開発者インタビュー「CDPRが語るサイバーパンク2077のあれこれ」【翻訳】

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本スレッドの元記事はこちら↓
DualShockers:CD Projekt Talks Night City, Gameplay, Quest Design and Much More

良記事だったので全訳してみました(長文です)。
なお回答しているパトリック・ミルズ氏はクエストデザイナーとして開発に携わっているREDsの方です。
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クエストデザイナーをお迎えしたインタビューということで、まずはクエスト周りからおうかがいします。
多くのゲームは、メインストーリーとサイドクエストを別物のように、割と切り離して開発している傾向にあると思います。この両者の溝を埋め、プレイヤーがより自然に(メインかサイドか意識することなく)プレイできるよう、何かしらの工夫がされているのでしょうか?

  • ゲーム開発における私たちの手法は、ウィッチャー3でみなさんよくご存知だと思います。サイドクエストが~たとえそれが数時間超の長いクエストであっても~できるだけメインクエストに影響が及ぶような作りを目指して開発されたのがウィッチャー3です。
    サイバーパンクでもこの姿勢が変わることはないでしょう。そもそもプレイヤーのみなさんにメインクエストとサイドクエストの違いを感じさせてしまうような〜つまりサイドクエストだからといってストーリーのクオリティが下がるようなものは提供したくありません。これはストーリーテリングにおいて特にそうです。

    私たちが作るクエストの1つ1つは、全てが語るに足る興味深いストーリーでなくてはいけません。

本作では(ウィッチャーシリーズとは違って)キャラクターデザインにおける自由度がプレイヤーにかなり与えられます。プレイヤーごとに違う主人公Vの設定が、(性別以外で)クエストに影響を及ぼすことはあるのですか?例えばVの髪色によっては「ブロンディ」と呼ばれるようなことは?
  • もちろんです。これは見た目だけの話ではなく、プレイヤーの選択も後になって影響を及ぼします。1つ例を出しましょう。クエストを解決する方法についてです…プレイヤーは戦闘を回避してクエストを完了しました。その後誰かに助けを求める局面に出くわし、通常ならそれで助けてもらえます。ですがもしあなたが(戦闘を回避せずに)ガッツリ戦った後なら、彼らはそのことをしっかり覚えていて「先週おまえが戦って撃ち殺した相手は俺の友達だったんだぜ」といって、プレイヤーを助けることはしないでしょう。

    またプレイヤーがどのようなキャラクターデザインを経て、どういう服装で身を固めているか、そういった要素も周りがしっかりリアクションするようにしたいですね。

つまり特定の衣装を身につけていると、周りのリアクションが変わってくると?ありそうでなかったですね。
  • 限定的にではありましたが、今までもいくつかのゲームでそのような要素は実現されていましたよ。たとえばAlpha ProtocolとかDaggerfallなどがそうですね。

多くのRPG、特にオープンワールドでよくありがちなのが、時間の概念が時に都合よく曖昧になることです。つまりどれだけ緊急事態であったとしても、プレイヤーが望むならその案件を後回しにして別の用事にとりかかることができる、といった具合に。本作では(昼夜のサイクル以外に)時間の経過を感じ取れる要素はあるのでしょうか?
  • そういった要素も本作に取り入れられればなと思っています。没入感を助長する1要素になりえますからね。本作で1つ興味深いことは、私たちが作っているサイバーパンクの世界というのはあらゆるテクスチャーが相互に波及し合うということ。現在のビルド~そして願わくば製品版でも実現したい~本作の世界は、プレイヤーの行動だけでなく時間の経過とともに各テクスチャーが幾度となく姿を変えていくのです。(注:テクスチャー="ゲームを織り成す様々な要素”ぐらいの意味かと)

    なお本作はカリフォルニアを舞台にしているため、(世界設定が)季節に縛られるということもないので助かります(笑)

