開発者インタビュー「RPGとFPSの融合:CDPRのレシピ」【翻訳】

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VG24/7:Mantis blades, recoil and Legendary guns – everything you need to know about the weapons of Night City

先日の第二回NCWに連動して、海外メディアVG24/7がRPGとFPSの融合に関するCDPR開発者へのロングインタビューを掲載しています。とても内容が良く興味深い情報も多かったので全訳しました。なお今回のインタビューに回答しているのは、2020年8月11日に行われた第二回”Night City Wire”↓でも「開発者Q&A」のコーナーで回答していた、CD PROJEKT RED(以下CDPR)のシニア・ゲームプレイ・デザイナー「Pawel Kapala」氏です。



------------------------------------------- 以下かなりの長文です。ご注意を -------------------------------------------​


VG247:ウィッチャーシリーズとは全く趣きが異なるサイバーパンク2077を開発されるにあたって、(シューター部分の)フィーリングやハンドリングの面から特にインスピレーションを受けた作品などはありますか?

Pawel Kapala:それはもう色んなゲームを参考にしました。当時はそれこそ直近の2年ほどにリリースされた(シューター系の)ゲームは全てチェックしたほどです。ただそれらチェックしたゲームのほとんどはあくまでシューターをメインにしたもので、そこにRPG要素を加えてあるという作りになっていたため、それが当時の我々にとっては一番の問題点でした。私たちが目指すゲームとは反対の開発アプローチをとっていたからです。つまり、私たちが作ろうとしているゲームは(シューターがメインではなく)あくまでRPGであり、そこにシューター要素を付け足そうとしていました。ですから先人のゲームから多いにインスピレーションを受けたのは事実ですが、それはあくまで(シューター部分の)フィーリングやエフェクト、視覚効果、サウンド、アニメーションといった部分に限られます。

そういうわけで「まずRPGありき」なゲームにどうやってシューター要素を加えるかというのが当時の私たちの課題でした。要は私たちが目指すRPGを作るために、今までチェックしてきた多くのシューター系ゲームにはない要素も詰め込む必要があり、これら先人たちのゲームをあまり参考にできなくなってしまったのです。
例えばリコイルを例にあげましょう。これをRPGエレメントとしてゲームに実装するためには、もはや(武器ごとに決まった)静的エレメントであってはいけません。カメラのブレや集弾率、チャージタイム、リロードタイムといったものもそうですが、これらの要素は全て(RPGエレメントとして)拡張可能な、成長要素を伴ったものにする必要があります。

このように、プレイヤーのビジュアルフィードバックをはじめとする、トリガーを引いた時の感触といったシューター全般における内容は他のゲームから多くのインスピレーションを受けましたが、実際の開発現場で私たちが注力していたのは~プレイヤーがゲームを進めていく中で、少しずつ武器の扱いに長けていく様子を実感できるような~「RPGシステム」をどのようにして作り上げるかということだったのです。

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VG247:リコイルの話が出ましたが、実際どのようにバランスを取っているのですか?個人的には「RPGのシューターといえば…レベルが上がればリコイルも改善される;最初は大きかったレティクルがレベルが上がるごとに段々小さくなっていく」といったことを想像してしまいます~例えば一作目のマスエフェクトのように。しかしマスエフェクトではこの仕様が結構フラストレーションで、誰かに狙いを定めても(初期レベルでは)弾がかすりもしませんでした。

Kapala:そうですね。そういう問題点は実際にありますし、2つのシステム(RPGとシューター)を融合させつつも、今ご指摘いただいた問題を解決することが私たちとしても最大の課題でした。例えば初期の武器精度が使い物にならないくらい低ければ、プレイヤーはフラストレーションを溜め込むばかりですし、我々もそういう風にしたいとは思いません。ですが(RPGの側面を鑑みれば)プレイヤーが改善や進歩を感じられる余地も必要です。

