開発者スポットライト with Jason Slama!

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■ はじめに
本フォーラムでは以前、1人の開発者にスポットライトを当てて大規模Q&Aを行う企画がありました()。
今回そのグウェント版が敢行され、その詳細が英語版フォーラムで公開されることになったため、本スレッドでも日本語に翻訳してご紹介します。
インタビューに答えてくれたのはゲームディレクターとして現在のグウェント開発を率いる「Jason Slama」氏です。

【訳注】過去にあったスポットライト企画はこちらを参照。他にはブルザ氏を迎えてAMAが行われたことも...

・翻訳元スレッド:Interview with GWENT Game Director Jason Slama(英語)
・謝意:All contents below are credited to not only @SlamaTwoFlags but also English moderator, @Riven-Twain. Thank you both!


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以下かなりの長文です。ご注意を。

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1. まずは自己紹介をお願いします。CD PROJEKT RED(以下CDPR)で働くことになった経緯や、ゲームに関する個人的興味など、あなたのゲーム(業界)キャリアを教えてもらえますか?

ゲーム開発における自分のキャリアは、Warcroft2のModを作り始めた10代の頃にスタートしたと言えると思います。その後Strcraft、Warcraftと進んだのですが、ゲーム開発で必要なプログラミングは総じてこの頃に習得しました。要は好きが高じてその後の自分のキャリアへと繋がっていった感じです。ゲーム開発を仕事として最初に取り組んだのは2008年のことで、あれからもう11年がたちました。早いものですね!

その間いろいろなゲーム開発に携わってきたのですが、キャリアのある時点で、これまでの居心地の良い環境を離れてでもチャレンジしたいと思える仕事のオファーを頂いたのです。それがウィッチャー3でした。当時からCDPRの(例えばDRMに代表される)企業理念は敬愛していましたし、彼らが掲げるプロジェクトやフィロソフィーにも好印象を持てました。

あと個人的な話でいうと、ゲームは大好きで色んなジャンルのゲームをプレイします。特にストラテジー要素を持つものが好きですね。もちろんその他のジャンル、例えばアクションアドベンチャーやFPS、インディーゲームなど、世に出ているその他多くのゲームも大好きでこれまで何時間とプレイしてきましたよ!
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2. ゲームディレクターとは具体的にどのような仕事をされているのですか?1日の平均的な仕事内容はどういった感じですか?

最初にお伝えしておくと、私の1日の「平均的な」仕事内容を(ルーティン的に)みなさんに提示するのは難しいですね。私に課せられた仕事は、チーム全体がより高い目標を掲げ、よりハイクオリティなプロダクトをみなさんに提供できるよう、プロジェクト全体に目を通し、その実現に向けた方策を練ること。プロジェクトの方向性やエクスパンションに至る、あらゆるゲームデザインに関与しながら、全員が一つの目標に向かって高いレベルで開発に取り組めるようなチームの舵取りも求められます。ですからプロジェクトの指針を決める会議を開いたり、一貫したビジョンを共有するために開発チーム全体にプレゼンしたり、ゲームディレクターの仕事は多岐に渡ります。もちろん様々な仕事をこなす必要はありますが、今の環境を個人的には凄く楽しんでいます。

あとは他にも(ゲーム開発そのものだけではなく)マーケティングの方向性やトレイラーの立案などにも関わっています。例えば以前あった「リーダー・スポットライト」は私自身がまずテキストを書き、文才のあるスタッフにその後の体裁を整えてもらって完成に至ったものです。

またゲームディレクターといっても、始終スタッフの誰かと打ち合わせをしているわけではありません。今回のように1人の時間を作って、みなさんからのQ&Aに答えることだってあります。中々そういう時間を作れないのも事実ではありますが、個人的には可能な限りフォーラムやRedditに目を通すようにしています。あとはミーティングの合間にできるだけ時間を作って、1日数試合でもプレイするよう心がけたり。ゲームの現状をできるだけ正確に把握することが、より適した決定を下すために必要な、私に課せられた重要な任務の一つだと思っているので、今申し上げたようなことは日頃から心がけています。
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3. ゲーム版ウィッチャーシリーズは3作ともプレイしましたか?原作小説の方はいかがですか?

