBD。

2020年6月25日の「Night City Wire」で公開されたゲーム版2077のBD映像

基本的にBDチップの制作には、そこに筋書きがあるかないかの2通りに大別される。BDは映画などと違い、ブレインダンサーの思考や感情、身体的感覚までもが体験できるため、筋書きのないBDの方が当然需要は高い(上の動画で例えるなら、最初は強盗に入るという筋書き通りだったが、最後は思いかけず殺されてしまったので、このBDにはかなりの値段がつくと思われる)。死の瞬間を体験できるような違法BDすら存在するほどで、ブレインダンサーはメディアスターや死刑囚(上述の沿革詳細を参照)など、とにかく非日常を体験させてくれる人が好ましい。ただし筋書きのあるBDであっても、例えばDMSなどは専用のBDスタジオを擁し、多くの作家や俳優を起用して独自のマーケティングに基づいた様々なBD体験を提供している。

以上のように、現在のBDは一大メディア産業として広く社会に浸透している一方で、無視できない弊害もある。上述の違法BDだけでなく、違法BDを撮影するべく個人が犯罪に手を染める(BDはその気になれば個人でも撮影できる)ケースも増加。またREDの時代(2045年頃)になるとBD中毒という新たな社会問題も浮上しており、これは2077になっても解消されていない(参考)。


 
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補足情報7:企業戦争~Firestorm三部作について

おさらい〜
サイバーパンクの世界では企業戦争(Corporate War)と呼ばれる大規模な企業間闘争が合計4回起こりました。

  • 第1次 (2004-2006):TransWorld Airの買収をめぐってEBMとOrbital Airを中心に行われた企業間闘争
  • 第2次 (2008-2010):石油採掘権をめぐるPetrochemとSovOilの対立が中心。甚大な環境被害を及ぼした
  • 第3次 (2016):Netを主戦場にした企業間闘争で、Merrill, Asukaga & Finchを中心に展開
  • 第4次:以下参照
原作サイバーパンクには、第二版2020から第三版のV3.0に至るまでの時間軸を舞台にした「Firestorm」シリーズというものがあります。これは2020までに構築された世界観をベースにした、いわば2020のメインストーリーともいえる作品で、通常のコアブックやソースブックとは違いアドベンチャーブック(WIkia)という体裁をとっています。

2022年に勃発した第4次企業戦争を背景とするトリロジー「Firestrom」は以下の3作で構成:
残念ながら3つ目の「Aftershock」は出版がキャンセルされ、現在も発売には至っていません。そのためこのトリロジーは多くの謎を残しながら、未完のまま今でもファンの気持ちをやきもきさせているのが現状です。
*ちなみにFirestormの断片を含みつつ2030年代以降を描いたのが第三版のV3.0で、これは一般にはCanonとは認められていない(後述)

CDPR曰く「2077は(V3ではなく)2020をベースにしている」と公表してはいますが、Firestormシリーズがどれほど2077に関わってくるかは不明です。ただ主要キャラクターが数多く登場する第4次企業戦争のことを知っておくのは無駄ではないと思い、このスレッドに概要をまとめました。Firestormについてはredditの有志が下記スレッドにてとてもわかりやすくまとめてくれていますので、それを中心に翻訳しています。

*翻訳ソース:reddit
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◽️2021年終盤、2つの水産系企業「OTEC」と「CINO」の間で財政的ないざこざが起こる。もともと互いにライバル同士であった両社は、その後IHAG社の倒産に伴う競争入札で更にもめ状況はますますエスカレート。こうしてOTECがミリテク、CINOがアラサカを後ろ盾に「Ocean War」が開始されることになった。
OTEC (Ocean Technology & Energy Corp)はアメリカ企業、CINO (Corporation Internationale Natuicale Et Oceanique)はフランス企業、IHAG(Internationale Handelsmarine Aktiengesellschaft)はドイツ企業で、船舶およびそれに関するテクノロジーを扱う会社。ちなみにAktiengesellschaftはドイツ語で「株式会社」の意

プレイヤーはこのOcean Warでどちらのサイドにつくかを選択する。両社ともにIHAG社の株を獲得するという目的があるが、互いの力関係(ミリテク vs. アラサカ)は拮抗しているため、自分が優位につくにはライバル企業のリソースを減退させなくてはいけない。
Ocean Warの主な出来事は以下:

  • 株式保有にネットランナーが奔走する所から戦闘はスタート
  • NetWatch(ドキュメント2013年参照)がアラサカとミリテクに「Net活動12時間禁止」の制限をかける
  • Morgan Blackhandがミリテクと契約、OTECの警護ディレクターに
  • ユーロバンクが(稼ぎ時と見て)両サイドにローン契約を持ちかけるものの、両社共にこれを拒否したため、ユーロバンクもOcean Warに参戦することになった。ユーロバンクは両サイドに圧力をかけ局面の打開を図ろうとしたが、拮抗する戦力図は変わらず
  • 最終的にユーロバンクが調停役に入り、両社の対立は一旦収束。パリで調停が開かれた
このように最初はOTECとCINO間のいざこざに過ぎなかった反目が、徐々にサイバーパンクの二大企業ミリテクとアラサカの対立へと様相が変化していく。そのためユーロバンクが介入する頃にはIHAG社の問題には折り合いがついていたのだが、この抗争はこの先さらに深刻化していくことになった。


◽️軍事産業の二台巨頭であるミリテクとアラサカの対立は、2022年初頭の時点ですでに本格的なものになっていた。以降の抗争は「Shadow War」と呼ばれ、両社が画策する秘密工作を成功させるべく世界中からエッジランナーが雇われた。
Shadow Warの主な出来事は以下:

  • アラサカによるSoulkiller 2.5の研究が進み、ミリテクの設備やプロジェクトに関する情報の引き出しが可能に
    *SoulKillerについては、
    補足情報3のAlt Cunninghamの項参照
  • 自己防衛に余念がないミリテクは、世界最高のネットランナーとして名高い「Rache Bartmoss」に助けを求めるが、彼はこの申し出を拒否
  • 「アラサカに打撃を与えられるなら、Soulkiller破壊に手を貸してもよい」として、Alt(Cunningham)がミリテクと契約(当時のAltはネットゴースト)。彼女はさらにRacheの説得にも成功
  • Bartmossがアラサカのキラー衛星「Killsats」の掌握に成功し、これを使ってアラサカの宇宙関連施設を破壊
  • アラサカがRache Bartmossと交わしていた巨額契約を破棄
  • BartmossがSoulkillerのマスタープログラムの所在地を突き止める
  • Barmossが殺害
▶︎ここまでがStormFront(Ocean War + Shadow War=Cold War)


▶︎ここからShockwave(Hot War)
◽️アラサカとミリテクが互いに秘密工作の限りを尽くして行われたこれらの情報合戦であったが、残念ながら決着をみることはなかったため、徐々に(情報合戦ではなくガチで潰し合う)両者真っ向勝負の気配が漂い始めていた。こうした中、2022年の6月に始まったのが「Hot War」で、両社の争いはストリートや都市部(香港やリオデジャネイロなど)にまで広がっていった。
Hot Warの主な出来事は以下:

  • Netに大規模な欠陥が見つかり、ITの連中は情報のバックアップに励み出す
  • Rache BarmossがNetで復活。アラサカとミリテクのDatefortress(補足情報4参照)を攻撃
  • Netへの不正干渉が散見し始める。誤情報によって正確に目標を攻撃できなくなったため、両社ともにNetへのデータ送信を停止する動きに
  • KIllSatの誤動作でクリスタル・パレス(2011年に完成した宇宙ステーション)が破壊寸前に
  • スペースコロニー「O’neill Two (ドキュメント2017年参照)」が独立を宣言。彼らは独立を維持すべく武装していたのだが、どこからそれが支給されているのかは謎のまま
  • SoCal(南カリフォルニア)がLAにあるミリテクとアラサカの保有地を国有化すると発表。日本政府とテキサスもこれに追従した
  • ミリテクが米国政府と提携
  • アラサカ敗戦。ナイトシティに取り残された多くのアラサカ兵をミリテクと米国兵が包囲
  • ナイトシティに戒厳令がしかれたが、この間ナイトシティを仕切っていたのはアラサカ兵だった

◽️最終ミッション:
この最終ミッションでは、主要キャラクターで構成されるストライクチーム・アルファ(NPC)とベータ(プレイヤー)に別れて戦う。
アルファチームの目標は、アラサカタワーに潜入し120階にあるSoulkiller3.0を破壊する。さらに拘束されている(2020の時点でデジタルゴーストと化していた)Alt Cunninghamを救出しSoulkillerのラボを爆破する、以上の二つ。
アルファチームの構成員は以下:

  • Rogue
  • Shaitan
  • Spider Murphy
  • Thompson
  • Johnny Silverhand
一方プレイヤーが属するベータチームの目標は敵の陽動がメイン。地下にあるSoulkillerのデータベースに侵入し、このバックアップをとった後に小型核兵器(そのぐらい硬い装甲で守られている)で破壊する。

~というのは表向きで、実際に陽動作戦を行なっているのはアルファチームの方だった。このミッションの本当の目的はベータチームが目標とするデータベースの方で、政府を打倒し当時の世界を覆す(政府と企業の関係を左右するような)貴重な情報が入っていた。加えて当時のデータベースはオフラインで維持されていたため、Netで起こっていた干渉の影響を受けておらず、質の高い情報として極めて重要な存在だったのである。

以上の背景のもと、プレイヤーはデータベースへのアクセスを目指して作戦を進行していくのだが、その道中でSoulkillerによってコピーされたYorinobu Arasakaのエングラムを発見し、ここでプレイヤーは選択をせまられることになる。手持ちのデバイスにコピーできるのは一つだけ:SoulkillerのデータベースかYorinobuのエングラムか。放蕩息子のYorinobuは「Steel Dragons」というバイカーギャングを結成して打倒アラサカを掲げた過去をもつ。彼のエングラムをコピーすることは非常に有益かと思われるが、そうなるとデータベースをコピーすることはできなくなる…。
*Yorinobu Arasaka (Wikia)はSaburo Arasakaの末男。反アラサカ志向なため当時Alt同様Soulkillerに取り込まれていた。彼の長兄がKei Arasaka (Wikia)

一方アラサカタワーの120階に到着したアルファチームの方も苦境に陥っていた。
敵の潜入に気づいたKei ArasakaがSoulkillerのバックアップを別の場所に移動しようとした際、これに反応したMorgan Blackhandが対空攻撃の命令を下したのだが、これによってKeiのデータ送信は失敗したものの、ミリテク側の目標がSoulkillerだと判明してしまい、アラサカタワーへの増援をKeiに要請させる結果に繋がってしまったのである。


それでもアルファチームは何とか任務を続け、Spider Murphyが手持ちのストレージにAltを確保したものの、その先にはAdam Smasherと無数のアラサカ兵が待ち受けていた。この状況に困窮したSpiderはやむなくAltをNetにアップロード。Johnny SilverhandがAdam Smasherの銃撃に釘付けとなる一方で、ShaitanはRogue/Spider/Thompsonを逃がそうとAdamへ襲いかかる。Thompsonは重症を負い、なおもAdamは追跡を続けようとするが、そこに一人の男が現れる。世界最高の傭兵と名高い、ソロ中のソロ「Morgan Blackhand」である。
最大のライバル(といってもAdam側が一方的にMorganをライバル視しているだけ)と対峙した両者は、銃弾と爆撃の中で戦いを繰り広げた。しかしその最中、核兵器が爆発しタワーが崩壊。AdamとMorganはそのまま転落してしまう。二人とも死亡したと推測されるが、真相はわかっていない。


アラサカタワーが崩壊し、デパートやナイトクラブ、10番街センターなど周辺の施設もことごとく破壊された。ナイトシティの証券取引所やミリテクの旧工場、ウェストプラザタワーなども全て瓦礫と化し、その破片は米国連邦政府の建物や日本領事館にもおよんだ。またMicrotechやWNSのタワーも激しく損傷した。
Adamによって重症を負ったものの、Shaitan/Thompson/Rogue/Sipiderの4人は瓦礫から脱出することに成功。Kei Arasakaも無事だったが、後に彼はSpider/Shaita/Rogueによって捕獲され切腹させられることに。彼のエングラムはRache Barmossがセットアップした監獄へと送られ、またSpiderによってSoulkillerの最後のコピーも破壊された。




◽️以上がFirestorm II: Shockwaveまでの内容で、続きは第3部へと続く(...はずだった)

「Firestorm III: Aftershock」が未発売のまま結局トリロジーは未完に終わってしまったが、残された謎について最後に見て行くことにしよう:
  • Yorinobuは保護されたのか?
  • Morgan BlackhandとAdam Smasherは転落後どうなったのか?
  • Alt(Cunningham)はまだNetに存在しているのか?
  • Netで起こった不正干渉とは何だったのか?Altへの影響は?
  • アラサカタワーのデータベース(オフライン)ではないとしたら、Soulkiller3.0の被害者(エングラム)はどこへ行ったのか?
  • Saburo Arasakaのその後は?
  • Keiのエングラムは具体的にどこに送られたのか?またその後どういう計画があったのか?
  • スペースコロニー「O’Neill Two」を武装可能にしたその供給源はどこだったのか?

これらの謎について、その一部はサイバーパンク第三版で明らかにされているものもある。しかしV3.0はその極端な設定変更のせいで、広くCanonとは認められていない。CDPRは2077が「2020をベースにしたもの」と公表している。第4次企業戦争が終わったのは2025年のこととされており、2077までの52年間に何が起こったかはまだ誰にもわからない…。楽しみにして待ちましょう!
【注釈】FIrestormまでは一般にCanonと認められているようだが(参考)、V3.0の設定はAlternate Timelineという扱いになっている

 
補足情報8:Cyberpunk RED

上でまとめたFirestormが2077にどれほど影響しているかは、このCyberpunk REDの内容次第かもしれません。
サイバーパンクTRPGの新作で、多少ならずとも2077に関係しているといわれる本作は、2019年8月を目処に発売予定。
発売前情報として英語版フォーラムにスレッドが立ってますので詳細は↓からどうぞ。
THE CYBERPUNK RED THREAD! THE DARKER FUTURE IS NIGH.