そこで私たちは本作の武器における総合的な考え方として、2種類の要素を鑑みることにしました。一つはプレイヤー自身が制御できるエレメント、もう一つはプレイヤーの制御が半分しか及ばないエレメント、この二つです。例えばリコイルを例にあげましょう。カメラのブレにも影響する反動の大小は、(FPSに)慣れたプレイヤーなら(反動が大きくても)武器を制御することは可能です。反動の大きいCS:GO(注:ValveのFPS”Counter-Strike: Global Offensive”の略)のようにね。これに対して(例えば)クロスヘアのサイズに依存する集弾率は完全にランダムです。(武器を乱射する場面で)銃弾の行き着く先を正確に予測できるプレイヤーなど存在しません。
そういうわけで私たちは開発過程において、(RPGエレメントとしての変動要素にふさわしいのは)集弾率ではなく、ゲームの序盤であってもプレイヤーの腕次第で制御可能なリコイルの方がずっと良いという結論に達しました。もちろん集弾率も固定エレメントではないのですが、プレイヤーがゲーム序盤にイライラしないよう集弾率の変動幅は(リコイルほど)大きくありません。この考え方を取り入れたことによって、少なくとも私たちの間では(RPGにシューター要素を取り入れた時の)フラストレーションが随分軽減されました。プレイヤーも同じように感じてくれると思いますし、武器の扱いに(ストレスなく)慣れていけると思います。

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VG247:純粋なシューター作品であれば、周囲の環境に銃弾がどのような反応を及ぼすか〜例えば敵や街灯を撃てばどうなるか〜といったことも注目されます。本作はRPGなのでそこまで期待するのは酷かもしれませんが、実際のところはいかがですか?平均的なシューターRPGよりもインタラクトできるのでしょうか?

Kapala:できます。私たちは本作の開発で環境にどれだけインタラクトできるかといった点にも重点を置いてきました。こうした(環境破壊)要素はシンプルなものにまで及び、例えばバーで銃撃戦があればグラスは飛散しますし、銃弾によってビール瓶も粉々になります。銃撃戦を繰り広げたことによってプレイヤーが戦場の爪痕を感じ取れる〜そういったフィーリングを実現したかったのです。ただ今作の環境破壊はそれだけにとどまりません。本作にはカバーシステムがありますが、カバーできる環境そのものを破壊することもできます。敵がカバーしていたとしてもプレイヤーはそれを破壊できますし、他にはガラスも破壊可能なので投擲物を投げ込めば(グレネードが実際に存在しているという)実感もより湧くでしょう。また弾痕はほとんどすべてのオブジェクトに残り、撃った対象に応じて環境のリアクションも変わります。例えば水が流れるパイプを撃てば撃った所から水が漏れてきますし、こうした反応はゲーム内のほぼ全てのオブジェクトに及んでいます。

人を撃った時はどうですか?定型の死亡アニメーションだけなのか、物理的に(プレイヤーの銃撃具合で)変化が生じるのか、どちらでしょう?

Kapala:人を撃った時のリアクションに関してはその中間ぐらいです。プレイヤーが使用している武器にも依存するので、例えば小口径のピストルでヘッドショットしても、人形のように相手が吹っ飛んで行くことはありません。タランティーノ作品のような映画を作っているわけではないですからね。ただしグレネードで相手を殺傷すれば、人形のように吹き飛んで死体はバラバラになります。これは武器に関しても同様で、殺傷能力の高い武器であれば(NPCの死に様も)変わってくるでしょう。


VG247:第二回NCWのインタビューの中で、特定のクエストに紐付けされたレジェンダリー武器の存在が示唆されていました。個人的な印象ではクエストをプレイヤーがどのように解決したかによって、手に入れられるレジェンダリー武器も変わってくるのかなと思いました。例えばステルス攻略と脳筋攻略ではそのあたりの結果に変化はあるのでしょうか?
【注意】この質問の回答には軽度のネタバレが含まれます(該当箇所はSpoilerタグで閉じています)


Kapala:私たちが常に心がけていたのは「”報酬のためにクエストをこなす”ゲームにはしたくない」ということ。私たちのゲームにそのような反復メカニクスは必要ありませんし、むしろ特定のキャラを助けるかどうかといったシチュエーションに注力したものです。例えばプレイヤーがメレディス・スタウト(注:デモにも登場したミリテクのエージェント)を助けたとしましょう。
彼女を助ければその後も彼女との関係は続き、最終的には(今までの協力関係の謝礼として)メレディスからレジェンダリー武器がもらえるかもしれません。
要するに本作のレジェンダリー武器というのは理由もなくプレイヤーが手に入れられる代物ではないということです。