小説の方は英訳されたうちの何冊かは読みました。残りは今後時間がある時に読もうと思っています。ゲーム版については最初の2作はそこまでプレイしまくったわけではないです。ただウィッチャー3の方はそれはもう数えきれないほど時間を費やしました。世界観やタイムラインをより知るために関連ビデオやウィキも調べまくりましたし、ウィッチャーユニバースには魅了されるばかりですね。
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4. (ウィッチャーコミュニティにとって)重要な質問です。あなたはイェネファー派ですか?トリス派ですか?それともシャニ派?

断然イェネファーです。The Last Wish()にもあるように、ゲラルトにはイェネファーです(きっぱり)。ただシリーズにハマったのが私は3からだったので、トリスとの関係がそこまで強くなかったというのはあると思います。まぁ誰を選ぶにせよ、全員素晴らしいキャラクターであることには変わりありません。
The Last Wish:ゲラルトとイェネファーの最初の出会いが描かれる原作短編のタイトル
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5. オリジナルのグウェントについてどのような考えをお持ちですか?もともとはこれを単体として遊びたいというユーザーからの要望があり、それが形となって実現したのがその後の「グウェント」です。スタンドアローンとしてグウェントが発表されてからかなりの開発過程を経てきましたが、オリジナルのグウェントと現在のグウェント、その変化についてどう感じてらっしゃいますか?

そうですね…私はオリジナル(TW3)のグウェントから開発に携わってきているので、これに関しては私なりにご説明できることがあると思います。私は以前とある記事で、オリジナルのグウェントはRPGの一要素(ミニゲーム)としてデザインされたものであると発言したことがあります。例えば最近リリースされた拡張:ノヴィグラド(v.3.0)ではしばしばパワークリープに関するご指摘を受けましたが、シングルプレイヤーRPGのミニゲームだったオリジナルグウェントではこういったご意見をいただくことはありません。つまりマルチプレイヤー向けに刷新されたスタンドアローン版のグウェントは、オリジナルのグウェントから劇的な変更が必要な場合もあるということです。現在にいたるまでの間に、私たちがミスを犯してきたのは事実ですが、個人的には現行のグウェントでもまだ本来のポテンシャルを発揮できていないと感じていますし、今年中には可能な限りベストなグウェントをみなさんにお届けすることができる手応えも感じています。
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6. あなたはゲームディレクターとして、(ウィッチャー3のグウェントやベータ版での試行錯誤、その後のホームカミングなど)それまでに培われたグウェントの遺産ともいうべき内容を引き継ぐことになりました。開発を率いていく上でチャレンジだったことや制約に悩まされたこと、もしくは周りからの期待やそれに伴う重圧などはありましたか?グウェントのルーツを見失わないようにする、それに対するプレッシャーなどもあったのでは?

昨年(2018年)の私は主にLive Ops()の部署にいたため、直接的にグウェントに関わっていたわけでなかったのですが、それでも当時の私たちのチームの主眼はグウェントにありました。ですから当時のグウェントを少し離れた視点から()眺めるのは変な感じもしましたね。その後グウェントの舵取りを任されることになり、今まで経験したことのないような重責を担うことになりました。

今になって振り返ると、当時は特別変わったことをしようと考えていたわけではなかったのですが、ただ実際はそれまでの開発方針とは大分異なる決定をしてきたように思えます。これまで数年にわたって心血を注いできたプロジェクト()が迷走していると認めるのは容易いことではないですし、私も当時は必死でしたからね。白旗を上げるつもりもありませんでした。

ディレクターになってすぐ、私は当時の開発チームのメンタリティを従来のトラディショナルな開発体制から、もっとライブサービスに沿ったものに改める必要があると感じました。というのもそれまでのグウェントの開発過程では、理想の実現に向けて大規模なアップデートを数ヶ月かけて準備するという手法をとってきましたが、〜たとえ(そういう従来的な開発手法で)変更内容にチームが納得していたとしても〜実際はユーザーの期待に沿えるものは多くなかったわけですからね。