なおREDについて日本語でまとめられるかは今の所未定です。

*以下、上の動画の7:57~(What’s the status on Cyberpunk RED?)から一部抜粋

CDPRに出会う前、私はV3のようなサイドストーリー(What-If Story)ではなく、第四次企業戦争の後を描いた正統な続編を考えていました。サイバーパンクはそもそも第一版の2013、第二版の2020といったように、時間の経過を伴って展開されていきたシリーズですからね。
私たちはプロジェクトを進める上で、いつも全体を象徴するようなイメージ色を設けています。例えばV3の時は「緑」という具合に(
参考)。それで今回の新作は「赤」でいこうということになり、新作のコードネームが「RED」になったのです。その後半年ぐらいしてから、CDPRという会社が話をしたいと私の所にやってきてね…ですから「Cyberpunk RED」というネーミングは完全な偶然なんですよ
 
補足情報9:国別企業一覧 Part1

ここでは原作2020でその存在が確認できる各企業を国別ごとにピックアップしています。

【INDEX】
  • アメリカ ← Here!
    • USA(70)/ その他(6)
  • ユーロシアター ← Part 2 へ
    • UK(10)/ フランス(5)/ ドイツ(11)/ イタリア(5)/ EEC(8)/ その他(5)
  • アジアとその他 ← Part 3 へ
    • 日本(29)/ 中国/韓国/台湾(5)/ ロシア(8)/ その他(4)/ 宇宙(3)

【一覧のみかた】
  • マゼンタ色:いわゆる「超巨大企業 (Megacorporation)」です。今の所これに該当する企業として、こちらを参考に21企業をピックアップしました
  • オレンジ色:上の21企業ほど(の規模)ではないにしろ、その他の注目に値する企業(注:独断と偏見で選んでいます)
  • 星印():過去のプレイ動画やトレイラーから推察して、ゲーム版2077におそらく登場するであろう企業、もしくはゲーム版にすでに登場が確認されている企業(真偽のほどはゲーム発売後に改めて…)
  • 企業名に下線:原作にその企業ロゴが掲載されているもの。ロゴもある程度まとめて一覧にしてピックアップしています(注:あくまで2020時の企業ロゴです)
    • 【注意】一応参考程度にWikiaのリンクも各企業ごとに掲載していますが、Wikiaのページにある企業ロゴは現実世界と混同されているものが一部あります。例えばJABという日本の宇宙機関(架空)の企業ロゴはJAXA(実在)のものになっており、これは間違いです(原作でJAXAのロゴがJABのロゴとして紹介されていることはありません)。ご注意を
      *本スレッドでは実際に原作で確認できるロゴのみを掲載しています
  • ピックアップした企業の中に「Worldwide/Troops/Covert」の三項目が確認できるものがありますが、これはそれぞれ(左から)「全従業員数/企業私設軍数/企業諜報員数」を示します(この数字も2020時のものですのでご注意を)
  • 最後に...ここでとりあげた企業が全てではありません(細かく見ていけばこの倍ぐらいありますが、とりあえず目ぼしい所は集めました)

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■ アメリカ

・USA
  1. Adrek Robotics (wikia):Robotics, Cybernetics
    • 2077のデモにも登場したFlathead(蜘蛛型ロボ)のようなサイバーフォームを開発している会社。彼らの初期プロダクトであるAタイプ(蜘蛛型)とBタイプ(ムカデ型)は、24時間体制の監視ロボとして優れた効果を発揮し、当時のアラサカがRDAKという擬似モデルを開発したほど。しかし後にアラサカはAdrekの特許と著作権を侵害したとの判決を受け賠償金を支払うハメになったため、現在(2020)両社の関係はよろしくない
  2. Affirmative Action(NY):Multi-role security service
  3. America Express-World:Bank
  4. Baskin Undercover Inc.:Detectives
    • 富裕層向けサービスを展開する「Gateway Securities」の子会社の一つ。Baskinは反スパイ活動などを目的とした情報収集を専門とする調査会社で、私的な調査が6大陸(+宇宙)で公認されているほど信用が高く、非合法な調査は一切行わない(費用も一時間200Ebと割高)。なお親会社のGatewayは他に「Clean Sweep」というデータ保護を目的とした子会社や、EMPシールドをはじめとする対監視システム「Databox™」の販売も手がけている
  5. Bell-Boeing:Aviation, Helicopters, AVs
  6. BioGenesis(シカゴ):Biogenetic technology
    • 2012年のシカゴBIoplagueがきっかけで(その1年後に)設立された会社
  7. Bodyweight Life Preservation Systems:Medical electronics, Cybernetics
  8. BudgetArms (wikia):Weaponry
  9. C-Team:Corporate mercenaries
    • 傭兵派遣会社。通常6人1組のサイバー傭兵が派遣される。”Meatboys are fine…If you want survivability, choose the Metal”
  10. Chrome Cross (wikia):High-tech gear
    • ゲーム版2077に登場する可能性あり(参考
  11. CityMed(マイアミ)
    • 主にボランティアで構成されている非営利な救急医療系企業。トラウマチームが(世間体を鑑みて)隊員を派遣することもある
  12. Colt-Mauser:Weaponry
  13. ConAg (Consolidated Agriculture)(カンザスシティ) (wikia):Agri-food industry
    • ConAgのプロジェクトには過去にSnake Nation(ワールドロア2参照)も参加したことがある
  14. Constitution Arms (wikia):Weaponry
    • ゲーム版2077にも登場する模様(ソース:The World of Cyberpunk 2077
      *ただし2077では「Constitutional Arms」と名称が若干変更されている。Wikiaによるとこれは権利問題で名称の変更を余儀なくされたとのこと
  15. Cybermatrix Inc. (wikia):Cybernetics、Electronic
  16. Cybernetic Intervention Service:Capture of cyberpsychos
  17. Cytech:Cybernetics
  18. DataEdge:Electronic chips
  19. DATA Inc. (wikia):Programs, Information broker
    • 2018年E3トレーラーでは企業ロゴが確認できる(参考
  20. Decker, Tanaka & Rogers (wikia):Shipping
  21. Digital Products International:Electronic, Audio
  22. DMS (Diverse Media Systems)(LA) (wikia):Medias
    • ドキュメント2018年参照
  23. Dynalar Technology(ダラス) (wikia):Cybernetics, ACPA
  24. Executive Transportation Service:Vehicle leasing

    *企業ロゴ:1, 2, 4, 6, 7, 9, 11, 13, 15, 16, 22, 23, 24

  25. Federated Arms (wikia):Weaponry
    • Alt Cunninghamが装備している武器は「Federated Arms X-22 pistol」
  26. Ford-Mazda (wikia):Cars
  27. GMI:Military vehicles
  28. General Dynamics:Aviation, AVs
  29. Gibson Battlegear:Body armors
    • Morgan Blackhandが「いい仕事にありつくには自分をよく見せなきゃいけないし、知り合いのソロはいつもギブソンを愛用してる」と発言するほど戦闘用アーマーでは有名なブランド。ステルスクロークや赤外線マスクなども販売しているが、最も有名なのが看板商品である「Battlegear」シリーズ。防護服であるにも関わらず、通常の服装と見間違うほど仕立てもよくスタイリッシュなことで知られる
  30. Harley Davidson:Motorcycles
  31. Hughes:Weaponry
  32. ICON America:Clothes, Fashion
    • 「Style Over Substance」なサイバーパンクの世界では服飾メーカーも数多く存在し、また各ブランドごとにスタイルと品質にも違いがある。ICON AmericaのスタイルはUrban FlashとEdgerunner(スタイルの違いについてはこちらを参照)、品質は中の上といったあたり
  33. InfoComp(LA) (wikia):Investigations, Corporate information
    • Collapseが米国を直撃していた時期(ワールドロア1参照)に、当時Gang of Four殲滅活動の一貫としてワシントン周辺のシンクタンク系企業の人員整理が行われ、その解雇処分にあった一人「Robert D. Alvarez」がLAで立ち上げた会社。創業当時は小規模経営だったが、質の高い情報源として瞬く間に業界内で評判を高め、現在(2020)のInfoCompは21世紀最高の情報トレーダーとしての地位を不動のものにしている
  34. International Companion Network:Rental of temporary staff
  35. Lazarus Military Operations Group(バージニア州ロズリン) (wikia):Mercenary operations
    • ドキュメント2010年参照
  36. Lifetime Escort Service:Bodyguards, escort
  37. Malorian Arms (wikia):Weaponry
    • ソロ中のソロ「Morgan Blackhand」御用達の武器メーカー。ゲーム版2077にも登場する模様(ソース:The World of Cyberpunk 2077
  38. Medical Technologies:Body bank, hospital care
  39. Merrill, Asukaga & Finch(NY) (wikia):Bank, Financial investments
    • MA&Fを中心に展開されたのが第三次企業戦争。詳細はドキュメント2016年参照
  40. MetaCorp (wikia):Nomad
    • ノーマッド唯一の企業。詳細はワールドロア2参照
  41. Microtech(ダラス) (wikia):Information technology, Virtual realities
  42. Militech(ワシントンD.C.) (wikia):Corporate mercenaries, Weaponry, Military vehicles
    • 2018年E3トレーラーに出てくる売店の新聞には(ミリテクの副社長である)”Antonio Luccessi(ドキュメント2000年参照)が116歳で死去した”とある(参考
  43. Mustang Arms (wikia):Weaponry
  44. NCART(Night City Area Rapid Transit)(ナイトシティ) (wikia):Public transportation
    • 補足情報1参照
  45. Network News 54(NY) (wikia):Medias
    • 2013年のティーザートレーラーはNews54のニュース画像で始まる
  46. New American Motors:Cars
  47. Nissan-Ford (wikia):Vehicles
  48. Nova Arms (wikia):Weaponry
  49. Orion (wikia):Hostage releases, Corporate extractions
  50. OTEC (Ocean Technology & Energy Corporation) (wikia):Ocean technology
    • 第4次企業戦争の引き金となった"Ocean War"は、CINOとOTECの対立が原因で勃発した。詳細は補足情報6参照
  51. Peak & Derrera(ボルティモア) (wikia):Precious materials broker
    • Precious materials=いわゆるダイヤモンドのような鉱石以外にも、稀少な化学物質や隕石など幅広く取り扱っている
  52. Peterbilt:Transport vehicles

    *企業ロゴ:27, 29, 33, 34, 35, 36, 39, 41, 42, 44, 45, 49, 50, 51

  53. Petrochem(ダラス) (wikia):Chemistry, Agriculture, Fuels
    • 石油化学エネルギーを伴うアグリビジネスを主とする企業。CHOOH2(ドキュメント1991年参照)の製造量は世界一。ライバル企業であるSovOilと第二次企業戦争を繰り広げた(ドキュメント2008年参照)
  54. Pursuit Security:Weaponry, Electronic security
  55. REO Meatwagon (wikia):Ambulance services
    • 救急医療におけるトラウマチームのライバル企業。ちなみにMeatwagonというのは警察用語で棺桶のこと
  56. Raven Microcybernetics(ナイトシティ) (wikia):Cybernetics, Electronic, Optics, Information technology
    • サイバーウェア業界最大手の一つ。RMCの名声は業界随一をほこり、競合他社(IECやミリテク)からの買収にもオービタルエアや中小企業との提携によって対抗している
  57. Red Cab(ナイトシティ):Taxi service
    • ナイトシティにあるタクシー会社の一つ。補足情報1参照
  58. Security Services Inc.:Real estate agency, Home services
  59. Storm Technologies Inc.(シカゴ) (wikia):Computer, Cybernetic devices, Weaponry, Vehicles
    • ドキュメント2019年参照
  60. Techtronica (wikia):High-tech weaponry, Robotics
  61. Telectronics:Electronic, Electronic security
  62. Toyo-Chevrolet (wikia):Cars
  63. Trauma Team International(LA) (wikia):Ambulance services
    • 顧客を救うためなら周囲の安全など歯牙にも掛けないトラウマチーム、通称"TT"。VIP待遇な分、サービス料も超高額。救護要請から病院に搬送されるまでの間だけでも一分間に100eb(ドキュメント1992年参照)もの料金がかかる
  64. Tritech:Electronic, Security
  65. United Express:Courier service, Deliveries
  66. Uniware:Clothes, Fashion
  67. West City Bank:Bank
  68. Williams Management Inc.:Real estate agency
  69. Xoma Corporation:Pharmacology
    • 各種ワクチンの研究やサイバーサイコシスなどの治験薬を開発する製薬系企業。Petrochemの子会社
  70. Zetatech(カリフォルニア州クパチーノ) (wikia):Information technology, Cybernetics

・その他
  1. All Food(メキシコ) (wikia):Agri-food industry
  2. Biotec(カナダ):Electronic chips, Nanotechnologies
  3. Brennan Cycles(メキシコ):Motorcycles
  4. Direct DataWare(メキシコ):Electronic chips, Softwares
  5. Goncz-Taurus(ブラジル):Weaponry
  6. Mexican Metals(メキシコ):Weaponry, ACPA

    *企業ロゴ USA:53, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 62, 63, 64, 65, 68, 70 / その他:1, 2, 4

 
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補足情報9:国別企業一覧 Part2

ここでは原作2020でその存在が確認できる各企業を国別ごとにピックアップしています。

【INDEX】
  • アメリカ ← Part 1 へ
    • USA(70)/ その他(6)
  • ユーロシアター ← Here!
    • UK(10)/ フランス(5)/ ドイツ(11)/ イタリア(5)/ EEC(8)/ その他(5)
  • アジアとその他 ← Part 3 へ
    • 日本(29)/ 中国/韓国/台湾(5)/ ロシア(8)/ その他(4)/ 宇宙(3)

【一覧のみかた】...については Part1を参照
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■ ユーロシアター

・UK
  1. British Aerospace:Military equipment, Aviation, Cars, Electronic
  2. BBC(British Broadcasting Corporation):Medias
    • 現実世界にも存在する世界最古の放送局「英国放送協会」通称”Beeb”。サイバーパンクの世界ではMLA(ドキュメント2001年参照)の公共放送に用いられている
  3. English Tourism Board(ロンドン):Tourism
  4. Goldstein-Floydd:Bank
  5. Hilliard Corporation(ロンドン):Financial empire, Holding company for a multiplicity of firms
  6. Hydrosubsidium (wikia):Water technology
    • Gilbear Lungと呼ばれる液体呼吸システムを開発し、その後も深海スーツなどを世に送り出して発展を遂げた会社。店舗があるナイトシティの一角「チャーターヒル」は当時Mob War(ドキュメント2009年参照)で廃墟と化していたが、この会社の進出によって周辺の産業も息を吹き返すことができた
  7. Imperial Metropolitan Agriculture(ブリストル):Agri-food industry
    • 英国でヴィクトリア2世が即位した背景にはこのIMAと上述のHilliardが関わっている(ドキュメント2012年参照)
  8. MacLaren/Jaguar:Cars, AVs
  9. Royal Enfield:Weaponry, Military vehicles
  10. World New Service(ロンドン) (wikia):News agency
    • 世界のあらゆる主要都市に支部を持つ通信社。その情報取集力は他の追随を許さず、他メディア(News54やDMSなど)にネタを提供することもある。ちなみに補足情報3で紹介しているThompsonはこのWNSのトップレポーター

・フランス
  1. Brandt-Neumann:Robotics, Household appliances
  2. CINO(Corporation Internationale Nauticale et Oceanique) (wikia):Underwater shipping, Technology services
    • 第4次企業戦争の引き金となった”Ocean War”は、CINOとOTECの対立が原因で勃発した。詳細は補足情報6参照
  3. Cyphire Cyberware (wikia):Cybernetics
  4. DataTel:Telecommunications, Electronic
  5. WorldSat Communications(パリ) (wikia):Telecommunications, Satellites

・ドイツ
  1. BMW - McDonnell Douglas:Cars, Military vehicles, AVs, Aviation
    • McDonell Douglasはかつて存在したアメリカの大手航空機製造会社(参考
  2. BioMass Laboratories Group, GmbH(ベルリン) (wikia):Electronic chips, Cybernetics, Virtual realities
    • 創業は2014年。APTRやMRAMと呼ばれるチップウェア(参考)を開発する大手企業。ちなみにGmbHはドイツ語で”有限会社”の意
  3. Daimler-Benz(シュツットガルト) (wikia):Transport, Weaponry
  4. EBM (Euro Business Machines Corporation)(ハンブルク) (wikia):Information technology, Electronic
    • 企業名もさることながら、企業ロゴ(下記)も現実世界のIBMによく似ている
  5. Heckler & Koch:Weaponry
    • H&Kは実在するドイツの銃器メーカー(参考
  6. IEC (International Electric Corporation) (wikia):General manufacturing, Space facilities, Raw materials
    • 特定の分野を専門とする通常の企業とは違い、その事業内容が多岐にわたっているのがIEC最大の特長。(アラサカやEBMのような巨大ライバル企業よりも先んじて)現在は開発拠点を宇宙に置いている
  7. IHAG(lnternationale Handelsmarine Aktiengesellschaft) (wikia):Shipping, Nautical technology
    • IHAG社の倒産に伴う競争入札でCINOとOTECが対立したことが、第4次企業戦争の引き金となる"Ocean War"へとつながった。詳細は補足情報6参照
  8. Schuman-Stein (wikia):Vehicles, Raw materials, Cybernetics
  9. Stein & Wasserman:Weaponry
  10. Sternmeyer Waffenfabrik (wikia):Weaponry
  11. Welt Geshaft Bank:Bank

・イタリア
  1. Biotechnica(ローマ) (wikia):Genetic, Microbiology, Biochemistry, Cybernetics
    • 未来の燃料「CHOOH2」製造に必要な小麦を開発した企業(詳細はドキュメント1991年参照)として知られるが、その後もExoticファッション(ドキュメント2016年参照)やクローン研究(ドキュメント2020年参照)に携わり、着実に会社の規模を拡大していった
  2. Carolli (wikia):Robotics
  3. Fabbrica d’Armi Pietro Beretta:Weaponry
    • 現実世界でも通称「ベレッタ社」として知られるイタリアの銃器メーカー(参考
  4. Masetto Tech Clothing:Clothes, Tools
  5. Wyzard Technologies:Cybernetics, Information technology
    • Wyzardが開発した「Verbal-Eyes」シリーズは、感情を瞳に反映させるサイバーウェア。例えば怒っている時は虹彩が燃え盛り、その火消しに励む消防隊の映像が瞳に浮かび上がる