本作のマルチプレイヤー要素に関してCDPRのスタンスはすでに公にされていますので ()、ここで詳しく聞くことはしません。ただサイバーパンク2077はTRPGをベースにしたゲームで、私は常々「TRPGの設定を活かしたシンプルなオンライン環境で、もっとオールドスタイルなテキストベースのゲームを作るメーカーが出てこないものか」と思っていました。ソーシャルなロールプレイ空間として、TRPGの設定で行うオンライン環境とか結構楽しそうじゃないですか。
  • そのような議論が今まで(CDPR内で)されてきたかどうかは定かじゃありませんが、私も同じようなことを考えたことはあります。ただ私はクエスト・デザイナーなので、正直それに関しては専門外ですね。会社としてマルチプレイヤー分野を研究開発(R&D)しているのは事実ですが、私たちが現在注力しているのは専らシングルプレイヤー向けのゲームであって、その先のことはまだ分かりません。

    訳注 - なお本作のマルチプレイヤー要素に関するCDPRのスタンスというのは...
    ソース:https://www.eurogamer.net/articles/...-gameplay-and-interviewed-cd-projekt-about-it
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    サイバーパンク2077はシングルプレイ専用ゲームですか?
    はい。

    マルチプレイはない、と?
    現状はまだR&D(研究開発)段階です。本作発売時にはシングルプレイのみの実装になるでしょう。現時点で私たちが集中しているのは発売時に最高のシングルプレイ体験をお届けすることです。それを達成するまでは他のことに気をとられたくありません。

    あなたは今「マルチプレイがR&D段階」と仰いましたが、それはサイバーパンク2077のマルチプレイのことですか?それともマルチプレイ全般を(ゲームメーカーとして)研究開発しているという意味ですか?
    両方の意味です。

    ということは本作の発売後にマルチプレイが実装される可能性もあるわけですね?
    可能性はあると思います(注:原文は”Maybe”=50%)。ただ約束はできませんよ。発売時に私たちがみなさんに届けたいコンテンツはあくまでシングルプレイです。それまではその開発だけに集中しますし、発売時にマルチプレイはありません(キッパリ)。

なるほど。私はオールドスクールなゲーマーなので、そういうゲームがあればクールだなと考えてしまうんです。

本作に環境破壊要素はありますか?
  • 限定的に破壊可能な環境はあります。ただこれに関してはまだリサーチ中で、実際の製品版でどこまで破壊活動が可能かはまだ分かりません。デモプレイでは銃弾が壁を貫通し破壊する様子をご覧になれたと思いますが、あの映像はデモ用だったのであのような制御は割と簡単にできたのです。ですが実際1つのゲームとして組み上げて同じことをやろうとしても、どこかしらで破綻をきたす可能性があります(たとえばメモリが足りないとかそういうの)。ですから今はより技術レベルを高め、どこまで私たちが環境破壊を実現できるか、その見定めを行なっている段階ですね。

オリジナルのTRPGから50年後が本作の舞台ですね。サイバーテクノロジーなどオリジナルの設定を2077に進化させるのはチャレンジでしたか?
  • とにかく2020にあったフィーリングを2077でも再現する、それが私たちが目指したものです。また2020から厳格に2077へ時間軸を継続すると様々な難問が生じるため、既存のタイムラインに新たな要素、例えば新解釈としていくつかのイベントを追加するなどしてこれらに対処しています。


2013年に発表された最初のトレーラーに登場する女性(マンティスブレード付きのサイバーサイコのこと)。彼女は実際にゲームに登場するキャラクターなのですか?

とても興味深いキャラですよね。
  • ええ。彼女はとてもクールですよ。凄くクールなキャラクターです…。

つまり実際のゲーム内キャラクターだと?それ言っちゃって大丈夫ですか?
  • おっと!そこまでですよ!(笑)...さぁどうでしょうね…彼女は”トレイラー内”キャラクターとしてクールです。

わかりました。そういうことにしておきましょう (笑)
2018年のE3で本作が一人称視点固定であることが発表されました。個人的にこのアイデアは気に入っていますが、ただユーザーからの意見は賛否両論だっと思います。その後のフィードバックなどを受けて、CDPRにこれを調整する意思はあるのでしょうか?それとも一人称視点固定という決定は堅固なものですか?