現在、私たちはひと月ごとにアップデートをかけ、要所要所で細かいホットフィックスも配信することができるようになりました。これは従来のやり方では不可能だったことですし、紆余曲折がありながらここまでに2つのエクスパンションもリリースできたことを喜ばしく思っています。もちろん現行のグウェントはまだ完成形といえるものではないですが、もう少し時間をかければこれを軌道に乗せ、本来のグウェントが持つポテンシャルを発揮させることができるとチーム一同信じています。
【訳注】Jasonがゲームディレクターになったのは2018年12月から。それまではLive Opsのディレクター(2017年11月~2018年12月)、グウェントのリードプログラマー(2015年8月~2017年12月)を歴任(参考:JasonのLinkedInページ
なおLive OpsとはF2Pに代表される、時間とともに変化し進展していく要素を持つゲームの運営コンセプトのこと。例えばプレイヤーデータの分析や、コミュニティの育成とその対応、ゲーム内でイベントを行うなど、ゲーム開発における取り組み方を様々な観点から模索する
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7. これまで下した決断のなかで、一番タフだったものは何ですか?またグウェントの開発で一番難しい部分と楽しい部分を教えてもらえますか?

お蔵入りしてしまうような内容について決断するのはタフですね。例えばすぐには実装できないアイデアだったり、丸々カットせざるを得ないコンテンツだったり。特にそれがユーザーの求めるものであったなら尚更です。この手の案件については「開発人員が足りないから実現不可能」というケースはごく稀で、たいていは(実装できない)何かしらの理由があります。ユーザーの皆さんから送られた要望を私たちも実装したいと思いつつも、それを断念せざるを得ない時は本当にキツいです。

とは言っても、みなさんからグウェントに関する色んなアイデアをいただけるのは本当に有難いです。上で述べたように実装が難しい時もありますが、様々なご意見を目の当たりにするのは楽しいですし、みなさんの声が開発における何よりのモチベーションになります。実装が難しそうな内容だったとしても「何とかできないものか!」ってなりますからね。これからも遠慮なくどんどんご意見を寄せて欲しいです。
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8. 新カードを追加する時の過程と、その際のあなたの役割を教えてください。例えば直近の拡張:ノヴィグラドではどのようなデザインプロセスを経て新カードが生まれたのですか?

新カード追加に関しては、このプロセスをより向上させようと現在も開発に力を注いでいる所で、工程としてはまず最初に一連のラフ画を大量に用意し、早期に例えば各勢力に何枚の追加カードが必要かなどを決定します。その後各カードのビジュアルを固めていくのですが、ここまでの作業は極めて短期間で完了します。というのも新カード追加で最も時間がかかるのは、実際の作画作業とそれに伴うプレミアム版の作成だからです。私の役割としては、この過程において最終チェックをしたり、時にはいくつかのアイデアを私の方から提案することもあります。

新カード追加における初期段階では、上記の工程と並行してゲームプレイの側面から全体的なプランを練ります。ノヴィグラドを例にあげると、すでに初期の段階で私たちの中には件の「ギャング」のアイデアがありました。具体的に各ギャングがどういうものになるかはこの時点ではまだはっきりしていませんでしたが、これに連なる2つのコンセプトもすでに存在していて、その1つが実際に実装された「コイン」です。もう1つは「区画 (Districts)」と呼ばれるコンセプトでこれは後にボツとなりました。

アートチームが作画に忙しい間、デザインチームの方では新拡張の可能性を探るべく、キーワードやコンセプトのあぶり出しを行います。例えば「懸賞金」「謝礼」「狂気」などはすでに早い段階から実装の目処がたっていたキーワードです。また各カードのアビリティの執筆も開始され、スプレッドシートにまとめあげて全体のコンセプトとして機能しているかどうかを見直し、一方プログラマーの方ではデザイナーのアイデアをうまくゲームに落とし込めるような新しいツールを追加したりもします。