・EEC
  1. Bodycure:Body care
  2. Continental Catering:Receptions, Caterers
  3. Euro Flight:Intercontinental transport
  4. Eurobank (wikia):Bank
    • サイバーパンクの世界ではECU(ドキュメント1992年参照)が幅をきかせているため、EECの中央銀行としてこの統制を担っているユーロバンクは(企業というより)世界最大の金融機関である
  5. ESA (European Space Agency) (wikia):Aerospace
    • ドキュメント1991年参照。宇宙事業にかけては世界最大の機関だが、近年は米国企業やJABによるテクノロジーの追い上げも目覚ましい
  6. Harris & Company:Luxury apartment rental
  7. NetWatch(ロンドン) (wikia):Corporate security
    • ドキュメント2013年参照。なおここでは(もともとの発祥がヨーロッパなので)便宜上EEC扱いにしているが、NetWatchはユーロ圏だけでなく、日本や米国の政府/企業からも資本提供を受けているグローバルな国際機関
  8. PanEurope (wikia):Military vehicles

・その他
  1. Aesculapius Inc.(ギリシャ) (wikia):Medical equipment
  2. Bensen(スペイン):Hovercrafts
  3. Drakon Worldwide Fund(ルクセンブルク):Bank
  4. Glock(オーストリア):Weaponry
    • グロック社は実在するオーストリアの銃器メーカー(参考
  5. Moore Technologies(スイス) (wikia):Cybernetics

*企業ロゴ 英:6, 10 / 仏:1, 2, 3, 4, 5 / 独:2, 4, 6 / 伊:1, 2, 4, 5 / EEC:1, 2, 4, 5, 6, 7, 8 / その他:1, 5

 
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補足情報9:国別企業一覧 Part3

ここでは原作2020でその存在が確認できる各企業を国別ごとにピックアップしています。

【INDEX】
  • アメリカ ← Part 1 へ
    • USA(70)/ その他(6)
  • ユーロシアター ← Part 2 へ
    • UK(10)/ フランス(5)/ ドイツ(11)/ イタリア(5)/ EEC(8)/ その他(5)
  • アジアとその他 ← Here!
    • 日本(29)/ 中国/韓国/台湾(5)/ ロシア(8)/ その他(4)/ 宇宙(3)

【一覧のみかた】については...Part1を参照
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■ アジア

・日本
  1. Arasaka (wikia):傭兵/武器/軍用車両/サイバネティクス/銀行
    • ちなみに補足情報5で紹介している主要キャラクター8人は全員アンチ・アラサカ
  2. Arasaka Sleep Facility (wikia):ハウジング
    • アラサカの子会社の一つで、ワールドワイドに展開している宿泊施設。一泊40eb
  3. Bakumatsu Chipmasters (wikia):言語系(方言など)チップ
  4. Cherry Blossom (wikia):アーケード/ブレインダンス(施設)
  5. Dakai Soundsystems (wikia):サイバネティクス(声帯系)
    • 上述のCyphire(フランス)と共同で開発した「NewThroat」は、声帯をサイバーウェアに置き換えるVoice Synthesizer
  6. Eli of Japan (wikia):アパレル
  7. Fujiwara (wikia):Bank, assurance, security, financial investments
    • 金融業界大手の一つで、日本企業を支えるメインバンク
  8. Honda (wikia):自動車
    • 本田宗一郎のホンダ。子会社の「Honda Avis」はナイトシティに支店あり
  9. JAB (Japanese Aerospace Bureau) (wikia):Aerospace
    • 2002年に設立された宇宙開発機関。ちなみに現実世界では2003年にJAXA(参考)が発足している
  10. Kendachi (wikia):Monomolecular products, orbital alloys, weaponry
    • 宇宙に研究所があり、そこで得られる高品質結晶やガラス繊維を加工して作るモノブレードで有名な会社
  11. Kenjiri Technologies (wikia):Information technology
    • 第一世代のサイバーモデムを開発した企業。ドキュメント2005/2009年参照
  12. Kizamasu Inc. (wikia):Construction
  13. Kundalini Roadworks (wikia):Motorcycles
  14. Matsushima-Kiroshi (wikia):サイバネティクス(光学系)
    • もともとは「キロシ屋」という時計製造を生業とする会社だったが、2013年にKiroshi Groupとして社名を改め、現在は光学系のサイバネティクスでは業界随一の評判を得るまでに至っている
  15. Mitsubishi-Sugo (wikia):ヘリコプター/ロボティクス/戦車/自動車
    • ドキュメント2003年参照
  16. Mitsubishi/Koridansu (wikia):Orbital design, Construction
    • 宇宙開発における各種モジュールの知的財産権を数多く有する他、三菱製Workshack(宇宙開発で用いられる小規模な宇宙ステーションのこと。研究開発や修理などの用途で利用される)も市場から高い評価を得ている
  17. Mitsuzuki (wikia):Mortorcycles
  18. Nikkon (wikia):Optics, photos, cameras
  19. SegAtari (wikia):Video games, virtual realities, robotics, weaponry
    • ドキュメント2014年参照。新作Redではなぜか社名が「Segotari (セガ+アタリではなくセゴタリ)」に変更されている(参考↓)
      19segotari.png *クリックで拡大
  20. Shirakawa Research Industries (wikia):Submarines
  21. Sumitomo (wikia):Bank
  22. Takaya (wikia):Cars
  23. Tanaka Exec (wikia):Clothing
  24. Towa Manufacturing (wikia):Weaponry
    • 2020時代、武器生産メーカーとして代表的な日本企業は4つある(ちなみに他の3つはアラサカ、ツナミアームズ、三菱-須郷:*三菱は武器メーカーというより戦闘用車両を製造)。Towaはその中でも最大手の武器(専門)メーカーで、設定としては第二次世界大戦前から開業している老舗企業。海外への武器供給はしておらず、日本の警察庁やSDF(自衛隊)など国内支給に事業内容を限定している
  25. Toyota (wikia):自動車
  26. Tsunami Arms (wikia):High-tech weaponry
    • ゲーム版2077にも登場予定(ソース)

  27. Usagi-bin (wikia):Mail Delivery, Transportation, and Armored Security Truck Service
    • ドキュメント2012年参照。Nagoya Transportationは2010年からウサギをマスコットキャラに採用しており「うさぎ便 (Rabbit Express Mail)」の愛称で知られる
  28. Yakurichi-Ural (wikia):Industrial vehicles, military vehicles
  29. Yamaha (wikia):Musical instruments, motorcycles, electronic

・中国/韓国/台湾
  1. Dai Lung(中国) (wikia):Manufacture
  2. Hyundai(韓国 - ソウル) (wikia):Vehicle
  3. Kang Tao(台湾) (wikia):Corporate Weapons Manufacture
    • ゲーム版2077にも登場予定(ソース)。なおゲーム版では新興の中国企業という紹介だが、原作では初版(2013)から存在する台湾の武器メーカー(設定変更の理由は不明)
  4. Sungan Industries(韓国 - ソウル) (wikia):Weaponry, electronic, cybernetics
    • 韓国最大のチェボル(日本でいう財閥:参考)という設定の架空企業
  5. Tanson Group(韓国 - クァンジュ) (wikia):Weaponry, cars, electronic, household appliances
    • Sunganに次ぐ韓国第二のチェボルという設定の架空企業。武器メーカーとして有名

■ ロシア
  1. Kalishnikov (wikia):Weaponry
  2. KomKol (wikia):Weaponry
  3. Mikoyan-Gurevich:Aviation, space transport, information technology, optics, agriculture
    • ソ連時代に実在したロシアの航空機メーカー「A・I・ミカイァーンとM・I・グレーヴィチ記念設計局」。現実世界では1996年に民営化され、現在は一般的に「ミグ設計局(ロシア航空機制作会社『MiG』)」として知られる(参考
  4. Rostovic (wikia):Cybernetics
  5. Soviet Rocket Corps (wikia):Space construction, space transport
    • ユニバースが宇宙空間にも広がっているサイバーパンクシリーズでは、各大陸の主要勢力として…欧州のESA、日本のJAB、米国のNASAなどが紹介されており、ロシアの宇宙機関「SRC (Soviet Rocket Corps)」もその一つ。オービタル・エアと競合する宇宙関連企業「KosmoSov」を子会社に持つ
  6. SovOil(Soviet World Oil Industries) (wikia):Power generation, fuels, mines, chemistry
    • 正式名称は「Soviet World Oil Industries」といい、業界でも巨大なシェアを誇るロシアの大手石油化学メーカー。ライバル企業であるPetroChemと第二次企業戦争を繰り広げた(ドキュメント2008年参照)
  7. Stolbovoy Arms(リトアニア) (wikia):Weaponry
  8. Sukhoi:Air vehicles
    • スホーイ社は実在するロシアの航空機メーカー(参考

■ その他の国
  1. Israel Military Industries(イスラエル) (wikia):Weaponry
    • 実在するイスラエルの武器メーカー(参考)。原作では「IMI」の略称で登場
  2. Orbital Air(ケニア - ナイロビ) (wikia):Orbital transport, spatial maintenance
    • ケニアのナイロビに本社を置く宇宙関連企業。宇宙空間への輸送事業、および宇宙関連施設整備に関しては他社の追随を許さず、多くの企業がOAのサービスを利用するなど業界随一の評判を誇る。ただし(すでに2020時点で)宇宙事業に関する中国の技術革新が凄まじく、またEuro Flight Corporation(EEC-3)も事業を宇宙へと拡大させつつあるため、それまで(宇宙関連テクノロジーで他社を圧倒してきたことを背景に)ほぼ業界を独占してきたOAは危機感を募らせている
  3. Sphere Courier(アフリカ):High security freight transport
    • 運輸業を主な生業とし、地球上から宇宙空間の各軌道上にある様々な施設に物資を輸送してくれる
  4. Tiger Medicines Corporation(シンガポール) (wikia):Pharmaceutical
    • 原作の架空企業ではあるが、現実世界では日本でも有名なタイガーバームを製造した企業(Haw Par Corporation)をモチーフにしている模様。ナイトシティにも支社があり、バイオテクニカ(イタリア-1)が業界のライバルにあたる

■ 宇宙
  1. Replitech (wikia):Genetic, biotechnology
    • ロシアの科学者が集まって米国企業の後押しのもと2018年に創業した。クリスタルパレス(ドキュメント2011年参照)に本社を置く。当初は遺伝子工学に基づいた小麦の改良を研究していたが、その後は宇宙居住者への食糧供給が可能なまでになり、現在(2020)急速に事業を拡大させている
  2. Terra Nova (wikia):Environmental technology, space construction
    • 宇宙空間における環境構築とそのサポートを専門とする、米ソ共同のベンチャー企業。もともとは月のコペルニクス(ドキュメント2002年参照)でライフサポートシステムをデザインするチームだったが、その後はパラダイスステーション(ドキュメント2018年参照)に本社を置き、現在彼らが有する特許技術はクリュセ平原(火星)にあるNASAとJABの共同基地(ドキュメント2021年参照)などでも利用されている
  3. Utopian Corporation (wikia):Pharmacology, nanotechnologies
    • 2010年代初頭、Microtechがコンピューターテクノロジーに事業を集中することを決定したことに伴い、これを不服とした研究者たちが同社を去って新たに設立した会社がUC。サイバーパンクの世界ではナノテクノロジーが2015年から実用化されており、2025年頃には主要企業の全てがこの分野に投資を行っているが、時代の潮流に合致したUCが有するテクノロジーは現在この分野で他社の追随を許さない。宇宙に独自の研究施設「Utopia」を有し、ここを拠点にドラッグやハイテク機器、Skinweave(ナノテクを利用したBioware(ドキュメント2016年参照)の一種。皮下アーマーのこと)など新技術に基づいた多くの製品を世に送り出している
なお(上記3企業以外にも)原作2020で宇宙を本社に置く主要企業としては、他にIEC(ドイツ-6)とMitsubishi/Koridansu(日本-16)がいる


*企業ロゴ 日:1, 2, 5, 9, 10, 11, 13, 14, 16, 17, 18, 19, 23, 26 / 中韓台:2 / 露:6 / その他:2, 3 / 宇宙:1, 2, 3

 
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補足情報10:原作TRPG版ソースブック一覧

ここでは原作サイバーパンクシリーズを構成する各種ソースブックを一覧としてまとめています。
尚、ここで紹介している原作の関連書籍は、下のCanon3冊(下記注釈参照)に限定したもので、CybergenerationやV3は含みません。また原作の出版元であるR.タルソリアンゲームズ以外からも、他社から出版された派生作品が数多くありますが(参考)これも除外しています。
本項は「タルソリアンが出版しているCanon作品の関連書籍」のみに限定した紹介になりますので、ご注意を。

【参考】原作シリーズの時系列:​
Cyberpunk 2013(初版):2013年

Cyberpunk 2020(第二版):2020〜2025年(Firestormを含む)

┣━━━ Cybergeneration(第四次企業戦争後の設定を引き継いだ外伝的な作品):2027年〜
┣━━━ Cyberpunk V3.0(第三版):2030年〜

Cyberpunk Red(原作TRPGの最新版):2025〜2045年

Cyberpunk 2077(ゲーム版):2077年

【注釈】太字で示した3冊とゲーム版の2077が同じ時間軸で展開されるいわゆるCanonに該当する(2013→2020→Red→2077:参考
*「Cybergeneration」と第三版の「Cyberpunk V3.0」は、いわゆるパラレルワールドとして展開されるアナザーストーリー的な作品​

■ はじめに

原作シリーズの関連書籍はR.タルソリアンゲームズが出版しているものだけでも30冊以上にのぼり、原作に興味が出ても何から読んでいいか分かりにくいかもしれません。ですが大まかに分けると次の3つに分類することができます:
  • ルールブック:各版ごとに一冊ずつある。全ての基本が掲載されているコアブックのこと
  • ソースブック:コアブックで紹介された世界観/ルールを更に拡張した追加の設定資料集のこと
  • アドベンチャーブック:構築された世界観をベースに展開される特定のストーリーをアドベンチャー形式で提示したもの
また原作関連書籍のほとんどは上の2つ目「ソースブック」に該当し、さらにこれらのソースブックは以下のどれかに当てはまります:
  • キャラクタークラスマニュアル
  • ワールドガイド
  • 商品/企業カタログ
本項では以上のカテゴライズ(注:この分類は公式のものではありません)をもとに紹介を進めています(書籍名の横の()内は出版年を表します)。なお特に注釈がない限り、本項で紹介した書籍は全てDrivethruRPG.comからPDF版(英語)が購入できます

・・・​

■ ルールブック
  • Cyberpunk 2013(1988)
    • 原作シリーズの記念すべき第1作目。副題は”The Roleplaying Game of the Dark Future”。

      *残念ながら本書は現在デジタル/フィジカル共に絶版状態になっており、個人的にも所有していないため、以下Wikiaからの情報をもとに簡単にまとめました(”おすすめ度”と”本書でわかる主な内容”も省略):”スプロールシリーズのウィリアム・ギブスンとブレードランナーの原作者フィリップ・K・ディックに強い影響を受けて制作された本作の発売は1988年。初版は3つのブックレット(Friday Night Firefight、View from the Edge、Welcome to Night CIty)で構成され、当初は単なる「Cyberpunk」という名称で発売されたが、世界観をより拡張した第二版「Cyberpunk 2020」が2年後に発売されたことに伴い、その後(2013年を舞台にしている)この初版は「Cyberpunk 2013」として認知されるようになった”
  • Cyberpunk 2020(1990)
    • 全ての基本が収録されたマスト本。サイバーパンクユニバースの基本的要素が広範囲に亘って解説されており、(現在は入手困難ながら)日本語版も存在する(邦題は”サイバーパンク2.0.2.0.”)。ゲーム版2077を購入すれば全てのユーザーがこれのPDF版(英語)を無料で手に入れられるため、原作に興味のある方はまずはこれを一読(英語でも一見の価値あり)
    • おすすめ度:★★★★★
    • 本書でわかる主な内容:基本的なこと全て(10のプレイヤーロール概説、プレイヤークリエイト、ライフパス、プレイヤースキル、主な武器/装備/サイバーウェア、トラウマチーム、ネットランニング、2013年に起きた「Arasaka Riot」の詳細、14の巨大企業概説など)
      • Listen Up, You Primitive Screwheads(1994)
        • ちなみにこちらは実際にTPRGとしてプレイする際のレフェリー(GM)のために用意されたゲーム進行ガイド。(どのようにゲームを進めていけばいいか)TRPGのベテランGMや原作シリーズの執筆者(マイクさんも含む)からのアドバイスが多数収録されている
  • Cyberpunk Red(2020)
    • *コアブック発売後(11月14日発売予定:参考)に更新
    • おすすめ度:
    • 本書でわかる主な内容:

注:以下に掲載するソースブック/アドベンチャーブックの一覧は、特に注釈がない限り全て第二版2020の関連書籍です


■ ソースブック

>キャラクタークラスマニュアル
  • Rockerboy(1989)
    • 数少ない初版2013のソースブックの一つで、タイトル通り「ロッカーボーイ」に関する解説本。ムーブメントが始まったいきさつ(ドキュメント1997年参照)、その象徴であるバンド「サムライ」のメンバー「Kerry Eurodyne」のインタビュー、彼らを取り巻くDMSを中心としたメディアなど…ロッカーボーイにまつわる様々な情報が掲載されている
    • おすすめ度:★★★★
    • 本書でわかる主な内容:ロッカーボーイ全般、ロッカーボーイを取り巻くメディア、ブレインダンス
  • Solo of Fortune(1989)
    • こちらも初版2013のソースブック。キャラクタークラス「ソロ」に焦点をあてた一冊で、副題(”Journal of the Corporate Mercenary”)にもあるように「傭兵マニュアル」的な体裁をとっている。普段のソロがどのようなストリートギャングを相手しているのか、クライアントである企業の一般的なセキュリティがどうなっているのか、ソロが愛用する武器の紹介など…様々な角度からソロについて解説している他、本書では2004年に起きた第一次企業戦争についてもふれられている
    • おすすめ度:★★★☆☆
    • 本書でわかる主な内容:ソロ全般、第一次企業戦争
  • Solo of Fortune 2(1994)
    • こちらは第二版2020のソースブック。「2020年度版」”Solo of Fortune”。

      *残念ながら現在これのPDF版は発売されておらず、個人的にも所有していないため、以下Wikiaからの引用になります(”おすすめ度”と”本書でわかる主な内容”も省略):”本書では2020年に至るまでのソロクラスの歴史、ナイトシティの外で起きた2013〜2020間の世界情勢の変化、2020年トップ10ソロリスト、ソロが愛用する武器や車両の紹介…などが掲載されている”
  • Protect & Serve(1992)
    • ルールブックに収録されている10の基本プレイヤーロールの一つ「コップ」に関するソースブック。サイバーパンク世界における警察機関に注視した内容で、指揮系統の詳しい解説や具体的な業務内容の他に、サイバーサイコに対処する独自部門「Max-Tac」や、LEDiv(Law Enforcement Division)と呼ばれる新たな法執行機関に関する情報なども豊富。ちなみにタイトルの「Protect&Serve」というのは、現実世界でSWATを最初に組織したといわれるLAPD(ロサンゼルス市警)のモットーとしても有名
    • おすすめ度:★★★★
    • 本書でわかる主な内容:コップ全般(指揮体系、署内各部署の概説、LEDiv、犯罪組織、UCJC-統一市民法典で定められた量刑の違い…など)
  • Wildside(1993)
    • プレイヤーロール「フィクサー」を中心にまとめられた一冊。一風変わった特殊技能『裏取引 (Streetdeal)』を有するフィクサーは(他のロール以上に)様々な人/勢力とのコネが物を言うロールであり、(副題”The Cyberpunk Sourcebook for the Street”にもあるように)本書ではストリートレベルの目線で解説されたフィクサー必須情報が多数掲載されている
    • おすすめ度:★★★☆☆
    • 本書でわかる主な内容:フィクサー全般(具体的なフィクサー業界の実態(契約/取引/評判といった基礎情報をはじめ、業務内容によって様々に枝分かれする各種フィクサーの紹介など)、他ロールとの関係性、(取引/契約用の)各種ツール、ストリートカルチャー(文化/犯罪/テクノロジー等)の紹介…など)
  • Neo Tribes(1994)
    • ノーマッドに関する全ての情報がつまった一冊。概要としては下のワールドロア2にまとめた通りだが、それ以外にもノーマッドが愛用する装備品/車両/武器の紹介や、具体的なノーマッドファミリーの一例、他にも巻末には「Storm Technologies (ドキュメント2019年参照)」を中心にした短いアドベンチャーパートなども収録されている
    • おすすめ度:★★★★
    • 本書でわかる主な内容:ノーマッド全般
  • Live & Direct(1996)
    • 2020の基本プレイヤーロールの一つ「メディア」に焦点をあてたソースブック。サイバーパンク世界におけるメディアの変遷/歴史/世間への影響力、スクリームシート(*詳細は下↓のタブをクリック)やブレインダンスに代表される各種媒体、メディアキャラクターの種類とNPCの一例、代表的なメディア系企業(DMS/Net54/WNS)の紹介など、その内容は多岐にわたる
      サイバーパンクの世界では新聞のデジタル化が進んでおり、全ての紙面はデジタルコードに変換され、それが各所に備え付けられたデータ端末に送信される。この端末(ニュースボックス)がその場で高速印刷をして読者に提供する新聞のことを俗に「スクリームシート」と呼び、従来の新聞と比べて情報の更新頻度も高く(通常は1日4回更新され、号外なども1時間ほどですぐに配信可能)、自分が読みたい紙面のみを印刷することができるなど、従来よりも利便性に秀でた次世代型の新聞として広く普及している
    • おすすめ度:★★★☆☆
    • 本書でわかる主な内容:メディア全般

>ワールドガイド
  • Night City(1991)
    • タイトルの通りナイトシティに特化したソースブック。ナイトシティの隅から隅まであらゆる情報が(異常なほどの密度で)網羅されている。2020のルールブックと合わせてマストな一冊。なおこちらも(現在は入手困難ながら)日本語訳されている
    • おすすめ度:★★★★★
    • 本書でわかる主な内容:ナイトシティ
  • Eurosource(1991)
    • 欧州各国に焦点をあてたワールドガイド。副題は”The EuroTheatre Sourcebook for Cyberpunk”。

      *残念ながら本書は現在PDFはもちろんのこと公式ストアでも扱っておらず、フィジカル版も入手困難な状況で実質絶版状態になっています。個人的にも所有していないため、以下Wikiaからの引用になります(”おすすめ度”と”本書でわかる主な内容”も省略):”本書では欧州の様々な各国事情〜産業の盛んなドイツ、戒厳令が発令された英国、貧困や内戦に苦しむ中/東欧諸国など〜の解説をはじめ、ユーロ版ロッカーボーイ「Rockin’ Euro」や新たなプレイヤーロール「Medtechies」と「Biotechies」の紹介もされている”
  • Eurosource Plus(1995)
    • 上の「Eurosource」の続編。ワールドガイドとしては最後に出版された一冊で、それまでのノウハウを活かした更なる深い解説が欧州全域に及んでいる。フォートレス・ヨーロッパ(ドキュメント1992年参照)と呼ばれるユーロ圏への厳しい出入国管理の実態や、欧州共同体の組織体系(注:現実世界で1993年に発足した欧州連合-EU-はサイバーパンクユニバースには存在しない)をはじめ、ドイツやフランスなどの主要国だけでなくNCE(ドキュメント2018年参照)やロシアまでも網羅した欧州諸国概説、他にもユーロ圏の生活スタイルやプレイヤーロールのあり方まで…内容盛りだくさん
    • おすすめ度:★★★☆☆
    • 本書でわかる主な内容:ユーロシアター(フォートレス・ヨーロッパ、欧州共同体の組織体系(欧州議会や欧州委員会など)、20以上にも及ぶ各国概説、ユーロスタイル、プレイヤーロール<欧州編>…など)
  • Home of the Brave(1992)
    • サイバーパンクのロア(世界設定)に興味のある方はまずこれ。原作シリーズは宇宙を含めて世界中を舞台にしてはいるものの、基本はやっぱりアメリカ合衆国を中心に展開されていくため、米国全土に焦点をあてた本書には多数の興味深い内容が掲載されている。下のワールドロア1でも紹介した「暗黒の未来」の原因となった"The Collapse"の詳細だけでなく、Collapseで二院制すら廃止されてしまった合衆国新政府の組織体系、新たな米軍編成システム「COGs (ドキュメント1997年参照)」、Collapse後に全米各地で勃興した新都市…など見所満載
    • おすすめ度:★★★★★
    • 本書でわかる主な内容:アメリカ合衆国
  • Rache Bartmoss’ Guide to the Net(1993)
    • 本書は上の「キャラクタークラスマニュアル」の方にカテゴライズしてもいいかもしれないが、ネットランナーだけでなく「サイバースペース」全般について広く扱っているため、一応こちら(ワールドガイド)に分類。

      このソースブックは世界最高のネットランナー「レイシィ・バートモス (Rache Bartmoss)」によってまとめられた「ネット総合ガイド」的な体裁をとっており、彼の知り合いで本書の編者(という設定)でもある「Spider Murphy」による補足コメントをまじえながら、ネットランニングに必要な種々の情報が多数収録されている。ネットランナー必読の一冊
    • おすすめ度:★★★★
    • 本書でわかる主な内容:サイバースペース(ネット沿革、AI、NetWatch、ネットを構成する各リージョンの詳細…など)
  • Deep Space(1993)
    • 宇宙のことを知りたいならこれ。本シリーズにおいて宇宙は単なる「おまけ」ではなく、本書ではサイバーパンクユニバースの(2025年前後の)宇宙環境について詳細な解説がされている。巻末には50ページほどのアドベンチャーパートも収録
    • おすすめ度:★★★★
    • 本書でわかる主な内容:宇宙(クリスタルパレスやスペースコロニー、宇宙関連企業/各勢力の概説、Highridersとして宇宙で暮らす時の基本事項、宇宙関連機器/車両/武器の紹介…など)
  • Rough Guide to the UK(1994)
    • 英国に関してはすでに上述のEurosource(Plusも含む)でもある程度ふれられているが、本書ではUKを更に深く掘り下げた内容になっている。英国王室が瓦解した後のMLAによる戒厳令下暫定議会(ドキュメント2001年参照)の詳細や、それに伴うスコットランド蜂起とその後の王室復興(ドキュメント2018年参照)に至る近年史をはじめ、後半部分には地球の歩き方並みの細かい地域ガイドまで収録
    • おすすめ度:★★★☆☆
    • 本書でわかる主な内容:英国(サイバーパンクUK史、内政事情、メディアとノーマッド<UK編>、UK観光ガイド/地域ガイド…など)
  • Pacific Rim Sourcebook(1994)
    • いわゆるパシフィックリム(環太平洋地域)に属する国々のワールドガイド。日本で独自展開されたオリジナルソースブック「Nippon Sourcebook」とは違い、本書の解説は日本だけに止まらない。また各国事情だけでなく、東洋武術(マーシャルアーツ)の紹介や、パイレーツや忍(SHINOBI)といった新しいキャラクターロールなども掲載されている。ちなみに本書の執筆者クレジットには、IGNの原作紹介動画で解説をされていた楯野降雪さんや岡田伸さんの名前も
    • おすすめ度:★★★★
    • 本書でわかる主な内容:環太平洋諸国(日本、韓国、中国、香港、台湾、インドシナ諸国(ミャンマー、カンボジア、ラオス、ベトナム、タイ)、オーストラリア、ニュージーランド)

>商品/企業カタログ
  • Chromebook(1991)
  • Chromebook 2(1992)
  • Chromebook 3(1994)
  • Chromebook 4(1996)
    • サイバーパンクの世界に存在する様々な商品をカタログ形式で紹介したソースブック。イラストも多くシリーズ初心者でも比較的読みやすい。ただそれ以上に本書の長所としては、扱っている範囲(商品)がかなり幅広いため、世界観を知る上でとても役に立つシリーズ。副題が”Cyberpunk Styleguides”となっているように、様々な商品を通してユニバースの多様な「スタイル」が提示されている。(現在は入手困難ながら)1と2は日本語訳もされた。なおPDFなら1と2で一冊、3と4で一冊とまとめ買いできるのでお得
    • おすすめ度:★★★★★
    • 本書でわかる主な内容:車両 (1,2,3,4)、サイバーウェア (1,2,3,4)、バイオウェア/ナノテク (4)、武器 (1,2)、装備品 (2,3,4)、ソフトウェア (1,3,4)、ファッション (1,4)、Exotics (2)、ハウジング (1)、各種チーム (2)、FBC/ボーグ/ACPA (2,3)…など
  • Maximum Metal(1993)
    • APCに代表される装甲車両についてまとめたソースブック。本書の内容は一般的な乗用車は含まず、あくまで業務用/戦闘用の車、バイク、ヘリ、ACPA(ドキュメント2015年参照)などに限られる
    • おすすめ度:★★★☆☆
    • 本書でわかる主な内容:装甲車両(APC/バイク/戦車など)、エアシップ(ヘリ/エアロダイン/オスプレイなど)、ACPA(デザインシークエンスの詳細、ACPAカタログ)...など
  • Blackhand’s Street Weapons 2020(1994)
    • ソロ中のソロ「モーガン・ブラックハンド」が執筆した(という設定の)武器カタログ。本書に掲載された武器の数は実に250以上にも及び、各種設定をはじめとする各武器の解説が種類ごとに紹介されている。「2020武器総合ガイド」的な一冊
    • おすすめ度:★★★☆☆
    • 本書でわかる主な内容:武器全般(ナイフ/刀/モノブレードに代表される近接武器、弓、ハンドガン、SMGs、ショットガン、ライフル、マシンガン、ヘビーウェポン、ボーグ用ウェポン、グレネード、爆薬、弾薬…など)
  • Rache Bartmoss’ Brainwave Blowout(1996)
    • 本書は全体を通じてカタログ形式の体裁をとっているわけではないが、便宜上こちら(商品カタログ)に分類。

      上で紹介した「Rache Bartmoss’ Guide to the Net」が主にサイバースペース全般に関するネット総合ガイドだった一方で、本書はネットランニング時に必要な実際のハードウェアとソフトウェアを中心とした解説本。”Guide to the Net”と同様「レイシィ・バートモス」による執筆(という設定)で、ネットランナーに必要な様々なガジェットの知識が掲載されており、バートモスが開発した有名なプログラム「Demon」シリーズをはじめとする、150以上に及ぶ既存プログラムにも一つ一つ丁寧な解説がある。プログラムの基本構造や自作プログラムの作り方などもフォローされている上、後半部分には原作シリーズを元に制作されたTCG「Netrunner」と連動したコンテンツまで収録
    • おすすめ度:★★★☆☆
    • 本書でわかる主な内容:ネットランニング用ガジェット - ハードウェア(サイバーデッキ、PC、サイバーウェア)、ソフトウェア(各種プログラム)、 NETRUNNER®関連コンテンツ
  • Corporation Report 2020 Volume 1(1991)
  • Corporation Report 2020 Volume 2(1992)
  • Corporation Report 2020 Volume 3(1992)
    • サイバーパンクユニバースに登場する主要巨大企業の数社を徹底的に解説した設定資料集。「Merrill, Asukaga & Finch」が各社の企業実態についてまとめた調査報告書という体裁をとっており、創業者から現CEOまでにいたる各企業の成り立ちをはじめ、主要役員、事業内容、マーケティング戦略、主要施設、社員実態など…「過剰なまでの情報」は本書でも健在。なお1と2と3を全部一冊にまとめた「Corporation Report 2020」が最近PDFで販売されたため、購入の際はそちらがお得
    • おすすめ度:★★★★
    • 本書でわかる主な内容:アラサカとIEC (1)、Lazarusとミリテク (2)、PetrochemとSovOil、および第二次企業戦争 (3)
  • Edgerunners Inc.(1995)
    • 本書も厳密にはカタログ形式の体裁をとっていないが、便宜上こちら(企業カタログ)に分類。