とはいえ、プレイヤーが様々な局面で選択を強いられる本作では、(プレイヤーが)知らず知らずの内に(分岐点で特定の)選択をしていることもありえます。ですが本作はRPGですから『本当にその選択でOKですか?あなたが助けようとしているキャラクターはレジェンダリー武器を持っています』といった警告が表示されるなんてことはありません。”選択には結果が伴う”…これも私たちが作ろうとしている「RPGシステム」の一部だからです。ですからプレイヤーが選択した「結果」の中には、特定のNPCから特定の報酬を「受け取れない」場合もあります。なぜプレイヤーはそのNPCを助けるのか…それは武器が欲しいから、本作はそういうゲームではありません。NPCを助けるのは「プレイヤーが助けたいから」もしくは「このNPCは私の考えを代弁してくれているから」… こういった本来あるべき動機に基づいて下された結果が、特定のNPCから得られる今作の報酬なのです。

また本作のレジェンダリー武器はかなり特殊で、NPCとのつながり〜誰からそれを手に入れたか〜を感じ取れるものになっています。もう少し具体的にいうと、基本的に(レジェンダリー武器は)特定のクエストのために用意された(固有の)武器であり、そのNPCに一切関連性がなく、彼らが全く使いそうもない武器…ということはありません。ですからNPCの中は、その武器をホルスターから取り出して、5分前まで実際に使用していた者もいるでしょう。武器のビジュアルも固有のもので、ゲーム内に二つとして同じものは存在しません。それをプレイヤーは報酬として(選択次第では)受け取れるのです。自分が愛用していたものを手渡されるからこそ、そこに価値も生まれます。

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VG247:もしそれら(レジェンダリー武器)の一つをゲームの序盤/中盤に手に入れたとして、これが終盤で手に入るレジェンダリー武器に劣るようなことはありますか?また特定の武器がすごく気に入った場合、それをアップグレードして(終盤でも)使えるようにすることは可能ですか?

Kapala:プレイヤーが武器を改造して性能を向上させることは可能です。しかしながら、本作では大量の武器を用意しているため、我々としては一つの武器に使用を限定した全編プレイを推奨するつもりはありません。またレジェンダリー武器の中には欠点とまではいかないものの、かなりクセのある武器もあるということを知っておいて欲しいです。もちろんプレイヤーのみなさんには各自お気に入りの武器というのを見つけてもらいたいですし、逆に「これは自分のプレイスタイルには合わないな」という武器もあるでしょう。いずれにせよ(繰り返しになりますが)本作はRPGですから、どの武器を使うかの判断はプレイヤーに委ねられています。ステルスを好むプレイヤー向けの武器もあれば、逆にステルスでは絶対使えないような脳筋ソロでプレイしたい人向けの武器もあります。全てプレイヤー次第です。

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VG247:ステルスの話が出ましたので、次の質問をさせてください ー 本作ではどうやってRPG的な成長要素を”全ての”プレイヤーに体験させようとしているのですか?例えばステルス志向のプレイヤーならサイズも音も大きい重火器系には興味を示さず、使用する武器が専らピストル一辺倒になるかもしれません。アサルトライフルやSMGを拾いたくない人(ステルス志向でピストルにしか興味ない人)でも武器の扱いに長けていく様子を実感することはできるのですか?

Kapala:私たちが開発初期の段階から採用を決定していたメカニクスの一つに、特定の武器を使えば使うほどその武器の熟練度が上がっていく、というものがありました。ですからピストルを使い続ければそれだけで扱いに長けていきますし、キャラクターがレベルアップする必要もありません。レベルアップして獲得した20ポイントをピストルの技能に割り振る〜というシステムではないからです。ただ使い続けるだけ;例えばアサルトライフルが好きなプレイヤーが、アサルトライフルばかりを使っていくと、アサルトライフルの扱いに長けて行く〜といった具合です。また本作ではステルスとコンバットを対照的なアプローチとして採用しているわけではありません。「どちらのスタンスを採用するか」ではなく、プレイヤーのみなさんには二つのアプローチを織り交ぜてゲームを進めてもらいたいと思っています。本作に明確なクラスシステムがないのもその表れですし、ステルス一辺倒で全編プレイしようとしても上手くいくとは限りません。状況に応じた最適なアプローチをその都度プレイヤー自身に選択してもらいたいのです。