イテレーションを経て次第に形になってくると、設計の最終段階として、デザイナーが各自のアイデアをゲームに実装しながら実際のパフォーマンスをチェックします。これで全てOKであればようやくテスト段階へと移行し、プライベートのPTRを実施してバグ確認やゲームバランスを確認します。これらのテストは一週間以上かけて行われ、PTRから得たフィードバックや内部データをもとに最終調整して完成。あとはリリースの準備という流れですね。
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9. プレイヤーの中には、開発陣が贔屓にしている勢力が存在すると感じている人がいるようです:例えばニルフガードやスケリッジのように。これについてどうお考えですか?ちなみに念のためにお伺いしますが、最も人気のある勢力というのが実際に開発チーム内に存在するのですか?

開発チームの中にもそれぞれ各自贔屓にしている勢力はあると思います。ただ(贔屓勢力を有利に調整している)ということはありません。正直この件に関しては…グウェントにおけるミステリーの1つのように個人的には感じています。
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10. グウェントで最もバランス調整が難しい勢力は何ですか?既存勢力に新カードを追加する方が難しかったりするんでしょうか?

バランス調整において特定の勢力がとりわけ問題になったことがあると感じたことはないのですが、私たちが意図した通りのアビリティ調整ができないことは時々あります。例えばかつてのエレディンやエムヒルなんかがそうでしたね。
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11. 現時点のグウェント、勢力ごとの特徴やアーキタイプについてどのようにお感じですか?満足していますか、それとも改良が必要ですか?

シンジケートとスケリッジについては満足していますが、それ以外の勢力は改良が必要だと強く感じています。また現在のグウェントはまだ完成形ではないとはいえ、ノヴィグラドで施した調整は各勢力のアイデンティティに効果がありました。このトピックは私たちにとっても容易な課題ではないですが、各勢力間のバランスをより改善するためのアイデアはまだありますので、(願わくば)近い将来それについてみなさんにお話できればなと思っています。
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12. どういった要素が各カードを面白くしていると考えますか?例えばあなたが考える一番興味深いアビリティは何ですか?また現時点でお気に入りのカードやその理由なども教えてもらえますか?

ちゃんとストーリーを備えていて、しかもそれをゲームプレイにも賢く応用できるようなカードは好きです。例えばサイクロプスなんかその好例だと思います。他にはスコイアテルを使っていて罠や封印をもつユニットと組み合わせた時の「ヴリヘッド旅団の竜騎兵」のアビリティなども気に入ってます。
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13. 誰かに3行以内でグウェントを紹介するとしたら何と伝えますか?

"グウェントはどのカードを引くかというランダム要素よりも、手札をどのようにプレイするかに重点を置いた戦術的なカードゲームです。好きなデッキを構築するために、法外な時間とお金が必要とされることもありません"
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(つづく)
 
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(つづき)
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14. コミュニティの間ではゲームプレイのトレンドが日夜変遷するため、ゲームバランスに気を配りながらもこれに対応しなくてはいけません。このあたりについてはいかがですか?コミュニティからのフィードバックというのは開発方針にどれぐらい影響を与えているのでしょう?

これに関する対応は本当に難しいです。コミュニティから寄せられるご意見はあらゆる範囲に及びますからね。私たちがこのカードは大丈夫だと思っていても、ネガティブな意見が大半を占めることもありますし、もうそうなってしまうとコミュニティのためにもカード修正はもはや不可避という事態になることだってあります。過去にそれだけが原因で実際に修正を施したカードも少なくありません。ただコミュニティからの大反発があって、自分たちの決定が覆されるのも開発の醍醐味だと思います。時には「シヒルはクソ!」みたいなのもあって、そういう時は私たちが折れるのも早いです。