      このソースブックは2部構成をとっており、前半部分はNPC総勢30名に及ぶ各エッジランナーの求人用レジュメ、後半部分は逆に企業側が提示する求人募集という具合に、エッジランナー(補足情報1参照)の見本市という側面と、どのようなエッジランナーを企業側が求めているかという両面から世界観を掘り下げた内容になっている。人材派遣会社「StreeTemps」の子会社である”Edgerunners Inc.”が発行する「求人情報誌」的な一冊
    • おすすめ度:★★★★
    • 本書でわかる主な内容:各種レジュメ - エッジランナー(ソロ8人/メディア3人/メドテク4人/フィクサー4人/テッキー3人/ネットランナー5人/その他3人)、企業(Infocomp、ツナミアームズ、Red Cab、Affirmative Action、Peak & Derrera、BioMass Laboratories、BioGenesis、Network First、CityMid、Cult of the New Dawn)


■ アドベンチャーブック
  • Tales from the Forlorn Hope(1992)
    • ナイトシティにあるバー「Forlorn Hope」に関連した8つのアドベンチャーをまとめた一冊。全てのアドベンチャーは上述のソースブック「Solo of Fortune」の流れを汲んでおり、中米紛争に従軍した退役軍人が集まる「Forlorn Hope」の客や従業員の物語が中心
    • おすすめ度:★★★☆☆
    • 本書でわかる主な内容:ナイトシティの人間模様(の一例)
  • Eurotour(1993)
    • 米国出身のロッカーボーイ「Jack Entropy」のヨーロッパツアーを舞台に繰り広げられる6つのシナリオをまとめたアドベンチャーブック。プレイヤーは欧州各地(UK→ベルギー→フランス→ポルトガル→イタリア→ギリシャ→ハンガリー→チェコスロヴァキア→ポーランド→デンマーク)を回るこのツアークルーの一員として参加
    • おすすめ度:★★★☆☆
    • 本書でわかる主な内容:サイバーパンクユニバース<欧州編>の具体例(多数のNPCを含む人間模様、各国の企業/ギャング/政府機関との関わり…など)
  • Land of the Free(1994)
    • Francis Youngが手がけていたクローン研究(ドキュメント2004〜2020年参照)をめぐって、5部構成で展開される大作アドベンチャー。上述のソースブック「Home of the Brave」で紹介された世界設定を軸に、プレイヤーはNYからナイトシティまで全米を横断する旅に出る
    • おすすめ度:★★★☆☆
    • 本書でわかる主な内容:クローン研究
  • Firestorm Stormfront(1997)
  • Firestorm Shockwave(1997)
    • 第二版2020の集大成とも呼べる大作3部作(未完)。ソースブックとしての設定資料集的な内容も数多く、2022年に勃発した第四次企業戦争の全てが徹底的に解説されているが、あまりにも情報量が多いためさらっと読める代物ではない点に注意(Firestormシリーズについては別途まとめた上述の補足情報7も参照)。ちなみに原作者のマイクさんは各所で次のような発言をよくされている(一例):「第四次企業戦争はこれまで遊び尽くされた2020の世界観を一旦リセットするために大々的な規模のものにした。そのため地上/宇宙/サイバースペースに至るユニバースのあらゆる場所が壊滅的な被害を受けている」
    • おすすめ度:★★★★★
    • 本書でわかる主な内容:第四次企業戦争

 
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ワールドロア1:サイバーパンクの世界観 『暗黒の未来 (Dark Future) 』とは

サイバーパンクユニバースのディストピアな世界。
本シリーズで描かれている1990年以降のフィクショナルなタイムラインは、初版の2013が出版された1988年当時の世界情勢(下記参照)が色濃く反映されています。これを元に展開されるフィクションの中に、後のディストピアな世界が形成される「きっかけ」となった1つの重要な転換点があります。
それが「Collapse」と呼ばれる米国混迷期で、約15年間にもおよんだこの期間を境にそれまでの社会生活は一転し、本シリーズの(現実世界とは異なるサイバーパンクな)世界観「Dark Future」が訪れることになりました。
  • この時期...日本は丁度バブル絶頂期だったことで有名だが、世界に目を向けても当時はかなりの大変動期だった。

    1989年に冷戦が終結。ベルリンの壁が崩壊し東西ドイツが統一(当時のドイツは西と東で国が二分していた)すると、1991年にはソ連が崩壊、それに伴ってNATOも徐々に姿を変えていった。
    • NATOはもともと冷戦による米ソ対立を背景にした米国と西欧諸国の軍事同盟だったが、冷戦終了後は役割を徐々に変え(イラクやアフガニスタンなどの)域外地域における紛争予防および危機管理にその活動の重点を移した

    一方、当時の中国では鄧小平による改革開放が進められており、「眠れる獅子」としていずれ世界を席巻するだろうと世界の注目を集めていた時期でもあるが、1989年には天安門事件が発生。1997年に中国返還が決定している香港がいち早くこれに反応するなど、とにかくこの時期の中国を含めた(民主化運動を伴う)東南アジア諸国に対する世界の関心は高かった。

    このように1990年前後は世界各地で時代のうねりを迎えていた時期であり、他にも南アフリカではネルソン・バンデラが1990年に釈放されたり(これが1994年のアパルトヘイト撤廃につながる)、中東では1991年に湾岸戦争も勃発している。
    原作サイバーパンクシリーズは、これら当時の世界情勢がかなり広範に反映され、その後のフィクショナルな展開へと続いていく。
ドキュメントでは(情報が散らばり過ぎて)全容を把握しずらいと思い、このCollapseがいかにして引き起こされたのか、Collapseを経た世界がどれほど変わってしまったのか、別途こちらにまとめることにしました。かなり細かく年代表記していますので、ドキュメントと併せてご覧ください。

【注意】以下、ワールドロアをガチで知りたい人向けの内容です

*主な参考資料:Home of the Brave
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【目次】

  • 米国崩壊を招いた3つの要因
  • 米国の混迷が長引いた理由
  • Gang of Fourの解体に至るまで
  • The Collapseを経たユニバースがなぜ「Dark Future」と呼ばれるのか

一般的に米国の崩壊(Collapse)は1994年の世界株式暴落から始まったとされている。経済が破綻し、1995年には福祉分配緊急プログラムが始動されるものの効果はなく、その後は失業者、ホームレス、政治の腐敗が全米中であふれかえることに。国民の4人に1人がホームレスという状況にまで至っていた1996年には、各地でノーマッドの反乱が起こり、8月17日にはアメリカ合衆国大統領と副大統領が暗殺され、当時の国防長官だった「Jonathan Seward」によって戒厳令が発動される事態に陥った。こうして米国崩壊(Collapse)は決定的なものとなり、この混迷期は結果的に2008年まで続いていくことになる。


米国崩壊を招いた3つの要因

“The Collpase”はアメリカ合衆国に突如襲いかかった悲劇ではなく、以下にあげる3つの主な事件を経てもたらされた。
  • まず1つ目の要因として米国崩壊の呼び水となったのが、1990年に始まった「Quiet War」で、勢いを増すEECに対してそれを阻止する米国政府~という構図のもと、1994年までこの米欧間対立は続いた。例えば1992年に当時改革政策を進めていたソビエトに対する支援を米国政府が拒否する一方で、EECの方は対外支援を表明し、ソビエト側がこれを受け入れたことによって(米ドルではなく)ECU(ドキュメント1992年参照)の需要が高まり米ドルの下落へと繋がった。その後EECの経済力が徐々に拡大していくと、Gang of Fourはさらに秘密裏にアジアマーケットの株式操作を試みようとするものの、EECの手によってこの不正は露見してしまい、またこれが起因となってシステム障害が引き起こされ、1994年の世界株式暴落、ひいては各国がとった米国政府との取引禁止措置が「破滅へのカウントダウン」に拍車をかけることになった。
  • 2つ目が1992年にGang of Fourが南米の麻薬密売ルートを殲滅する動きに出たこと。第一次中米紛争の一環として行われたこの作戦は、麻薬密売によって経済が回っているような第三世界に大打撃をもたらし、経済破綻した各地方で多くの貧困を生む結果に。こうして南米諸国が反米の多国籍軍を結成し、EECの援助のもと局地的なゲリラ戦を繰り返したため、米国政府は国の立て直しはおろか、泥沼の麻薬戦争に陥っていくことになった。
  • 最後の要因は、地球環境。生態系への影響を一切顧みず、己の利益ばかりを追求する世界企業の所業は、酸性雨をはじめとする気候の変化を助長し、灌漑作業などの作物生産に深刻な影響を及ぼしていた。アメリカ本土も例外ではなく、ダストボウル(ドキュメント1993年参照)があったアメリカ中西部では1998年にその被害が最高潮に達するなど、地球環境の影響は年々増す一方だった。
以上主な3つの要因が重なって、1994年に世界株式市場が暴落し社会経済が破綻。米国政府に貸し付けを行える銀行はどこにもなく、混乱をきたした米国社会が1996年に”The Collapse”に至ったことによって、サイバーパンクユニバースの「Dark Future」が幕を開けた。


米国の混迷が長引いた理由

1997年に中東メルトダウンが起きた際、当時現地に駐在していたNSA局員は300人以上いた。しかし中東情勢に関する情報の伝達を彼らがMIC(*)に対して(故意に)遅らせたことによって、当時他国を牽制するためにも必要だった衛星写真が手に入らず、ロシアにミサイル配備を許し、サウジアラビアやクウェート内における米軍拠点の多くを失う羽目になってしまった。MIC長官などはすでに就任当初からGang of Fourの危険性を薄々感じ取ってはいたが、この一件で当時事実上の後任大統領職に就いていたSewardもついに業を煮やし、Gang of Fourの勝手な振る舞いに手を打つべく国防総省に個人ファイルを開示するよう指示した。
*MIC(Military Intelligence Cooperative):同年にアメリカ統合参謀本部が新設した軍事諜報機関。ドキュメント1997年参照

こうしてSeward主導のもと、MICによるGang of Fourの調査が開始されることになり、MICはひとまずDEAとFBIを解体するよう大統領にすぐさま提言。しかしその後のGang of Fourの解体は遅々として進まなかった…主な理由として以下があげられる:
  • Gang of Fourが容易く潰せるほど小規模な「秘密結社」ではなかった
  • 軍を動かそうにも当時の米国は全米規模で暴動が多発していたため、そのための人員が不足していた
  • 1999年に「Federal Weapons Statute」を発令し上記の暴動鎮圧にも効果を発揮したものの、2000年にSewardがこの暴動で死亡(実際は暗殺:後述)してしまい、その後を引き継いだWilliam Newellが相手の出方を見る消極的な作戦に切り替えてしまった
  • そうこうしている内に(NSAの裏工作によって)第二次中米紛争が2003年に勃発した

Gang of Fourの解体に至るまで

Newellが後任大統領になった2000年頃から、全米内で核の脅威を懸念する声が高まっていた。これは1990年の解体以降、国の再建を進めるソビエトがかつて有し、また現在は世界市場に出回っている核兵器の多くが南米諸国へと流れ込んでいたため。これに対してNewellは核攻撃の有事に備える対策として「SOC (Special Operations Command)」と呼ばれるサイバー傭兵を主軸とする特別作戦をスタートさせた。またSOCはその人員の半数以上がCIAの関係者によって構成されていたため、NewellはこのSOCのメンバーに「Gang of Four」に不利益な証言をするよう要求。当時すでにGang of Fourの裏工作によって13名もの政府高官(大統領も含む)が死亡したとされており、これに関する証言をした者には全面的な免責を与えた。
【注釈】ちなみにこの時の聴取によって、1996年に”副”大統領が暗殺されたのは不慮のアクシデントで、Gang of Fourの当初の意図としては彼を傀儡にするつもりだったこと、さらには2000年に前大統領Sewardが亡くなったのも、実際は怒れる民衆による暴動のせいではなく、CIAとNSAの極秘作戦によって暗殺されたことなどが判明した

SOCへの聴取後、CIAの命令体系はNSA解体計画へと組み込まれ、先の聴取に協力した多くのCIAメンバーが政府からのスパイとしてその後のGang of Fourのオペレーションに参加した。そして2004年の3月にワシントンでNSAやCIAをはじめとする反政府分子の大規模な粛清が行われ、後に(2008年)発足する新政府の一翼を担う組織として新たなCIAが再編されていくことになった。

それでも1997年のMICによる調査から始まった一連の殲滅活動が、2004年をもって全ての(Gang of Fourに関わる)組織の根絶に至ったわけではなく、例えば同年(2004年)にあったTesla Johannsenの暗殺はNSA関係者によるものだったとされている。そのため水面下ではGang of Fourの息がかかった世界中の反政府分子の掃討作戦がその後も行われ、これにはさらに4年の歳月を要した。このようにGang of Fourを巡る一連の騒動によって、米国の諜報機関はかつての姿を二度と取り戻すことができないほど計り知れないダメージを被ったのである。

こうして迎えた2008年11月7日。1996年の戒厳令発動以降では初めてとなる選挙が開かれ、軍部+新生CIAによる新議会が発足することになった。
NSAをはじめとするGang of Fourが完全に失脚したこの年~2008年が一般的にThe Collapseの終わりとされている。ただ有り体に言うなら、
Gang of Fourのメンバーの中にはすでに崩壊必至の組織を見限り、早々に企業側へと転身するという日和見ぶりを発揮している者もいた。そのため軍部主導で解体されたGang of Fourという組織は、この時(2008年)すでに実体として存在していなかったともいえる。


なお一連のGang of Four騒動でワシントンが混乱に陥っていた時期、多くの自由州が成立した(*)。これは当時全米を席巻していた暴動、ノーマッドをはじめとする怒れる民衆~の鎮圧に、予備役を駆り出す必要があるほど各州が困窮していたためである。
*この時期に成立した自由州
・テキサス:1999年
・アラスカ:2000年
・カリフォルニア:2002年(*)
・ネバダ:2003年
【注釈】*ちなみにカリフォルニアは2012年にさらに南北に分裂するが、2002年に自由州となったもともとのカリフォルニアの体制は、2012年以降は南カルフォルニア(SoCal)に引き継がれている。つまり、もともとのカリフォルニア自由州から北部がさらに独立する形で2012年に分裂したのが北カリフォルニア(NorCal)で、2015年には米国政府からも正式に認可されている。なおナイトシティが属するのはNorCalの方


The Collapseを経たユニバースがなぜ「Dark Future」と呼ばれるのか

1990年に米国で行われた最後の国勢調査では、当時の合衆国総人口として「2億3870万9873人」という数字が出ていた。しかしMICの試算によると、その後の10年間(1990-2000)で少なくとも「1億人」が死亡したとされ、また同時期にノーマッドやZeroes(*)に身を落とした国民の数もおおよそで「2500-5000万人」に達しているとされていた。つまりこの試算が正しければ、2000年の時点で米国国民のうち納税者はわずか「1億2000万人」ほどしかいなかったことになる。これでは国の税制体系が根底から崩壊するのもやむを得ず、国内の何百もの地方都市が機能しなくなった。
*Zeroes:市民権を与えられず路上生活を強いられている人々のこと

こうして2020年に至るまでの間、主要都市を中心に国の復興が進められる一方で、その対象から外れた地方都市は放棄されるがままとなり、文字通り全米中に「ゴーストタウン」が溢れかえることになった。当時の潮流は人々にかつての「西部開拓時代」を想起させ、これは都市部以外に居を設けようとする人口の流出へと繋がっていく。(西部劇の)先住民や牧場主に代わって、ブースターギャングや企業が跋扈する世界~それがサイバーパンクの「Dark Future」なのである。


補足:2077のライフパスシステムと、ポストCollapse世代
ゲーム版2077のキャラクタークリエイトの1つに「Lifepath」システムの実装がすでに明らかになっているが、このキャラクターの出自を決める際の3つの選択肢:Nomad、Streetkid、Corporate...これは「Collapse後の環境で育った若い世代3種」として原作で説明がある。最後にそれについて簡単に紹介:

米国国民にとってCollapseがもたらした最大の衝撃...それは有史以来人々によって育まれてきた家族制度が崩壊したことにある。というのも、ここ60年間の間に全体の80%を占めていた核家族世帯(夫婦2人+子供)のうち、Collapse後も全員無傷だったのはわずか2%に過ぎず、Collapseで亡くなった1億人あまりの内その三分の一は夫か妻だった。これはCollapseを生き延びた人々の約半分が片親を失ったことを意味する。そのためその後18ヶ月の間に孤児となった者は3,000万人に及び、さらにその中の2,000万人は生きる術がなく死ぬか、もしくは戒厳令下のもと必死に生き延びようとするも殺されてしまうか、どちらにせよ悲運を辿ることになった。また生き延びることができた残りの1,000万人の子供たちにしてみても、本来なら青年期に身につけるべき社会的スキルを持ち合わせず過酷な世界に放り込まれる事態に陥ったのである。

こうして戒厳令が発動され社会情勢がますます凶暴化していく中で、2020年を迎える頃には当時の全米国民の実に11%が「家族」を持たず、しかもこういう層は出産率が他と比べて2倍と高かったため、次世代の子供たちの両親がいずれも子育ての知識とスキルを持ち合わせていないというケースが増え「誰が彼らを育てるのか?」という社会問題が浮き彫りになった。

家族制度そのものが過去のものとなった2020年、家族に変わる人々の新しい生活基盤として誕生したのが...
・ネオトライバル(ノーマッドファミリー)
・ブースター(ストリートギャング)
・メタファミリー(従来までの核家族、その進化系。主に企業人がここに属する)
...の3形態。新しい家族の在り方としてこの新種3形態が誕生したことで、Collapse後に生まれた新世代の若者も(生まれ育った環境ごとに)次の3つに分類される:
  • Nomad Children:

    ネオトライバルつまりノーマッドファミリーのもとで育った若者。ノーマッド社会には西部開拓時代にあったようなある種の「名誉(や仁義)」を重んじる風習があり、彼らも同様の気質を受け継いでいる。またノーマッドは自分の子供たちが他所のコミュニティに世話になるのを好まず、例えば企業人が子供たちに高度の教育を打診してもファミリーがそれを良しとしない。
    
つまり基本的にノーマッドは(生き抜いていくために)内部の結束がとても強く、規律を重んじ相手を敬う行いをとても重視しているため、彼らはファミリーからそういった社会規範まで学べる環境にある(逆に「Corporate」な若者がこれらを人から教わることはない)。コミュニティと密接に関わり、身近には生きる手本となるツワモノに欠くこともなく、厳しい社会で生き抜くための基礎的な教育(読み書きや数学など)も十分に習得している。過酷な世界に生きる彼らではあるが、ある意味最も恵まれた環境で育てられているのがノーマッドチルドレン。
  • Street Children
    
一方、ストリートチルドレンはポストCollapse世代としてサイバーパンクの世界では大勢を占める。この背景には当時の(Collapse後の)米国の社会事情が深く関係しており、Collapse後に人々の仕事量が増え子供の面倒をみれなくなる親が増加したこと、全米規模で公立学校が不足するようになったこと…といった要因があげられる。

    彼らがストリートで暮らす時間はその多くが6歳頃までは1日6時間程度だが、これが12歳までいくと1日16時間にまではねあがり、こうした環境で暮らす彼らの実に90%が10歳になるまでにどこかしらのギャングに所属している。ストリート出身の彼らは教育を受けるどころか、ティーンエイジャーになる頃にはすでに死と隣り合わせの日常を強いられる環境に身を置いているといえる。
  • Corporate Children:

    3つ目のコーポレートチルドレンは、ポストCollapse世代の中では少数派ながら最も高度な教育を受けた若者を指す。主に企業人が属するメタファミリーのもとで育った彼らは、幼年期から企業人としての規律を叩き込まれ、企業が有する(修学用)施設での確かな庇護のもと、(集団生活をして)将来のために必要なコミュニケーションスキルや(組織の中で個がどう貢献すべきか…といった類の)行動規範を徹底的に教え込まれる。

    また彼らはギャングとは別の意味で「上にのし上がる」ことが(企業就職後に)不可欠であるため、自分の実績を上げるために仲間と協力する時もあれば、逆に相手を蹴落とす必要に駆られる時もある。また本人に出世願望がなければ、別の人間に簡単に取って代わられ、出世街道からドロップアウトする可能性もある。

    なおメタファミリーは主に事務や技術職に従事する企業人の生活基盤だが、さらに上のクラス(企業経営を担うような役員クラス)の企業人になると上記の内容とは全く異なり、(集団生活ではなく)豪華な自宅で完全個別指導の英才教育を企業エリートとして受けることになる。

 
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ワールドロア2:ノーマッドAtoZ

ここでは(2020時点で)全米に700万人いるとされるノーマッドについて詳しく説明しています。

ノーマッドは2020にある10個のプレイヤーロールの一つでもありますが、と同時にサイバーパンクの世界観を構築する極めて重要な要素の一つとして、彼らの文化や歴史的背景、後に形成される7つのノーマッドネーションなど、原作でも詳しく解説されています。
2077でもプレイヤーの出自(ライフパス)の一つとして選択できるノーマッド。サイバーパンクの世界における彼らの役割とは何なのか(彼らは単なる無法者ではありません!)。原作ソースブックの一つ「Neo Tribes」を参考に、ノーマッド社会の生態についてまとめました。

【注意】以下、ワールドロアをガチで知りたい人向けの内容です


*主な参考資料:Neo Tribes
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【目次】
  • はじめに
    • ノーマッドと定住者の違い
    • ノーマッドがアメリカ社会にもたらしたもの
  • ノーマッドの社会構造
    • ノーマッド・カルチャー
    • ノーマッドの掟
  • 7つのノーマッド・ネーション
    1. Snake Nation
    2. Jodes
    3. Blood Nation
    4. Meta Corp
    5. Aldecaldos
    6. Thelas Nation
    7. Folk Nation
    8. Raffen Shiv


■ はじめに

サイバーパンクユニバースの黎明期(1990年代初頭)、米国では当時の社会情勢を背景にいくつかの「クラン/コミュニティ」がすでに結成されていた。このノーマッドの「起源」ともいえる集団は、1993年には早くも(全米のメディアや企業から)「ノーマッド・ファミリー」として認知され、その後1994年のCollpaseを皮切りに(インフラの瓦解、企業進出による土地買収などで)ホームレスに身を落とさざるを得なくなる者が急増すると、同じ環境にいる者同士が互いに結束して発生した無数の「ノーマッド」が全米各地に溢れかえることになった。

Collapseの最盛期にはその数が2,000万人にも達していたともいわれるノーマッドは、2020年現在(その数は減じたものの)今でも全米に700万人いるとされている。全米を襲った悲劇~The Collpase~によって誕生し、己の技術と決断力、不屈の精神で困難を乗り越えてきた彼らの足跡は、崩壊した全米各地の都市の再建や、マグレブ(全米横断鉄道)の建造にまで及ぶ。
現在(2020)のノーマッドカルチャーは活力みなぎる鮮烈なものとなり、企業が跋扈するサイバーパンクの世界にあっても衰えることを知らない。ある者はノーマッドを評してこう云う~「彼らはアメリカの未来だ」と。

・・・​

一般的に、ノーマッドは各種メディアなどからステレオタイプ的に「野盗」~殺しや盗みを厭わない荒くれ者~ といった扱いを受けることが多い。しかし実際にそのような凶行に及ぶノーマッドは極めて少数に限られており、この風評は現実のノーマッドとはかけ離れたもの。実際のノーマッド社会では『勤勉実直に働き、ファミリーを大切にする』ことこそが、日々の生活の礎において最も尊ばれている。


ノーマッドとStatics(非ノーマッド)の違い

特定の街に住む定住者のことをノーマッドのスラングで「Statics」と表現されることがあるように、ノーマッドは基本的に「移動民族」的な集団である。ディストピアなサイバーパンクの世界では、通常特定の都市にみなが寄り集まって居を築くのが普通だが、ノーマッドの目にはそういう「Static」な環境が、権力に与したある種の抑圧的な存在として映っている。
とはいえ、ノーマッドとStaticsたちが完全に切り離された関係ということではなく、日々の生活の中でノーマッドが(キャンプ先の定住者たちに)技術提供をしたり、稀にではあるが資金提供をすることもある。

ノーマッドがアメリカ社会にもたらしたもの

2000年頃を境に、全米では各地で都市再建のプロジェクトが最盛期を迎えていた。これに従事したノーマッドたちは全米各都市の修復に精を出し、一方これらの仕事にあぶれるか、もしくは政府や企業からの仕事を拒んだノーマッドたちの方も、Collapseで放棄された無数のゴーストタウンへと移り住み、資材をかき集め、電線を引いて電力を確保するなど、街の復興に力を注いだ。

また一般社会における物資の運搬でも当時のノーマッドには需要があった。彼らにとって日々の生活に不可欠である個々の武装や、ファミリーが有する輸送用車輛が、当時の運送業界にはうってつけの存在で、道中の面倒が日常茶飯事のノーマッドなら無事相手先に物資を届けてくれるという安心感だけでなく、ハッキングを恐れてHDを直接運搬してほしいクライアントが急増するなど、時代も彼らを求めていた。
ただ皮肉なことに物資運搬におけるノーマッドの評判が高まるにつれ、密輸をはじめとする闇取引にも拍車がかかったため、当時全米中で違法取引が拡大した背景にノーマッドがいたことは否めない。

他にもノーマッドはその生活形態のために(他所から自分たちの物資を強奪されないように)日常的な自己武装に余念がないことから、ノーマッドの熟練ウォーリアーなどはその経験を見込まれ、傭兵もしくは警護職などでも重宝された。また食糧難が続いていた当時のアメリカにおいて、季節ごとに土地を変え農作業に従事するノーマッドもいれば、カーニバルや巡業などで人々に娯楽を与えるノーマッドなどもいた。

このように当時のアメリカ社会におけるノーマッドとは社会全体と密接に関わる重要な存在だったのである。


■ ノーマッドの社会構造

ノーマッドはその構成人数に従って、おおまかに(誤差あり)以下のようなグループに大別される:
  • ファミリー:構成人数(10~100人)
    ノーマッド社会を形成する最小単位。Collapse後に環境を同じくする者同士が結成した最初の集合体
  • クラン:構成人数(300~1200人)
    いわゆるネオトライバル(ワールドロア1参照)と呼ばれるのがこれ。近隣の各ファミリーが集結したもの
  • トライブ:構成人数(10,000~30,000人)
    ノーマッドを文化的背景(個々のルーツや得意とする職種など)からグループ分けしたもの
  • ネーション:構成人数(100,000~1,000,000人)
    志を同じくするファミリー/クラン/トライブが集まって2017年に成立した。全米に7つあり、年に数回全てのネーションが集まって会合が開かれる

ノーマッド・カルチャー

多種多様な文化が混在するノーマッド社会には7つのノーマッド・ネーション(後述)という大きな集合体が存在するが、それとは別に文化的側面からルーツごとに以下の6つに分類することもできる:
  • アグリパックス
    アグリ、つまりAgriculture(農業)にかつて従事していた人たち。移住や出稼ぎ出身の者が多く、ノーマッドの約25-30%がここに属する。他のノーマッドとは違い、彼らは派手な移動用車輛よりも安上がりで実用的なものを好む
  • ネイティブ・アメリカンズ
    アメリカ先住民をルーツに持つグループ。白人との長く暗い歴史を持ち、現代に至っても連邦政府から不当な扱いを受けていた彼らは、はなから外部の協力をアテにしておらず、ある意味Collapseが来ても動じなかった集団。ただCollapse後に保留地が機能しなくなったのは彼らも同じで、その後は他のグループに啓発されるかのように(彼らにとっては先祖返りともいえる)ノーマッド生活に身を委ねることになった
  • ジプシーズ
    200年以上の歴史を持つ北米のロマがルーツ。彼らの多くは(その歴史背景もあって)社会から隠れるようにして(盗みや詐欺などで)生計を立てている。かつて自分たちの天敵だった政府や警察は今や軽犯罪には目もくれず、ひたすら巨大企業にへつらうばかり。Collapse後の混乱した社会はまさに彼らにとって理想郷である
  • カーニーズ
    サーカス・ピープルと呼ばれることもある彼らは、かつて巡業などを生業にしていた文字通りCarny(=カーニバル)な人々をルーツに持つ。前述のジプシーズと混同されることもあるが、実際の彼らの生活形態は全く異なり、巡業生活で常に余所者扱いされ、それが彼らの一層の団結へと繋がった。また90年代ではさほど需要のなかったサーカスも、Collapse後の社会では大衆が求める娯楽として再び脚光を浴びる存在になっている
  • バイカーズ
    彼らのルーツはCollapse前から全米に存在していたヘルズ・エンジェルスに代表されるバイカー集団であるが、当時のメンバー(特に年配者)の中には定住生活を望む者も多く、Collapse直後からノーマッドだったわけではない。むしろ時代が進み違法取引が横行するようになってから、彼らのカルチャーが改めて注目され(”反骨”の象徴である)バイクを相棒にノーマッドと化していく者が増えていった
    • なおバイカー・ノーマッドは、集団になると一転して予測不能の危険な存在と化すため、他ノーマッドからも恐れられてる。例えば「一人が売られた喧嘩は全員で買う」という独自の掟のもと、彼らの周辺では些細な諍いでも大事に至りやすい。そのため彼らの行いが、ノーマッド全体の風評~ステレオタイプなネガティブ論~に繋がっているのも事実
  • その他
    上にあげた5つ以外にも、ノーマッドにはその他多くのマイノリティが存在する。スパニッシュ系移民をはじめ(ハイチやジャマイカなどの)カリブ諸島、アフリカ、中国、他にも太平洋諸島からの移民など。自分たちのルーツに拘らないファミリーも多いが、その判断はあくまでファミリーに委ねられており、ノーマッド社会に多くの異文化が混在していることに変わりはない

ノーマッドの掟

以上、一括りにノーマッドといっても彼らが従事している職種は多岐にわたり、グループによってそのカルチャーも異なるが、その一方でノーマッドには共通して次のような一般的な「掟 (Code)」が存在する:
  • クラン、そして何より自分のファミリーを守り敬うこと
    Protect and respect your clan, and above all, your family.
  • 約束は必ず守ること
    Your word is your bond.
  • 何事もクラン内で分け与えること
    Share with your clan folk.
  • クラン内では個人の所有物やプライバシーを尊重すること
    Respect the privacy and property of your clan.
  • 決してクランに迷惑をかけてはならない。仕事に見合った適切な報酬を受け取ること
    Never cause trouble for your clan.Take only a fair wage for a day’s work.