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VG247:オーギュメンテーションは本作(の戦闘)にどのような要素として取り入れられていますか?ガンプレイだけでなく近接戦闘なども含めてどのような影響を及ぼすのでしょう?またどれほどの種類があって、どのように戦闘スタイルを変えていけるのですか?

Kapala:本作には戦闘時に非常に有用なサイバーウェアが存在します。例えば過去のデモで紹介されていたSandevistan系のもの(注:反射神経ブースターであるSandevistanは神経系サイバーウェアの一種で、ここで言われているのは48分ゲームプレイデモで紹介されていた”ケレツニコフ”のこと)がそうで、一時的にスローモーションになってバレットタイムが発生します。ただ戦闘時にとても効果を発揮するとはいえ、これはガンプレイそのものを向上させるわけではありません。このように本作のサイバーウェアはプレイヤーが戦闘時に相手にどうアプローチするか、その選択肢を広げるための役割を担うものとして位置付けています。プレイヤーの身体に埋め込むサイバーウェアに関しても同様で、(これもすでにデモで紹介しましたが)その一例がマンティスブレードです。ちなみにマンティスブレードは容易に獲得できる代物ではありません。ブラックマーケットを通じて手に入れる必要がありますからね。ただその威力は抜群で、またミリタリー仕様のインプラントでもあるため、その使い勝手も通常の近接武器とは異なります。マンティスブレードのような強力なサイバーウェアをインストールすれば、戦闘時にはその効果を大いに発揮できるでしょう。

そういう強力な近接武器を使う時に制限などはあるのですか?例えばマンティスブレードとゴリラアームズを同時に使用することは可能ですか?もしくは(一方を手に入れるためにもう一方の能力が下がる/犠牲になる)トレードオフのような関係になっているのでしょうか?

Kapala:トレードオフのような関係とはいえると思います。なぜならサイバーパンクの世界でそういった強力な近接武器を手に入れる場合、(その武器を腕に埋め込むために)腕そのものを再構築しなくてはいけませんし、(再構築された腕に)新たに追加できるものはそう多くありません。ですからどういう構成でサイバーウェアをインストールしていくかについても基本的にプレイヤーの判断に委ねられていると言えます。



VG247:本作を一般的な”FPS”として全編プレイすることは可能ですか?また全編”近接武器のみ”でプレイすることはできますか?どうしても銃にきりかえる必要に迫られることはあるのでしょうか?

Kapala:その質問にお答えしようとなると…まず本作の舞台が一つの巨大都市であることにふれねばなりません。ナイトシティはとても危険な都市です。特にゲーム序盤となると、主人公Vは一介の、しかも無名の新人傭兵に過ぎません。Vはあらゆる手段を使って立ちふさがる難敵と対峙していかなくてはならないのです。またプレイヤーはゲームのごく序盤から自分よりもずっと強大なキャラクターに遭遇することになります。彼らをいきなり殺すことなんてできません。中には巨大企業に属する相手もいるわけですからね。Max-Tacやトラウマチームのようなエリート集団相手に、ゲーム序盤からプレイヤーが勝利を収めることなど期待しないでください。だからこそ(単純なFPSとして相手と対峙するのではく)対峙する相手によってどのように問題に対処していくか、様々なアプローチ法が本作ではプレイヤーに用意されているのです。

また近接武器に関してですが、これについても同様のことが言えます。私たちは本作の開発で、キャラクターたちがあたかもゲームの世界に実際に存在しているような、そんな世界を作ろうと苦心してきました。例えば刀を携えたプレイヤーが2人のスナイパーと対峙したとしましょう。(プレイヤーの武器が刀だからといって)彼らはお情けをかけてくれません。普通にスナイパーライフルで狙撃してきますし、そのためにプレイヤーは彼らにどうやって近づくかを考えなくてはいけません。もちろん刀だけを持って世界中を徘徊することはできます。ですが相手がヘリコプターに乗ってきた場合、それでもあなたは刀で突撃しようと思いますか?あまり良いストラテジーとは言えないですよね。