また特定のデッキにプレイヤーが集中してしまう場合も調整は困難を極めます。こういう時は色んなデッキを使ってもらうためにどうやってメタをシフトしていけばいいのか、迷ってしまうこともしばしばです。ランクが上がれば上がるほど~特にプロランクではそれが顕著ですが~プレイの多様性という面では悪化するという側面もあり、実際には勝率が50%以上の様々なバラエティのデッキが他にも存在するにも関わらず、最も安定した勝ちが見込める特定のデッキにプレイヤーが集中してしまうんです。勝敗の揺れ幅を極力少なくしたいというプレッシャーをプレイヤーに与えすぎているのかもしれません。

とにかくコミュニティの間で特定の~しかもそれが飛び抜けて優れているというわけではない~デッキにプレイが集中してしまうのは、私たちにとっても懸案事項なのですが、仮にこれを「メタモーメンタム」とでも命名しましょう。メタモーメンタムはユーザーがそのデッキを何度も目にしているため生まれます。そのため私たちとしてはデッキの多様性を推進するためにも月1ペースでバランス変更を実施し、メタモーメンタムをもっと流動的なものにしたいと考えています。ただし、単純に別のデッキにメタが移行してしまうだけでは意味がないので、継続的な課題として今後も問題の解消に取り組んでいくつもりです。
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15. これまで多くのプレイヤーがグウェントのRNG要素に対して懸念の声を上げてきましたが、直近の拡張でも「運試しの輪」のようなカードが追加されました。そもそも開発の方々はRNGに対してどのような認識をお持ちなのですか?なぜ現在にいたってもこれらのカードが継続的に追加されるのでしょう?

ゲーム全般としては、RNG要素を出来るだけ少なくしたいとは考えていて、ノヴィグラド拡張でも90枚以上のカードが追加された中でRNGカードは2枚だけでした。しかしながらゲームを健全に回すためには「運試しの輪」のようなカードが多少なりとも必要だというのがRNGに対する私たちのスタンスです。もちろんそういうカードはどれだけレアなケースであっても、異常なスウィングが起きないよう細心の注意を払いながら追加するようにしています。
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16. プレイヤーの中には、以前の(ベータ版やウィッチャー3オリジナル版の)”クラシック”なグウェントを懐かしむ人もいるようです。またそれによって現行のグウェントをプレイしなくなった人も。彼らに対して何と声をかけたいですか?

まず最初にお伝えしたいこととして、ホームカミング(HC)後にグウェントをプレイするのをやめてしまった方々に対してですが…。彼らの気持ちは私もよくわかります。開発側で十分に可能性を探りきれていないような、実装には時期尚早と思える数多くの新しいコンセプトが盛り込まれていましたからね。

例えば「構築コスト (provisions)」などは、デッキ構築を複雑にしかねないので安易に導入できるコンセプトではありません。もちろん慣れてくればベータ版以上のポテンシャルを感じさせるものですが、あまりにも従来のデッキ構築とは趣を異にするために、私たちにとってもバランス調整が難しい代物だったように思います。
また一見カードの価値を図る指標のように捉えてしまいかねない構築コストは(当然そういう一面もありますが)、実際はそれ以外の側面も持ち合わせており、数ヶ月研究を重ねる内に私たちも徐々にそれに気がつきました。つまり構築コストを導入する前に、以前のグウェントを十全に見直す必要があったのだと。

以前はブロンズカードがデッキ構築、および戦術的なゲームプレイにおける重要な役割を担っていました。しかし構築コストを導入したことによってカードパワーのレンジが拡大されてしまうと、コストの低いブロンズカードは標準以下の価値しか持たなくなってしまい、多くの「プレイに耐えない/マリガン専用」のカードを生む結果になってしまいました。新しいグウェントに移行しようにも、ベータ版に慣れ親しんでいた多くのプレイヤーにとっては、この構築コストの導入は看過できない要素の1つだったでしょう。しかしながら、現行のTier1デッキの中には、以前あったフィーリング~デッキ構築におけるブロンズカードの重要性~が戻ってきているものもあります。かつて行われていたブロンズカードを巡る多くの駆け引き、これを取り戻すべく私たちも現在開発に注力している所ですからね。