■ 7つのノーマッド・ネーション

2017年に全米で成立した7つのノーマッド・ネーション。
全米700万人のノーマッドの実に半数が、以下に紹介する7つのいずれかに属して(支持して)おり、共通の敵/目標などを基準としてそれぞれ独自のカラーを持つ。以下簡単に紹介:

*原作に掲載されている7ネーション各代表のイラスト
  1. Snake Nation
    ノーマッド最大のネーション。代表の「Freddie Douglas」はユタ州出身の元麻薬ディーラー。
    
全7ネーションの中で最も多様性に富み、手がける仕事も幅広い。また各グループの自治に重きを置いているため内部の結びつきは割と”緩い”が、非公式ながら「どこにも属さないノーマッド」の代弁者がSnakeだとも言われる。なお「Snake」という名称は「アメリカ独立戦争」に由来し(*1)、モットーである「Don’t tread on me (*2)」も蛇にちなんだもの(*3)。
    • *1:アメリカ建国の父の一人、ベンジャミン・フランクリンの有名な言葉「結集せよ、さもなくば死だ」~ ”英国からの独立を勝ち取るために国民は団結しなければならない”というこのメッセージには、共に描かれた”蛇”のイラストがある:参考
    • *2:Don’t tread on me = 俺(の自由)を踏みにじるな!
    • *3:こちらにあるガズデン旗を参照

  2. The Jodes
    南部(オクラホマとテキサス)や中西部(カンザス)で活動していたJodeファミリーを起源にもつ本ネーションは、地球環境の悪化に苦しめられノーマッドになった農業従事者たちの集合体。
    代表者の「Malachi Jode」は「最初のノーマッド」と呼ばれることもあるほど、クランの形成と拡大に寄与した人物(上述の一般的な「ノーマッドの掟」の骨子を起草したのも彼)。ちなみにJodesという名称は単に彼のクランが由来というだけでなく、小説「怒りの葡萄」のオーキー(オクラホマ人:主人公の名前がJoad)を連想させる。

    現在のJodesは自分たちの繁栄が(抑圧された人間にはない)不屈の精神によるものだという強い自負があるため、自分たちが「Statics」であると思われることをとても嫌う。そのため彼らが都市圏内にキャンプを張ることは決してない。

  3. The Blood Nation
    本ネーションの起源である「The Bloods」は、1995年頃からマイアミで台頭した元は犯罪組織。
    
ネズミとサーカスとの関係(詳細はドキュメント1999年参照)を経た2008年、Lazarus Groupがディズニー施設を買収し彼らはそこからの退去を迫られる事態に陥る。この時、代表の「Malcolm Kent-Smith」の言葉に従ってオーランドを去ることを決断した(Lazarusの前に死を選ばず、ファミリーの存続を優先した)ことが、彼らが(かつての犯罪組織ではなく)ノーマッドとしての第一歩を踏み出すことになった始まりとされている。

    拠点を再び(オーランドから)マイアミに移した現在では、多くの同胞が(ディズニー時代に自ら製造した巨大トラックやエアシップで)全米規模の巡業に勤しんでいる。

  4. The META (aka MetaCorp)
    本ネーションの結成はわずか9年前の2011年。第二次中米紛争が終結した2010年に、現地に取り残された兵士の故郷への帰還(Long Walk)をきっかけに成立した。唯一「企業」として組織されており、ノーマッドの中でも圧倒的な武力をほこる。

    もともとのMetaファミリーはその大半が元軍人で構成されており、代表者の「Jonathan Meta」も1960年生まれの生粋の軍人(詳細はドキュメント1990年参照)。成立の経緯を見ればわかる通り(*)、彼らは怒れる兵士の集合体であり、自然発生的に形成された他のノーマッドとは趣が異なる。しかしLong Walkからの帰還兵を支え続け、またTribulations(ドキュメント2013年参照)と呼ばれるノーマッドの苦しい時期に多くの雇用を生み出し、MetaCorp発足から7年間で3億ドルの経済効果をノーマッド社会にもたらした。そのため現在ではメキシコ湾に浮かぶ巨大戦艦MetaKey(*)を拠点に、ノーマッド・ネーションの一つとして確固たる地位を築いている。
    • *:
どちらも詳細はドキュメント2011年参照

  5. The Aldecaldos
    LAで結成された正真正銘「最初のノーマッド・ファミリー」が、本ネーションの起源であるAldecaldo。

    当時LAのスラムに蔓延っていたギャング(とそれに無関心な政府/警察)…これに業を煮やした「Juan Aldecaldo」というヒスパニック系移民の呼びかけに近隣コミュニティが呼応し、1992年LA東部の一角に誕生した(詳細はドキュメント1992年参照)。
    
現在の代表は「Santiago Aldealdo」といい、Juanが臨終時に後継者として自ら彼を指名した。LA生まれのクラン育ち、Long Walkからの帰還兵でもあるSantiagoは、2020の「Never Fade Away」にも登場している(*)。
    • *:
Alt救出でジョニーに手を貸した時(2013年)はまだ「Aldecaldo」の名前を継いでおらず、単に「Nomad Santiago」という名で出てくる。また新作のREDにはTrace Santiagoという彼の息子(ただし職業はノーマッドではなくメディア)も登場する

  6. Thelas Nation
    全米にCollapseが直撃し、法や貧困、ギャングや政府から追われる者の中には、海や河川へ活路を求める人もいた。こういったボートピープルな連中によって結成されたのがThelasネーションで、Collapseで海軍や沿岸警備隊が以前のような厳しい巡視を行えなくなったことを背景に、彼らはその数を増し、瞬く間にミシシッピデルタや五大湖周辺など全米中のあらゆる水源で勢力を広げていった。
    ジョン・シルバーにあやかって「Long John」と呼ばれることもある代表の「John “Silver” Wilson」のもと、現在の彼らは沿岸部周辺の建設事業や避難民の輸送の他、密輸や放送事業(沖合にある通信機にメディアからの需要がある)などでも収益を上げ、幅広く活動している。

  7. Folk Nation
    1970年代辺りからすでに全米有数の犯罪都市だったシカゴでは、90年代半ばに全米最大ギャングの一つとしてFolk Nation(*)が台頭していた。
    当時彼らは大規模な(闇取引の)流通網を有し、Collapse後はそれを各地の救援活動(人の移送など)に役立てる傍ら、(こっちが困った時は今度はそちらが助けてくれ…的な)口約束を結んでいた。これが功を奏したのが2012年のシカゴBiobplague。当時多くの幹部連中が被害に遭い組織崩壊の危機にあったが、カンザスシティから「Mr.Cool (現代表)」が救援にかけつけ、その後は「ノーマッド」として再建されていくことになった。

    現在は以前のような犯罪稼業からは足を洗っており、運送業を主な生業にしながら各地を転々としている。ただし、もともと彼らは地元との結びつきが強く、またシカゴが運送業における全米要衝の地でもあることから、多くの者が(シカゴを)生活の拠点に据えて定住したい 〜「Static」な環境に戻りたい〜と願う(7ネーションの中では唯一の)ノーマッドでもある。
    • *:
上述のBloods同様(ドキュメント1999年参照)、本ネーションも実在するシカゴの二大ストリートギャング同盟の一つ「フォーク・ネーション」をモチーフにしていると思われる


  8. The Raffen Shiv
    Raffen Shivは一種のノーマッドであるが、ネーションの1つとして成立しているわけではなく、同族のノーマッドからも忌み嫌われるほど悪の限りを尽くす連中の総称で、そこには「人間以下」という軽蔑的な意味がこめられており、弱者を対象に略奪/虐殺/奴隷化などの凶行を繰り返す反社会性人格者(Sociopath)の集団。
    
Raffenの「社会不適合ぶり」は生半可なものではなく、特に最大勢力をほこる「Wraighs」というグループのリーダー「Dogkiller」は、人間の皮をはいで作った服を身に付けていると噂されるほど。またRaffen内部では圧政が敷かれており、その社会構造は弱肉強食を地で行く(弱き者が家畜のようにトレードされることもある)。

    とにかく一般人からすると全てにおいて嫌悪感を抱かせる存在だが、企業だけは彼らと唯一関係を持ち、時に彼らを利用する(Raffenなら安い報酬で汚れ仕事を任せられるため)。

■ 尚、すでに上述のAldecaldosと(Raffen Shivの)Wraighsはゲーム版2077への登場が確認されている:ソース
 
Last edited:
ワールドロア3:荒坂家の一族

サイバーパンクシリーズの中でも屈指の超巨大企業である「アラサカ・コーポレーション」
日本の荒坂一族が経営するこの悪名高い日本企業は、「赤の時代」に起こった内部抗争によって現在(Cyberpunk Red以降)社内に3つの派閥が存在します。Redの発売で人物関係が若干把握しずらくなっていると思い、ここでは事前情報として荒坂一族に焦点をあて、その中でも特に重要な主要キャラクターを数名ご紹介することにしました。
尚、本項はあくまで荒坂一族の”人”に注目したものであって、アラサカという企業そのものを紹介する内容ではありません。ご注意を。

┏ 1919:荒坂三郎が誕生
┣━━━━━━ 1945:第二次世界大戦が終戦
┣ 1960:Sasai Arasaka(三郎の父)が死去(三郎がアラサカの社長に就任)
┣ 1980:荒坂敬(長男)が誕生
┣ 1995:荒坂頼宣(次男)が誕生
┣━━━━━━ 1996:The Collapse(米国)
┣ 1999:荒坂華子(長女)が誕生
┣ 2008ごろ(生年の詳細は不明):荒坂美知子(敬の娘)が誕生
┣━━━━━━ 2023:第四次企業戦争でアラサカタワーが崩壊
┗━━━━━━ 2026-2030:鳩派(華子)/雉派(美知子)/鷹派(頼宣)の内部抗争が勃発​

【注意】以下、ワールドロアをガチで知りたい人向けの内容です


*主な参考資料:Corporation ReportFirestorm StormfrontFirestorm ShockwaveCyberpunk Red
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■ 荒坂三郎
  • 第二次世界大戦

    裕福な武士家系の一門として生まれた荒坂三郎は、第二次世界大戦(1939-1945)の真っ只中、1942年のソロモン諸島で繰り広げられたガダルカナル島の戦いラバウル航空隊の一員(いわゆる零戦の乗組員)として参戦し、当時まだ23歳の若年ながらすでに敵兵20名を殺害するなど、天皇陛下に忠誠を誓う「侍の末裔」として名を馳せていた。

    しかしながら、米軍のF4Fワイルドキャットを追跡中に敵方の砲撃に遭遇し、左腕に銃弾を喰らっただけでなく、損壊したキャノピーの破片が左目を直撃。その後も意識混濁の中、1万5千フィートの高さで機体の制御を失いながら、なんとかラバウル基地まで生還を果たすものの、すぐに意識を失って病院に運ばれた。

  • 

終戦


    三郎が意識を取り戻した時、すでにそこは東京で、自分の左腕と左目に生涯回復の見込みがないことを初めて知らされる。腕の切断までには至らなかったものの、すでに航空部隊からは除籍処分となっており、即刻日本へと送還されていたのである。戦死できず体が不自由なまま生き残ったことに強い憤りを感じていた三郎に追い打ちをかけるように、1945年8月15日には日本敗戦の玉音放送が公表され、彼はそれを聞いて一時は自決しようとした。だが屋敷の桜の木を見てこれを思いとどまり「今回軍事的に破れはしたが、次は商業的に日本が世界の頂点に立つのだ」という新たな誓いを心に秘めるようになった。

  • 

戦後

    
当時日本の経済/産業は文字通りどん底状態にあったが、三郎はこれを「将来の繁栄のために用意された白紙の状態」という具合に捉えていた。というのも彼の父でアラサカ・コーポレーションの創業者である「Sasai Arasaka」は万事抜け目のない人物で、早くから日本の敗北を予見し、当時の軍事産業のどさくさに紛れて、アラサカが有する財産の大部分を在外資産や海外口座に運用して秘密裏に管理所有していた。また三郎もこの隠し遺産がいずれ自分の所に回ってくることを十分承知していたため、彼は桜の木の前で悟った日を皮切りに、新たな日本国再建へ向けて、政治/外交/歴史など、あらゆる素養を身につけるべく猛勉強を開始したのである - 来るべき時(自分が社長になった時)に備えるために。



  • 社長就任

    
父「Sasai Arasaka」が亡くなった1960年、41歳になっていた三郎は満を持してアラサカ・コーポレーションの社長の座を引き継いだ。当時のアラサカは比較的まだ小規模経営で、(Sasaiが戦時中に貯めこんでいた隠し財産を使って)国際貿易商としての会社再建の最中でもあった。社長に就任した三郎はこの方針を継続する傍ら、まず会社全体をより自分の理想にふさわしい企業体制へと作り変えることから着手。日本を再び軍事的/経済的一大強国として復活させるには、政治的圧力といった目に見えない権力も不可欠で、現在の会社規模では金銭的にも商業的にも全然物足りない…三郎の壮大な計画を成功させるには、長期目線での企業経営が余儀なくされ、彼もそれは十分承知していたのである。



  • アラサカ・セキュリティー

    
と同時に、彼はこれからの社会において「情報」が大きな鍵を握ることも当時すでに予見していた。「アラサカ・セキュリティー」は三郎のこうした先見性に基づいて立ち上げられた新たな子会社であり、他所に警戒されることなく、必要な情報を適宜入手するための部署…これがこの部門立ち上げの元々の意図である。警備業務には高度に訓練された隊員と必要十分な人員が確保され、電子情報の保全/保護なども専門とするアラサカ・セキュリティーは、その後の25年間で少しずつ知名度を上げ、最終的には業界随一の評判を得るまでに至った。1990年代中頃には、世界中の有力人物/大手企業がこぞってアラサカ社員を雇い、その契約数は数千規模にまで達していたほどである。こうしてアラサカ・セキュリティーはアラサカ・グループの中でも最も重要な3つの子会社の一つ(他の2つは銀行業と製造業)として企業経営の中核を担うまでに成長していった。



  • 暗黒の未来(Dark Future)に突入


    自身の才能と絶え間ない努力によって得た三郎の先見性は、1994年に起こった世界株式暴落や1996年の米国崩壊(The Collapse)でも発揮された。当時の三郎は老齢による自身の衰えをそれなりに危惧してはいたが、それでも彼の老獪さは健在で、適切な投資と巧みな情報操作によってこの惨事を切り抜けた。当時の世界株式暴落で利益を上げた企業はほとんどいなかったにも関わらず、その数少ない企業の一つだったアラサカは、これを機にそれまでの「大企業」から世界でも屈指の「超巨大企業」へといよいよ変貌を遂げていくことになる。



    企業が社会をコントロールするようになったポストCollapse(暗黒の未来)の世界は、ある意味三郎の夢を実現するのに最適な社会だったとも云える。彼はこの荒廃したディストピアで生まれた新しい社会規範を自らの復讐心にまかせて如何なく利用し、1997年には世界で初めて企業私設軍を結成するや、準軍事産業への進出を決めたアラサカ・セキュリティーを使ってその育成施設を北海道に建設。また競合他社を吸収したり倒産へ追い込んだり、将来性のある中小企業を積極的に買収していくなど、手段を選ばない企業戦略によってアラサカはその規模をますます拡大していった。



    グループ御三家ともいえる「銀行/製造/警備」の3つの主要子会社を中心に、1997年から2020年にかけて多角経営と企業拡大を続けてきたアラサカ社は、現在とてつもないほどの富と権力を掌握するまでに成長した。しかし世界で最もリッチな人物の一人に数えられる三郎の目標はまだ果たされていない。
    2020年で101歳になる三郎は、東京近郊にある(要塞のように警備が厳重な)自宅屋敷からめったに離れることはなく、2010年に脳卒中を起こしてからは車椅子の生活を余儀なくされている。彼の身体は(戦時中に負傷した)左腕と左目と共に最新のサイバネティクスで再構築されているものの、これ以上の手術に耐え切れるだけの健康体は持ち合わせておらず、昔のように元気に動き回ることはもう叶わない。それでも彼の精神は現役時代から一切の衰えを見せず、名目上はCEOの座を息子の敬に譲っているとはいえ、現在もアラサカ社の方針は全て三郎が決定している。敬には自分の経営哲学を徹底的に教え込んでいる最中ではあるが、その日が来るまで彼がアラサカのトップの座を譲ることは決してないだろう。

  • 

第四次企業戦争

    
2022年に勃発した第四次企業戦争(補足情報7参照)では、ミリテクとアラサカがガチで潰し合う大規模な抗争へと発展したため、世界中がその巻き添えを喰らう羽目になったわけだが、最終的にアラサカ軍は窮地に立たされ、最後の砦として逃げ込んだのがナイトシティだった(アラサカによる長期的な投資もあり、ナイトシティは非公式ながら”Arasakaville”と呼ばれることもあるほど両者の結びつきは強かった)。また当時の三郎は東京の自宅(もしくは東京本社アラサカタワー)から息子に指示を出し、事実上アラサカ兵を率いていたのは荒坂敬の方だったため、三郎は(ナイトシティにいた敬とは違い)この抗争後も普通に生き延びることができた。ただし、前哨戦のOcean Warの戦果に満足がいかず「次はアラサカの本当の力をみせつけろ」と息子に告げ、Shadow Warを開始して世界を泥沼の第四次企業戦争に導いたのは三郎本人である。

  • 

荒坂三郎とは

    
彼の性格を一言で表すなら…かつて(戦前)の強大な日本国を再び取り戻す、これがこの世で最も処世術に長けた自分の使命だと信じて疑わない…そんな男である。そのための労を惜しむことなど一切なく、自分の夢を実現するためだけに生きている。アラサカ帝国を築き上げることに没頭し過ぎていたために、後継者のことを考える暇すらなく、60代を過ぎてから初めて自分の子供を授かったほど。また権力志向が極めて強く、日本の伝統的な価値観を至上のものだと考えており、屋敷の内装も日本古来の様式で固められ、現代的な備品は一切ない。