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VG247:近接戦闘のお話が出たのでうかがいますが、実際のところ本作の近接武器はどういった感じなんですか?近接戦闘を一人称視点で実現するというのは容易なことではないと思うのですが…正直その点についてはベセスダも(TESシリーズやFall Outシリーズで)苦労してきたように感じます。本作の近接戦闘の出来について教えてください。

Kapala:本作の発売まではまだ数ヶ月の猶予がありますが、実際のところ近接戦闘については現在進行形で今も開発に注力しています。理想(の近接戦闘)に近づけるために多くの時間を費やしてきましたが、現在もその出来に100%納得していません。特に近接ヒット時のビジュアルフィードバックに満足なものが得られていないため、今も磨きをかけていますし、これは今後も続くでしょう。幸いなことに以前と比べれば現在の近接戦闘はずっと良くなっていますし、発売時までにはより一層の改善を期待したいと思っています。ちなみに近接戦闘を一人称で実現することの難しさは最初から我々も重々承知していました。今まで作ってきたゲームの系譜が三人称視点に基づいていた我々にとって、これは容易いタスクではありません。これを実現することは今作の開発の主眼の一つに数えられていたほどです。一人称視点の近接戦闘はどうあるべきなのか ー 現在も鋭意製作中です。

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VG247:この質問は近接武器よりも銃に関連したものかもしれませんが…プレイヤーが相手に与えるダメージ部位、これは本作で何か影響がありますか?例えば膝や足を撃つと相手の動きが鈍くなるといった仕様はあるのでしょうか?

Kapala:もちろんあります。相手のどの部位にダメージを与えたかによって、本作ではヒットリアクションが異なります。例えばバットを持った敵がプレイヤーめがけて突進してきたとしましょう。この時相手の膝を撃てば転倒しますし、バットを手放させたければ腕を撃ってください。他にも相手が両手武器の場合、腕を撃てばワンハンドピストルに持ち替えてきたりします。こういったシチュエーションを全ての場面で活用する必要はないですが、相手の特定の部位を狙うのも時には戦局を有利に進めるために有効です。

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VG247:RPGでもいわゆる「バレットスポンジ(いくら銃弾を浴びせても中々倒せない、体力や攻撃力が異常に高い敵のこと)」な相手に遭遇することがあります。今作では(バレットスポンジ問題を解消するために)どのようなバランス調整を行なっていますか?倒すのにやたら時間がかかったり、ストーリー上何度も出会うことになったり…例えばトレイラーにも出てきたオーギュメント全開のキャラクター「アダム・スマッシャー」などは見るからにそんな感じで、仮にロケットランチャーを使っても容易く倒せる相手には見えません。「挑戦しがいのある相手」というよりもそれがフラストレーションにならないよう、どのような調整を心がけましたか?

Kapala:これはあくまでゲームの構造的な話ですが、例えば本作で出会うことになる様々なNPCにそれぞれ格付けをするとします。通常街中で遭遇する一般的なNPCはいわゆる「チンピラ」レベルの普通のNPCです。プレイヤーが経験を重ねてレベルアップしていけば、彼らがバレットスポンジになることはありませんし、何の問題もなく倒せるでしょう。ただし油断をしていると殺られてしまうので、カバーを使って上手く立ち回る必要はあります。

一方、NPCの中には装備にも抜かりがなく、いわゆるエリートクラスの攻撃力に優れた相手もいます。こういう敵は銃弾を数発あてた程度では倒れてくれません。ただし私たちが本作で採用したメカニクスとして、プレイヤーの攻撃に対するヒットリアクションはしっかりゲーム内に反映されます。つまり、私が考えるバレットスポンジの問題点というのは、基本的にプレイヤーがいくらダメージを与えてもNPCから一切のリアクションが得られない点にありました。私たちはそういう風にはしたくなかったので、本作ではプレイヤーが与えたダメージに従って〜(プレイヤーの攻撃具合で)よろけたり、膝をついたり…しっかりヒットリアクションをプレイヤーに返すことによって〜(徐々に)相手が弱っていく様子を実感できるような作りにしています。あといわゆる「ボスファイト」に関してですが、これについてはプレイヤーご自身の目で確認してもらうのが一番だと思っています。一つだけ申し上げておくなら、ボス戦でバレットスポンジを感じさせないような工夫はちゃんと私たちの方で施していますよ。