  • 決定は固いですね。しかしながら、多くの方々からFPP(First Person Perspective:一人称視点)を好まないというご意見は頂戴しています。中には(個人の嗜好云々ではなく)様々な理由でFPPではプレイできない、という方も少なからずいるということも承知しています。

    フィードバックやご批判の声は当然私たちのもとに届いていて、そういう方々にもFPPを気に入ってもらえるよう難易度調整やセンシビリティオプションを設けたいと考えてはいます。ただFPP固定というのは私たちがこれまでの開発過程で拘ってきた要素の一つなのです。ですがより多くの人たちにプレイしてもらいたいというのも事実ですので、もしかすると今後何らかの変更がある可能性は”無きにしも非ず”でしょうか。

それは実際にスタジオ内ですでに対策が練られているのですか?それともまだあなた個人の考えにとどまっているものですか?
  • 難易度とアクセシビリティについては、オプション設定がほぼ間違いなく設けられるでしょう。具体的にどういう項目が設定されるかは個人的には分かりません。これはR&D部門の仕事なので、彼ら次第でしょうし(具体的な設定が決まるのは)まだまだ先の話だと思います。

そもそも本作の開発自体がまだ完成から遠い段階ですか?
  • うーん…開発段階のまだ初期ステージとはいえるかもしれません。

まだバーティカルスライス ()だと?
訳注 - Vertical Slice :ゲーム開発行程において、本制作へ入る前に大体最初のステージだけを完成に近いクオリティで先に作り、そこでスケジュール/予算/ゲームとしてどうなのか…というものを見極める作業のこと
  • 個人的にはバーティカルスライスだとは思いません。そう定義できないこともないですが。

デモプレイの内容は実際のゲームの一部分ですね?
  • そうです。ですからバーティカルスライスと呼びたくないのです。ゲームの序盤部分をお見せしたデモプレイ(もちろんこの先変更される可能性もありますが)は間違いなく実際のゲームの一部分ですよ。


本作の昼夜サイクルは完全にダイナミックなものですか?それともストーリー進行によって変化するタイプのものでしょうか?
  • 昼もしくは夜にならないと語られないストーリーはあるかと思います。ただ実際にどのような仕様になるか現時点ではまだ詳しく話せません。

つまり例えばクエストを開始するために夜になるのを待つ、みたいなシチュエーションもあると?
  • そうです。ウィッチャー3でもやりましたが、本作でも同じような感じになると思います。ちなみにウィッチャーではモンスターを討伐するために夜を待ちました。本作ではパーティ会場に向かうために夜を待つ、そんな感じですね。

オリジナルのサイバーパンクは(道徳的に)不適切 ()な描写もありました。2077でのスタンスは?
訳注 - 原文はPolitically Incorrect
  • 私が考えるに「もし何かを発言する時は、その発言に責任を持つ」というのは重要だと思います。ですから何かを(その気がないのに)不意に発言してしまうのは良くないですね。2077では何かを発言するという行為が、あなたの立場を明確化することにも繋がります。

オリジナルのサイバーパンクではディストピアな未来像を具現化し、それが極めて重要な要素となっていました。本作でも同じようなアプローチで未来を描いているのですか?
  • 原作サイバーパンクでは、まずどのような人々によってこの世界が成立しているかが描写され、また彼らがシステムと権力に巻かれる側なのか、もしくは抗う側なのかといったことについても数多く記述されています。ですから私たちもこれら未来像の具現化にあたり、重要なテーマの一つと考えて事に当たっています。

本作で売春行為は可能ですか?
  • もちろんナイトシティには存在します。彼らと「接続 (注 - 原文:interface)」できるかどうかは私の知る所ではありませんが。

決まり切ったスクリプトではなく、プレイヤーの行動如何によって起こる突発的なイベントなどはありますか?
  • そういう要素は多少なりとも実装されるかもしれませんが、この種のインタラクションについてお話しするのはまだ時期尚早ですね。今は1つ1つが手作業で作り込まれた物語主導コンテンツの開発に注力したいので。とにかく現在私たちが作り込んでいるナイトシティというのは、数多くのコンテンツが盛り込まれた探索しがいのある場所です。あなたと友達ではゲームプレイが異なるってこともあるかもしれませんよ。

ナイトシティでプレイヤーはどれほどの自由度を与えられるのでしょう?全てが到達可能な場所なのか、ゲーム開始当初から全てのエリアが解放されているのか…そのあたりはどうですか?