    そんな自らのパーソナリティを、三郎は自分の死期が訪れた時にAI化しようと企んでおり、そのために必要な医療用器具は24時間体制ですでに東京本社に用意され、三郎に何かあった時にいつでも専用のチームが駆けつけられるよう万全の体制が敷かれている。
    • 【注釈】なおゲーム版2077でも齢158にして今だに現役な模様(参考


■ 荒坂敬
  • 60歳を過ぎるまで子作りすら忘れて仕事に没頭していた三郎には、2人の息子と1人の娘がいる。荒坂敬は三郎の長男にして、アラサカ帝国の御曹司であり、父三郎が最も信頼を寄せる懐刀のような存在でもある。三郎の後継者として幼い頃からスパルタ教育を課されてきた彼は、父を除けば誰も比肩できないほどの経営/金融/投資に関する知識を有し、また(アラサカの実権はまだ三郎が握っているとはいえ)齢40(2020時)にしてアラサカのCEOを務め、彼が持つ企業経営のノウハウもすでに申し分ない。父三郎の経営方針と社会に対するアラサカ社の影響力を熟知している敬にとって、国粋主義を地で行く父の夢はそのまま自分の夢でもあり、たとえ敬愛する三郎が亡くなったとしても父のやり方を貫くことに変わりはない。

  • 

荒坂敬は父親ほど猪突猛進タイプではないが、その代わり計算高く冷徹で、効率を何より重視する。自らの想像力や閃きに基づいて時には社運を左右するような決定を下す三郎に対して、敬は常に冷静でいることが意思決定において何より重要だと考えており、家族やごく親しい友人を除いて彼が感情を表に出すことはめったにない。父三郎と異母妹の華子のことを敬愛してやまない彼は、家族のために常に最善の努力を尽くそうと日々奔走している。
    
父の三郎が(その健康状態を鑑みて)ある種の自宅監禁状態を強いられている中、現在(2020)の敬は休む暇もなく世界中を飛び回り、会議に明け暮れ、取引先との交渉にも余念がない。彼はまだ自分が未婚で子供がないことに一抹の不安を感じてはいるが(下記注釈参照)、自分の周りには常に重装備のエスコートが目を光らせているので、中々そういう機会に出くわさないのも事実である。
    • 【注釈】敬に子供がいないというのは原作2020までの設定で、最新作「Cyberpunk Red」では美知子という娘がいることが判明している。詳細は後述「美知子」の項を参照

  • 

第四次企業戦争

    第四次企業戦争(補足情報7参照)の前哨戦ともいえるOcean Warの頃から、敬はすでに三郎からIHAG社にまつわるオペーレションを任され、彼が事実上アラサカ兵を率いていた。その後Shadow War、Hot Warを経て徐々に戦況が悪くなり、最終的にアラサカ兵はナイトシティへ逃げ込むことになるが、敬は当時のNorCal(北カリフォルニア)知事「Denise De La Vega」や米国大統領「Elizabeth Kress」との交渉でナイトシティの治外法権を主張するなど、最後まで徹底抗戦を続けていた。こうした状況下で行われたのが、第四次企業戦争でミリテクがナイトシティのアラサカタワーを襲撃する(アルファーチームとベータチームによる)”最終ミッション”である。詳細は補足情報7、もしくは邦訳版の翻訳チームの一人「縦野降雪」さんによるこちらの記事にも詳しいため割愛。
    • 【注釈】荒坂敬は第四次企業戦争で死亡するため、ゲーム版2077にはおそらく登場しないものと思われる

■ 荒坂頼宣(鷹派)
  • 三郎の次男である荒坂頼宣が初めてアラサカ社の実態を父から聞かされたのは、彼が21歳で東京大学を卒業してすぐの頃だった。この時父三郎は自宅にある私室へと息子を招き入れ、改めてアラサカ・コーポレーションの何たるかを彼に伝えたのである。しかし頼宣は長兄の敬とは違い、父の経営方針に同調するどころか、この打ち明け話に背筋が凍ってしまい、彼の卒業祝いが開かれた自宅での晩餐の後、そのまま屋敷を飛び出し行方をくらませてしまった。

  • それから4年後 - 25歳になった現在(2020)の頼宣は、東京近郊で活動するノーマッド「鋼鉄の竜 (Steel Dragons)」を率いて、反アラサカ活動に明け暮れている。夜になれば仲間と街に繰り出して乱闘騒ぎを起こし、アラサカ社員を急襲した機に乗じて機密情報を盗み出すなど、彼が知るアラサカ関連施設の情報を存分に活かして活動は続けられた。

    と同時に、当時の頼宣は反アラサカ活動を更に推し進めようと、暇を見つけては世界中を回り、アラサカのライバル陣営と会合を開いて活動費用や装備の援助を要請するなど、地道な交渉にも精を出し、徐々にではあるが着実にその活動規模を拡大していった。彼にとって相手がストリートだろうと企業だろうと臆するものは何もなかったのである。
    • 【注釈】なお頼宣の(2020時の)キャラクターロールは「ロッカーボーイ」であるが、これは彼がミュージシャンということではなく「民衆を扇動できるほど」強いカリスマ性(リーダーシップ)を持っていることを意味する(ロッカーボーイというのは必ずしもミュージシャンである必要はない:参考

  • 一方、頼宣の背信行為を知り悲嘆に暮れる三郎であったが、アラサカ帝国のためには息子を野放しにできないことは明白で、長兄の敬にいたっては一族を裏切った弟を許すことができず、弟の抹殺を心に誓っていたほどである。逆に華子の方は(注:彼らの母親は同じMichikoで、敬とは違って異母兄妹ではない)頼宣に特別の結びつきを覚えるほど兄のことを愛していた。華子本人は知らなかったが、実は頼宣の方も三郎の束縛からどうにかして妹を解放してやりたいと思っていたほど二人の絆は強く、「Net」を介して月に一度は連絡を取り合う仲だった。


  • 

第四次企業戦争

    前哨戦であるOcean Warの戦果を不服とした三郎の号令のもと、アラサカはミリテクとのShadow Warを開始し、本格的に第四次企業戦争へと突入していくことになるが、当時事実上アラサカ兵を率いていた長兄の敬は、弟の頼宣が行方をくらまし「鋼鉄の竜」を率いて反アラサカ活動を続けていたことに対して深い懸念を示していた。ミリテクが頼宣を利用してアラサカの機密情報を入手する恐れがあったためで、彼はなんとしても弟を抹殺する必要があったのである。

    しかし実際の頼宣はアラサカの情報をミリテクに流すことはしなかったものの、代わりに国内のアラサカオフィスを国有化すべく日本政府に情報を提供していた。これを知った敬はついに決心を固め、弟を最新のソウルキラーに取り込んでしまう。
    • 【注釈】
原作ではその後の最終ミッションで、キャラクターがどちらをストレージに保存するか(頼宣のエングラムかアラサカのデータベースか)選択を迫られることになる。詳細は補足情報7参照

  • 

赤の時代

    最新作「Cyberpunk Red」で明らかになった新情報の一つに、上で紹介した「ソウルキラーに取り込まれてしまった頼宣」は本人ではなく、彼の影武者だったことが判明している(第四次企業戦争中の頼宣は誰にも見つからないよう身を隠していた)。ただし、赤の時代になっても彼の反アラサカ体質は一切変わっておらず、三郎(雉派)がアラサカを掌握している限り、打倒アラサカをやめるつもりはない。2026-2030年(具体的な年日は不明)にアラサカでは社内が3つの派閥に分かれる内部抗争が勃発しているが、頼宣は「鷹派」と呼ばれ、華子の「雉派」と美知子(敬の娘)の「鳩派」との間で3者対立が深刻化している。

    • 【注釈】赤の時代(Time of the Red)というのは、第四次企業戦争が終了した2025年から2045年に至る戦後復興期のことを指す。
      
第四次企業戦争はナイトシティのアラサカタワーで核兵器が爆発するという大惨事にまで発展したが、この被害に苦しめられたのは米国だけではなく、世界各地で衛星軌道上のマスドライバーから爆撃が続けられるなど、地球規模で深刻な被害をもたらしていた。戦後の世界では、このような戦場の焼け跡から発生した残骸や粉塵の影響で、大気が奇妙に赤く染まり出すという現象が(向こう2年間にわたって)世界中で発生し、美しい朝焼けや夕焼けはその後10年目にすることができなくなった。この時期(2025-2045)のことを人々が「赤の時代」と呼ぶようになったのは、戦後の復興が進むにつれてこの怪現象は徐々に薄れていったものの、赤い霞がその後も人々の心に強い印象を残したことに由来する

  • なお事前情報として、頼宣はゲーム版2077にも登場することがすでに明らかになっているが(参考)、doopeさんの記事によると「頼宣が三郎の傀儡に近い(アラサカの)後継者となっている」との情報もあり、そのあたりの経緯については実際に2077をプレイしてみるまで一切不明。

■ 荒坂華子(雉派)
  • 2020年現在21歳になる荒坂華子は、三郎が80歳の時にもうけた唯一の娘であり、目に入れても痛くないほど父から溺愛されて育った。
    • 【注釈】彼女の母親「Michiko」は三郎の3番目の妻で、産後の肥立ちが悪く、娘を産んですぐに亡くなった(後述する敬の娘「美知子」とは別人)。なおMichikoは頼宣の母親でもある(頼宣と華子は実の兄弟)

  • 華子を得た当時の三郎はすぐに愛娘の可愛さに魅了され、厳しい外界で娘が決して傷つかぬよう、東京の自宅屋敷に閉じ込めて彼女を育てようと考え、信頼を寄せる家庭教師を自宅へと呼び寄せて、つきっきりの教育を娘に施すことにした。そのため現在(2020)の華子はすでに成人しているにも関わらず、今でも自宅屋敷から外へ足を運ぶことはめったになく、たまに外出しても鉄壁のエスコートが彼女の周りを取り囲んでいる有様である。
    
このような環境の中、完全に社会から隔離されて育った華子にとって、”外界”を知る最大の方法が「Net」だった。三郎は愛娘に社会(もしくはアラサカ社)の「ドス黒さ」を決して悟らせまいとしていたが、当の華子本人はNetでの様々な体験をもとに、父が自分には見せようとしない”外界”の真の姿を徐々に感じとるようになっていた。
    • 【注釈】ちなみに華子の(2020時の)キャラクターロールは「ネットランナー」

  • 愛嬌にあふれ聡明な女性へと成長した現在の華子は、これまで三郎の過保護ぶりに悩まされ続けてきたものの、それに対して父に不平を並べたことは一度もない。また企業間同士の結びつきを強めるために、父がいずれは政略結婚の道具として自分を利用するだろうことも承知している。だが彼女の内に秘めたる本心は、その日が来ることをひたすらに恐れ、父を傷つけたくはないという気持ちとは裏腹に、三郎の死後は自立した生活を送ろうと固く心に誓っている。また異母兄の敬との関係も彼女にとっては窮屈なもので、兄は一方的に自分を溺愛しているが、華子本人は敬のことを冷酷で油断ならない人物だと考えている。

  • 

赤の時代

    第四次企業戦争で屈辱的敗北を喫し、敬を失っただけでなく米国から追放処分すら受けてしまったアラサカは、その後国内で企業の立て直しを図るようになるのだが、この時期(赤の時代)名目上アラサカのトップにいたのが華子である。2026-2030年(具体的な年日は不明)に起こった内部抗争で、Cyberpunk Red以降アラサカ社内には3つの派閥が存在するようになるが、華子が率いる「雉派」はこれまでのアラサカ(三郎がトップ)の流れを汲む主流派勢力のことを指す。要は戦前の敬の立ち位置に華子が新たに収まっただけともいえるが、敬のように権力第一主義で企業拡大を図っていた時とは違い、ネットランニングに長けた華子のもと(三郎のビジョンに基づいた)経営の安定化を志向する傾向も見られる。

  • なお華子もゲーム版2077に登場することがすでに確認されている(参考)。

■ 荒坂美知子(鳩派)
  • 荒坂敬の一人娘で三郎の孫にあたる荒坂美知子(旧姓)は、本名を「Michiko Sanderson」といい「Danger Girl (後述)」の代表。詳細な生年は不明ながら、おそらく彼女が17歳の頃(もしくはその前後)に第四次企業戦争が終了したものと思われる(2008年生まれ)。
    2045年時点でアラサカ内に存在する3つの派閥のうち、美知子を中心に形成された勢力は「鳩派」と呼ばれる。彼女自身は一族のゴタゴタに巻き込まれるつもりは本来ないのだが、鳩派内部では三郎亡き後のアラサカの後継者として美知子が最も相応しいと考えている。

  • 

赤の時代

    当時のアラサカは(事の真相はともかく)ナイトシティで核兵器爆発を引き起こした戦犯だと(米国政府から)公にされていたため、世界中がアラサカを呪い、米国生まれの美知子も(彼女にとっては異国の地である)日本へ強制送還されてしまった。しかし当時の美知子はまだ若く可憐さに溢れたティーンエイジャーだったとはいえ、とてもIQが高く、現状を打破するためには自分が強くなるしかないと悟っていた。また彼女が「悪の帝国」の一族として扱われることに当時多くの若者が同情を寄せており、彼女にはすでに何千もの支持者が世界中にいた。
    こうした中、美知子は大胆にも当時の米国大統領「Elizabeth Kress」に会うために一路ワシントンへと乗り込み、そこで「自分の家族がしでかしたことを詫び、自身が(米国民として)米国で暮らせるよう」大統領に嘆願した。これが認められて彼女は高校生活を米国で終えることができ、その後はスタンフォード大へと入学。そこで犯罪学を徹底的に学び、3年後には卒業して「Danger Girl」を起業する。



    美知子が立ち上げた「Danger Girl」という会社は、表向きはセレブなどハイクラス層の顧客を専門にする「私立探偵事務所」である。頭脳明晰で天真爛漫な美知子のキャラクターは、その魅力の影に犯罪学者としての肩書きが隠れてしまうほど、ハリウッドやヨーロッパなど世界各地のパーティー会場を虜にし、彼女の裏の活動など誰一人知る由もない。... 実はかつての米国大統領「Elizabeth Kress」との会談の際に、美知子は米国への帰国を認める条件として、「米国内に残るアラサカ残党の居場所をつきとめ、彼らのオペーレーションを阻止する」という使命を与えられていたのである。

    美知子のクライアントは高額請求を歯牙にも掛けないリッチ層ばかりだが、Danger Girlとしての企業体制は入念に整備されている。Kress大統領による不正資金の提供を受けているだけでなく、ナイトシティの新Westbrook地区にある放棄されたアラサカ地所内の極秘データベースへのアクセス権まで与えられているからだ。またかつてはアラサカ内でも屈指のソロの1人だった「Kenichi Zaburo」が美知子の専属ボディーガードとして(4歳の頃から)四六時中ついて回り、警護面でも抜かりはない。

    ここ20年の間にDanger Girlはセレブ相手に輝かしい業績を残してきたが、これらは全て美知子の血縁に端を発する因縁の相手 - アラサカへの諜報活動、その隠れ蓑に過ぎない。ピンクの可愛らしい企業ロゴに騙されて、Danger Girlの行く手を阻もうものなら、必ずシッペ返しを食らうことになるだろう。

    美知子は会社のパートナーであるMarc Sandersonと結婚したことを機に、本名を「Michiko Sanderson」と改めた。30代になった現在(2045年)も、彼女の魅力は10代の頃と変わらず少しも衰えていない。あらゆる社交界で常に目を引く美知子は、クライアントのいかなる依頼にも柔軟に対応し、Danger Girlを一大探偵事務所へと成長させた。

    しかし洗練された大人の女性に成長した美知子の裏の顔は巧妙に隠されている。彼女が従えるボディーガード「Kenichi Zaburo」は、あの伝説のソロ「モーガン・ブラックハンド」との戦いで唯一引き分けに持ち込んだことがあるほどの男。
もし美知子があなたにウィンクしたら、やるべきことはただ一つ。逃げろ。

  • なお事前情報として、美知子がゲーム版2077に登場するかどうかは...プレイしてみるまでわかりません!


*左は2025年頃の荒坂美知子(と思わしき人物)、右は彼女が起業した「Danger Girl」の企業ロゴ

*メインポストここまで//
 
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