こちらのトレーラーで確認できる2077のアダム・スマッシャー
2020時代の第四次企業戦争の際にジョニー・シルヴァーハンドを一時は死に追いやった(と思われていた)アラサカのボーグ


VG247:本作で用意された武器とナイトシティにまつわる世界設定(ロア)に何らかの関係はあるのですか?というのも、あなた方は今作の開発にあたって、(武器そのものだけでなく)多くの武器製造メーカーも構築されたはずです。各メーカーごとに得意分野があったり、品質に違いがあったりしますか?プレイヤーが特定のメーカーを贔屓にするなんてこともあるのでしょうか?

Kapala:当然あります。開発初期段階から私たちはどのメーカーの武器をゲームで使いたいか、どのメーカーなら高品質/低品質な武器を提供するかといった(原作2020の設定に基づいた)世界観の構築に励んでいました。またメーカーごとに異なるいわば品質軸と時間軸を伴ったグリッドに個々の武器を並べ、どの武器がオールドスクールなのかといったことも突き詰めていきました。こうして(2077の)ナイトシティで武器製造を営むメーカーを徐々に構築していき、例えばRostovic製(注:原作に登場するセルビアの武器メーカー。2020時代は近接武器のサイバネティクスで有名だった)の「Igla (”針”の意味)」は古き良き時代のダブルバレルショットガンだな、といった具合に作業は進められました。これはテックウェポンやスマートウェポンに関しても同様です。

しかしながら、高性能な武器となるとRostovic製というわけにはいきません。この分野になるとアラサカミリテクのような巨大企業の出番です。彼らのような超巨大企業が製造する武器は基本的に支給先が軍隊であり、他の企業も彼らの武器を使うほど高性能です。それほどまでに高品質なアラサカやミリテク製の武器を使えば、リコイルも集弾率も通常の武器より優れていることが実感できますし、音も控えめでその精巧な作りに目を奪われると思います。またメーカーごとに得意分野はあるのかというご質問に関しては、例えば本作には「カン・タオ」という中国企業が存在します。彼らはスマートウェポンが実用化されるようになったサイバーパンクユニバースのとある時期に、ナイトシティで創業した新興企業で(注:ちなみに原作2020にもカンタオは存在するが、これは台湾のそれも割と老舗企業であるため、2077のカンタオとは同一のものではない可能性もある)、彼らは専らスマートウェポンの製造に注力しています。ですからカン・タオ製といわれればまず間違いなくスマートウェポンだと思っていいでしょう。

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VG247:最後の質問です…古き良き時代の武器という言葉が出ましたが、本作サイバーパンク2077は原作2020のユニバースとは明らかな時代的なギャップがありますね。つまり原作2020が出版された1990年代前後に流通していた実際の武器が、2020でも多くのモチーフとして使われていました。例えば当時の2020のプレーヤーの多くはUziを愛用してましたし、2020には弓やクロスボウのような武器もありました。2077ではこういった武器を目にすることもできるのですか?

Kapala:私たちが本作で実現したかったことは、基本的に「2020の延長線上にあるのが2077」というものです。ですから時代と共に廃れていった武器があって当然ですし、その一方で今だに現役で使われている武器があっても不思議ではありません。おそらく2020に精通したプレイヤーの方なら、原作に登場した幾つかの武器を2077でも目にすることになるでしょう〜もちろんそのまま2077に登場させているわけではなくて、我々なりのひねりを加えてありますが。プレイヤーのみなさんが実際に2077をプレイされた時、我々が原作2020シリーズとの繋がりを本作にどれだけ持たせようとしたか、きっと気づいてもらえると思います。と同時に、2020から2077に至る57年の間にどのような変化があったのか、そのあたりについても楽しみにしていてください。
 
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