たとえるならナイトシティはどれほど巨大なのですか?ウィッチャー3と比べるとどの程度なんでしょう?
  • 「巨大」だとしか今は言えません…(平面的に広かった)ウィッチャー3と比べるのも難しいですね。ナイトシティは「縦」にも凄いことになっているので。

実際の都市サイズに匹敵するほど?
  • こういう風に表現しましょう。「ナイトシティをドライブしていたら、実際の都市内を運転しているような気分になれます。ミニチュア都市ではありません」


ゲーム開始前のキャラクタークリエイトにおける自由度はどの程度ですか?主人公Vのバックグラウンドも選べるんですよね?
  • 選べますよ。ただ忘れないでいただきたいのは、デモプレイでお見せした映像はまだまだ開発途上のビルドであって完成形ではありません。ですから今後変更される可能性は十分あります。なおオリジナルの2020では「Lifepath System」というものがあり、本作にも似たようなシステムを取り入れるつもりです。ここで選んだプレイヤーのバックグラウンドはゲーム開始すぐに反映されるわけではなく、ストーリーを通じて徐々に影響が出てくるといった感じですね。

通常の会話やストーリー以外でサイバーパンクの世界観をより深く知るためのコーデックスのようなものは本作にありますか?
  • それに関しては現在も製作中でまだはっきりしたことは言えませんが、いくつかのアイデアはあります。ただ今後変更される可能性もあるので、詳しいことはいずれお話ししたいと思っています。

本作を楽しむためには、プレイヤー側も色々知っておくべき要素が多そうですね。オリジナルのファンにすら馴染みのないセッティングもありそうですし。
  • 多いですね。ですからサイバーパンクがどういう世界で、この世界の一員としてどのように振る舞い主人公Vに没入していけばいいのか、そういった基礎知識をプレイヤーにきちんと伝えることが(開発側にとって)重要になってきます。

オリジナルの2020にあった要素は2077に出てくるのですか?50年後も既知の企業は登場するのでしょうか?
  • もちろんです。かつて実際に2020をプレイしていたプレイヤーの人たち(私自身もその1人ですが)なら、2077に詰められた数多くのオリジナル(2020)要素に気づいてもらえると思います。

    そういえばE3の時にマイクさん(オリジナルTRPG版のクリエイター:マイク・ポンスミス氏のこと)と話をしていたんですよ。(E3の発表で各メディアやファンにサイバーパンクについて説明したり案内している作業が)まさに数百万人を相手にしたGM(ゲームマスター:TRPGでゲームの進行を取り仕切る人物のこと)みたいだねって。

    本作はオリジナルのスピンオフという位置付けかもしれませんが、CDPRによるスピンオフであり、(オリジナルを大事にする)私たちの作品だというのはプレイすればお分かりいただけると思いますよ。

オリジナルの2020から本作の2077にかけて実際のタイムラインは作成されているのですか?
  • 作成しています。ただ現在も作業中なので、まだこれについてお話できることはありません。

いずれ公開する予定はある?
  • どうでしょうね…発売前に公開するかどうかは未定です。ただ実際のゲーム内でこれに近いもの(タイムライン)は間違いなくご覧いただけると思います。

マイク・ポンスミス氏は本作にどの程度関わっているのですか?ストーリーチェックなども手がけているのでしょうか?
  • 開発におけるマイクさんの存在は絶大なものがありますね。例えばオリジナルに「Kerry Eurodyne」というロッカーボーイがいますが、彼の背景を知ろうとしてもオリジナルブックには載っていません。ですがマイクさんに聞けば色んなことを教えてくれます。彼の出生地や生い立ちをはじめ、2020で何をしていたか、2020の後にどうなったか、といった内容を数ページにわたって全てメールしてくれるんですよ。

あなた方にとって救世主のような方でしょうか。
  • 全くその通りです。しかもそれだけじゃありません。私たちは本作で様々な要素を盛り込んでいますが、彼が賛同してくれるほど心強いものはないんです。もちろん全ての賛同が得られるわけではありませんが、それはクリエイティブな現場では通常のことですからね。

ちなみにそういう時はどちらの意見が通るのですか?

つまりポンスミス氏が譲歩こともあると?
  • もちろんです。彼は色んな意見に耳を傾けてくれますから。彼と仕事ができて本当に光栄ですよ。
 
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