構築コストにいたっても、今後はもっと広範囲に亘ってバランス調整を行う予定です。中庸のカード(構築コストが6-8)なら戦力に見合ったコストが妥当だと思いますが、最低コストのカードは何か条件付きでベース戦力値を引き上げるなど、今後何かしらの対策をとる必要がありますし、逆(コストの高いカード)もまた然りです(ただ「オールド・スピアチップ」のような最大コストのカードはそのままにしておく必要はあるかもしれません)。またブロンズカードは一般的に、ターンやシナジー、コンディション等によって様々な付加価値がついて回りますが、現在は構築コストに反映されているアビリティに偏りが見られるため、このあたりについても修正が必要です。

私たちが直近の拡張:ノヴィグラドで新勢力シンジケートを追加する際、上記の(ブロンズカードに対する)考えをもとにバランス調整を行いました。特にスケリッジと(シンジケート)ではうまくパワーバランスがとれていて、ブロンズカードがよりエキサイティングな存在になっていると思います。またその他の勢力についても(最終的には全勢力が拮抗するように)このバランス調整を推し進めていくつもりですし、実際近い将来、このアプローチに基づいたもっと広範な調整をみなさんにお届けできると思います。

私たちはここ数ヶ月の間も開発に邁進してきました。新しいグウェントとして再び手に取ってもらえるなら、より一層の楽しみ方を見出してもらえるかもしれません。もう一度グウェントをプレイしてもらえると嬉しいです。
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17. グウェントにおけるビジュアル面について質問です。もともとウィッチャーシリーズというのは、ダークで過酷な世界を舞台に繰り広げられる成熟したストーリーが魅力の作品でした。ただし、この世界観に強く魅かれるプレイヤーがいる一方で、酒場での娯楽としてグウェントにはより軽いトーンを求めるプレイヤーもいるでしょう。グウェントのアートディレクションに関して、どのようなバランスを意識していますか?またこれに関連して、グウェントのレーティングがアートワークに影響を及ぼすことはありますか?

このトピックはアートディレクター向けの質問だと思うので、私の方からは限定的にお答えします。確かに仰っていただいた2つの世界観(ダークorライト)を両立させるのは困難なことで、最終的にはどちらかに(方向性を)絞る必要はあります。そうしないと全てのユーザーから総スカンを喰らいかねません。ただ個人的には現時点のグウェント(のアートディレクション)はかなり良い感じだと思ってます。また詳しいことはまだお話できませんが、現在(環境面でもっと楽しんでいただけるような)新要素も開発中です。ビジュアル面でもまだまだ向上できる余地はあると思っていますし、ポテンシャルをフルに活かせるよう開発に力を注いでいます。
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18. スタンドアローン版としてグウェントが発表された時、ゲーマーの中には「CDPRがこれで課金に走るようになるんじゃないか」と懸念する人もいました。現在にいたってもグウェントが「Pay to Win」なゲームだと思っているプレイヤーはいるようです(参考)。これについてどうお考えですか?

私たちからすると、競技シーンでも通用するようなデッキを構築するために過剰な課金を必要とされる、そういうことが(これまでもこれからも)ないカードゲーム、それがグウェントという認識なのですが…。もちろん完全無課金で全て(トロフィーコンプなど)を楽しむことは難しいかもしれませんが、そうでないなら無課金でも全然大丈夫です。またプレイヤーのみなさんが課金しようと思ってくださった場合、今後はその手のコンテンツは(課金すればゲームプレイで有利になるようなものではなく、フレームやアバターなどの)小物関係によりシフトしていきたいとも考えています。
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19. ウィッチャーロアについて。しばしばグウェントのカードアビリティがオリジナルロアに忠実でない時があります。もちろんこれはゲームバランスなど多くの要因が絡んでいるのでしょうが、そもそもどのようなプロセスを経てウィッチャーロアとゲームプレイのバランスをとっているのですか?新規/既存のロアをやり繰りして、カードメカニクスに勢力ごとのまとまりも持たせていく~これにはどういった作業が求められますか?

この作業はとても難しく、複雑な工程を要します。これについて語ろうとするとショートエッセイが書けてしまうほどなので、ここでは一言だけ:ロアを伴ったゲームプレイをより良い方法で実現できないか、これについて私たちは現在も定期的に模索している所です。ボルソディ兄弟などはそれが上手くいった一例だと思っています。
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20. 原作小説やゲーム版ウィッチャーでお馴染みのキャラクターがいる一方で、グウェントでは完全新規の~例えばファリバーやミレン、ルーヒンやデランといったオリジナルキャラクターを目にすることもできます。新勢力シンジケートのビョールンスドウッティルもその一人ですね。まだ語られていない彼らのオリジナルストーリーはありますか?またウィッチャーユニバースをさらに掘り下げるような新規キャラクターや新たなロアなど今後も期待できますか?

答えは全部「イエス」です。ユニバースの掘り下げが既存のキャラクターやストーリーに留まらないのがグウェントですし、私たちにとってもこれらの要素を追加していくのはとても楽しい作業ですからね。
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21. 以前の拡張:紅き血の呪縛に比べて、新拡張:ノヴィグラドではストーリー面でも充実していました。なぜウォルター・ヴェリタスの手記()を?今後もあのようなコンテンツを期待してもいいのでしょうか?

あれは結構チャレンジだったのですが、個人的に可能性を探ってみたいコンテンツでもありました。というのも以前の「紅き血の呪縛」では何か物足りない気がしていたので、あの手記がみなさんからどう受け入れられるか見てみたかったのです。このコンセプトの可能性は今後も探っていきたいと思っています。
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22. ウィッチャーテイルズ:奪われし玉座にはどのようなご意見をお持ちですか?物語主導のRPGとグウェントの融合、その印象を聞かせてください。

奪われし玉座、私は凄く楽しめましたし、もし仮に続編を作る決定をしていたなら経験を活かしてさらに良いものが作れたと思います(*つまり現在続編を作る予定はない)。
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23. 確かに奪われし玉座はシリーズ物として今後も期待させてくれるような内容でした。ゆくゆくは新しいウィッチャーテイルズを作るおつもりは?もしくは通常のグウェントにもう少しRPG要素を加えようといった考えなどはありますか?

グウェントにもっとRPGなエレメントを加えようというのは、常に頭の隅っこにあります。ただ現時点でそういったプロジェクトが具体的に進行しているということはありません。
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24. 報酬手帳にあるストーリーは誰が書いているのですか?

あれはライターチームによる執筆ですね:D
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25. ベータ版ではショートストーリー的な物語主導のイベントが何回かありました。あれは後の奪われし玉座を見越して作られた実験的なコンテンツだったのですか?それとも将来似たようなイベントを再び行う予定はありますか?

あのイベントはプレイヤーのみなさんにとってはあっという間にクリアできてしまう代物だったと思いますが、制作には(それに見合わないほどの)かなりの時間を要するため、今後同じようなことをする予定は今の所ありません。あれはあくまで「過去」のコンテンツとしてご理解いただけると幸いです。またその代わりとしてご用意したのが現在のシーズンイベントになりますが、これをさらにブラッシュアップするかどうか、こちらについても現時点では未定です。
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26. グウェントの長期的プランについて聞かせてください。今後の拡張/新要素やマスターズなど、将来的にどのような展望をお持ちですか?

個人的にはかなり高いハードルを設けていて、ここで具体的にお話することは難しいです。今お伝えすることがあるとするなら、開発における私たちの闘志はまだまだ衰えていない、ということ。後になって今年を振り返った時に、みなさんから「2019年は開発の人たち頑張ったな」と言ってもらえるような年にしたいですね。
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27. 最後の質問です。いつかキュロット(*奪われし玉座に出てくる犬の名前)もオンラインに参戦しますか?

Wouf wouf?(*原文ママ)
 
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